🦋6〗─4─経済大国日本を衰退させたのは「おじさん文化」であった。~No.21 

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 2022年11月4日5:50 YAHOO!JAPANニュース「ビジネス商社マン流 国際ニュース深読み裏読み
 首相が42歳の英国に程遠い「おじさん日本」の絶望
 「人生100年時代」を言い訳にせず世代交代を
 武居 秀典 : 国際エコノミスト
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 10月25日にイギリス首相に就任したリシ・スナク氏。42歳と若いうえ、首相として初めてのアジア系だ(写真:Bloomberg
 10月25日、史上3人目の女性首相だったリズ・トラス氏の後任として、初のインド系で42歳のリシ・スナク氏がイギリス首相に就任しました。目まぐるしく首相が代わる事態に、同国の先行きを不安視する向きもありますが、国のトップの「若さ」と「多様性」という点では、非常にうらやましくも感じます。
 海外で生活して、久しぶりに日本に帰ると、「おじさん」の多さに驚かされます。筆者もおじさんですが、企業社内の重要会議はもとより、財界の会議や政府の審議会などでも出席者のほとんどがおじさんです。
 筆者がいたアメリカやイギリス、中国や東南アジアの国々では、社員や管理職の半数以上が女性とか、面談した政府高官や大企業幹部が女性といったことは「あたりまえ」です。男性でも、政府高官や大企業幹部で驚くほど若い方がいます。
 今回の2人のイギリス首相はその端的な例です。日本ではこのようなことはまれですし、懸念すべきは、日本のおじさん文化が改善されるどころか、近年かえって強まっていることです。これでうまくいっていればよいですが、とてもそうとは言えません。
 日本の「おじさん文化」の特徴とは
 筆者もおじさんなので、心苦しいですが、おじさん文化の特徴をあえて極端にあげれば、「上下関係を重視し、部下に服従を求める」「過去の(成功)体験にしがみつき、自分の判る範囲のことしか許容しない」「同調を求め、異物を排除する」「群れることを好み、ロジックよりも根回しや人間関係を重視する」といったところでしょうか。
 高度経済成長期のように、集団で追いつけ追い越せとがむしゃらに突き進む時にはよかった面もあったかもしれませんが、今の世の中の動きには到底太刀打ちできません。今年9月、スイスIMD(国際経営開発研究所)の「デジタル競争力ランキング2022年」が公表されましたが、日本は63カ国・地域の中で29位と昨年(28位)よりもさらに順位が下がりました。
 項目別では「企業経営の俊敏性」「国際経験」「ビックデータの分析・活用」は最下位の63位、「海外人材受け入れ」「デジタル・スキル」も最下位近辺です。この結果をみると、日本経済全体がおじさん文化そのものに浸食されてしまった感があります。
 日本経済低迷の背景には、時代遅れのおじさん文化という土台があり、その土台自体を変えなければ、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進などの様々な施策を積み上げても成果はあがりません。
 意思決定の中枢からおじさんを駆逐すべきだ
 日本ほど、おじさんたちが「あらゆるレベルの意思決定ポスト」を牛耳り、国や経済をおじさん中心の論理で動かしている国はありません。今必要なことは、この「意思決定の中枢」からおじさん文化を駆逐することです。
 まず、企業では「ポストオフ制度」の厳格適用が必須です。ポストオフ制度とは、ある年齢で組織(部や本部)の長から外れる制度です。今は「55歳」が主流ですが、今後は、最終的に「50歳」とすることも必要でしょう。さらに、社長や会長などの企業トップにも少なくとも「65歳」くらいで退いて頂くべきです。
 部課長クラスが若返っても、その上の役員やトップが変わらなければ、企業全体は変わりません。
 20年程前、「日米財界人会議」という日米双方の有力企業トップが参加する会議に携わりましたが、アメリカ側スタッフから「日本側は毎年同じ顔ぶれのおじいさんばかり」と、よく揶揄されました。
 確かに、日本側トップが平均60歳代後半だったのに比べ、アメリカ側は50歳代が中心でした。残念ながら、年々、アメリカ側の「代理出席」が増え、一方で日本企業の国際的な存在感は低下していきました。
 アメリカは、年齢による雇用差別を厳格に禁じており、一部の職種(パイロットや消防士など)を除き定年はありません。しかし、変わりゆく時代の潮流を前広かつ的確に捉え、その変化に迅速かつ適切に対処していく為に、アメリカ企業では「自然」と経営陣の世代交代が進みます。
 日本企業もこれを見習うべきですが、「自然」と世代交代が進むようになるまで、ある程度の「強制力」が必要です。
 民意を受けて国家の「意思決定」を行っている国会議員も同様です。自由民主党は「参議院比例選の公認は、任期満了時に原則として70歳未満」との内規を設けていますが、今年の参議院選挙では「特例扱い」が続出しました。
 党内から「人生100年時代に、杓子定規に内規を当てはめることは適切とは言えない」との発言があったようですが、これがおじさんの本音で、決して、自ら退こうとはしません。各党がポストオフ(ここでは定年)制度を厳格運用しなければ、社会全体の高齢化とともに、議員の高齢化が益々進んでしまいます。
 もっとも、各党の対応が不充分でも、日本は議会民主制の国ですので、我々国民が危機意識を持つことで状況を変えられることを忘れてはなりません。
 一方、次世代を担う若手・中堅人材にも課題があります。日本では初等教育から「先生や親(上位者)の言うことを聞く子がよい子」との意識を植え付けられます。会社に入っても、「上司」の言うことを聞いていればよい、といった行動パターンになりがちです。
 おじさん文化を助長する「従順な部下」
 こうした「従順な部下」の存在が「おじさん」文化を助長したとも言えます。先月、30歳前後を対象とした次世代リーダーシップ研修にアドバイザーとして参加しましたが、グループワークで、何かアドバイスをすると、次には、そのアドバイスをつぎはぎしたようなペーパーが出てきました。正に「従順」なのです。
 ただし、この状況は、待ったなしで変えていく必要があります。30~40歳代で、社会のことも会社のことも、世の中の先端の動きも理解した次世代人材が、上のおじさんたちをどんどん突き上げていかなければなりません。
 下から突き上げられることになれていないおじさんも多いので、感情的な反発を受けることもあるでしょうし、人事権をもったおじさんに意見することにはリスクも伴いますが、ひとつの会社にしがみつかなくてもよいくらいまで自己研鑽を積み重ねつつ、こうしたリスクにも果敢に立ち向かって行って欲しいと思います。
 おじさんたちが、あらゆるレベルで決定権を握っている今の日本で、大きな変化を起こすことは、気の遠くなる程難しいですが、社会全体が明確な危機意識を持ち、「おじさん文化」の打破を促していく必要があります。そうでなければ、日本経済も持ちません。
 筆者も含めたおじさんたち自身が、将来に対する責任ある行動として、過去にとらわれた自分たちの価値観を押しつけることなく、次世代に早めにバトンを渡すこと、そして、次世代人材がおじさん依存から脱却し、自らが将来を担うべく奮起することを大いに期待したいと思います。
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 2023年1月31日6:41 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「女性活躍と多様性の向上を阻むのは世界どこでも既得権おじさんからの反発だ
 1月19日にニュージーランド首相辞任を表明したアーダーン氏。在職中には「若い女性リーダーに対する誹謗中傷」に悩まされたという。2022年9月撮影(写真:Bloomberg
 1月19日、ニュージーランドの首相だったジャシンダ・アーダーン氏が辞任を表明しました。同氏は、2017年10月に、ニュージーランド政治史上最年少の37歳3カ月で3人目の女性首相として就任しました。
 直近は、物価高などを受けて支持率が低迷しましたが、新型コロナ対策や、その際にも注目された国民との対話を重視する政治姿勢は高い評価を受けました。首相在任中に長女を出産しながら首相という要職を務め続け、女性リーダーのあるべき姿を世界に示したことも大きな功績です。
 日本でもかなり前から、「女性活躍」が社会課題と位置づけられてきました。1999年に「男女共同参画社会基本法」、2015年に「女性活躍推進法」が成立し、さまざまな取り組みが行われてきました。その結果、多くの企業で「産休・育休制度」などが整備され、結婚、出産、育児での退職者は減ってきました。
 日本の労働力人口比率(労働力人口/15歳以上人口)は、1992年の64%から、2012年の59.1%まで低下しましたが、その後、反転し、2019年には62.1%まで回復しました。その間、男性の労働力人口比率がほぼ横ばいなのに対し、女性は48.2%から53.3%に上昇しています。
 出産や育児で仕事を辞める女性が減るとともに、新規女性就業者が増えることによって、労働力人口が下支えされている構図です。こうした女性就業者数の増加は、日本経済にとっても好ましいものですが、「真の女性活躍」という観点からは、注意しなければならない点が2つあります。
■女性の半数以上は非正規雇用
 まず、非正規雇用が多いことです。2021年時点での非正規雇用の割合は、男性21.8%(652万人)に対し、女性は53.6%(1,413万人)です。非正規雇用でも「女性活躍」といえるのではないかとの意見もありますが、考えるべきは、これが目指すべき姿かということです。
 非正規雇用は、多様な働き方のひとつであり、自ら選択する人もいますが、20代30代の女性では、正社員として勤務したいが、非正規雇用しかないという人が多いといわれています。
 正規雇用への転換の道があればよいですが、意欲があっても、そのような道がない、あっても、ハードルが高く、実質閉ざされているのであれば、女性就業者の地位が硬直化し、望ましい状態とはいえません。雇用する企業側の意識改革も含め、こうした状況の改善は急務です。
 もう1つは、企業の役員や議員・官僚など「重大な意思決定に関わる層」に女性がまだ少ないことです。東洋経済新報社『役員四季報』によると、日本の上場企業役員に占める女性の割合は、2012年の1.6%から2022年には9.1%まで上昇しました。
 しかし、各国主要企業を対象としたOECD(経済協力開発機構)による国際比較(2021年)では、フランスの45.3%、イギリスの37.8%、アメリカの29.7%に対し、日本は12.6%とかなり低い水準にとどまっています。国会議員も同様の傾向です。
 日本企業は、女性活躍に向けた諸制度の整備や本格活用が欧米諸国に比べて遅れたため、現時点でのこうした結果はやむをえないのかもしれません。よって、今後5年10年の単位で、結婚や出産・育児がキャリアの直接的なさまたげにならなくなった世代の女性が、順調に部長や役員に昇進し、欧米並みの姿が実現するかどうかが試されます。
 ただ、このままいけば、その実現も危ういと思います。まず、これまで整備した諸制度の目的が 「辞めさせない」ことにとどまっているからです。
 出産・育児で女性社員が辞めることは少なくなりましたが、年功序列が残る日本企業では、産休・育休をとった社員が、とっていない社員と比べると実質的に昇進などで不利になる状況はまだ残っています。産休・育休取得などが昇進のさまたげにならないような制度運用や工夫がさらに求められます。
■「おじさん」文化を変えられるか
 筆者が懸念しているのは、昇進に意欲的な女性が継続的に現れるかという問題です。ひとつには、家事や育児の負担が過度に女性に偏る傾向が変わっていないという現実があります。さらに、日本社会に蔓延する「おじさん」文化が女性の昇進意欲を削いでいるという声もあります。
 管理職に昇進した女性が、「おじさん」を中心とした意思決定層の旧態依然とした考え方ややり方、特に、その排他的な雰囲気に触れれば触れるほど、嫌気がさしてそれ以上の昇進を望まなくなるという傾向は実際あるようです。「真の女性活躍」社会を目指すのであれば、こうした現実も直視し、改善していく必要があります。
 では、どうすればよいでしょうか。「世界ジェンダーギャップ指数」では、日本は世界146カ国中116位(2021年)と先進国では突出した低さですが、この「ジェンダーギャップ指数」は、各国の移民政策の国際比較指標である「移民統合政策指数」と強い正の相関があります(2020年:日本は56カ国中35位)。
 この相関等も考慮すると、「女性活躍」の問題は、出産・育児休暇などの「制度」や「女性の意識」の問題という視野の狭い見方ではなく、「社会の寛容度」の問題と捉えるべきと考えます。
 今の日本では「制度を整えたのに、女性活躍が進まないのは女性の問題」という声も出てきそうですが、こうした見方は何の解決にもなりません。女性に責を負わせるのではなく、社会全体として「寛容度」を高めていくにはどうすればよいかを真剣に考え、対策をとっていく必要があります。
 女性活躍が進んでいるように見えるアメリカでも、その歩みは決して楽なものではありませんでした。2020年に亡くなられましたが、若い弁護士時代から女性の権利獲得や地位向上に尽力した元・連邦最高裁判事のルース・ベーダー・ギンズバーグ(RBG)の生涯を振り返るとそのことがよくわかります。
 その過程で獲得したものも、必ずしも確固としたものにはなっていません。昨年6月、アメリカ連邦最高裁判所が、女性の妊娠人工中絶権を認めた1973年の判決を破棄したことは、その象徴的な事例です。日本でも「選択的夫婦別姓制度」が1990年代半ばから議論されていますが、まだ立法化に至っていません。
 冒頭で触れたニュージーランドのアーダーン前首相も在職中、「若い女性リーダーに対する誹謗中傷」に悩まされたといわれています。女性活躍は社会課題とされながらも、つねに「既得権益を脅かす力」とみなされ、強い反発が伴うことは世界共通です。近年、さまざまな「分断」が強まり、世界全体の寛容度が低下していることも大きな逆風です。
 しかし、閉塞感が強まり先行き不透明な世の中で、国や企業が、レジリエンスを高め、成長を続けるには、女性を含めた「多様性」がカギであることはいうまでもありません。
 日本でも、「真の女性活躍社会」の実現までの道のりは極めて厳しいですが、まずはこの問題が制度や女性の問題ではなく、「社会構造・意識に起因する寛容度」の問題であり、その寛容度を高める努力が日本経済再活性化のカギであることを社会全体で再認識することが重要です。
 そのうえで、その土台となる改革を一つ一つ、着実に積み上げていくことが、次世代に対する私たちの責務であると思います。
 武居 秀典 :国際エコノミスト
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