⛻26〗─1─日本人はリノベーションが得意でイノベーションは苦手である。~No.109No.110No.111 

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 リノベーション【renovation】 の解説
 [名](スル)
1 刷新。改善。
2 修理。修復。
 [補説]近年では、建築物の改造についていうことが多い。特に、古い部分の補修や内外装の変更程度にとどまるリフォームに対し、増築・改築や建物の用途変更など、資産価値を高めるための大規模な改造をさす。
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 2022年12月19日 MicrosoftStartニュース 東洋経済オンライン「日本人が「リノベーション」しかできない深刻問題 問題解決の前に課題を「発見する能力」が必要
 高岡 浩三 の意見 
 物事の本質にたどりつく思考力、マーケティングの本質とは(写真:adam121/PIXTA
 © 東洋経済オンライン
 「問題解決の前に、課題を“発見する能力”が、いま求められている」。そう話すのは、元ネスレ日本社長の高岡浩三氏です。Uber、ダイソン、ライザップ、キットカット……革新的なヒットはいかにして生まれたのでしょうか。物事の本質にたどりつくための思考力、結果を出し続けるための仕事術とは? 同氏の新著『問題発見の教科書』を一部抜粋し再構成のうえ、マーケティングの本質についてお届けします。
 「本物のマーケティング」とは
 私は、人が気づいていない無意識レベルの問題をネスレでずっと考えてきました。
 キットカットは1973年に日本で発売されてから、テレビCMで知名度を高めてきました。ところが、国内のチョコレート菓子の売り上げ1位はグリコのポッキーで、不動の地位を築いていたのです。
 キットカットも売り上げは安定していましたが、私はそれで満足しませんでした。
 そこで、キットカットの顧客は誰かを考えました。スーパーで買っていくのは主婦層ですが、実際に食べるのは10代の中高生です。
 それでは、顧客である10代の中高生はどのような問題を抱えているのか。
 その問題を考える少し前、私はキットカットのキャッチコピーである「Have a break,have a KITKAT.」の break とはどういう意味なのかが気になっていました。
 この針を使った裏技は非常に便利です!
 キットカットは元々イギリスの商品なので、商品名もキャッチコピーもイギリスで考えたものです。この break にはキットカットをパキッと折るという意味と、一休みするという意味が込められていました。
 それを知った時、「日本人にとっての break は何だろう?」と思い、消費者に「あなたの理想的な休憩と、嫌いな休憩を写真に撮って送ってください」と呼びかけました。
 これは、枠外にある問題を見つけるためのリサーチです。
 一般的に市場調査で行われるアンケートは、質問を考えている時点で大体欲しい答えが決まっているでしょう。
 しかし、日本人にとっての break が何なのかは私も誰も分かりません。それに対して、「次の質問からあなたの理想とする休憩を選んでください」といった質問をつくったら、途端に枠に当てはめてしまうことになります。
 だから何も基準を設けず、自由に写真を送ってもらうことにしたのです。すると、数千枚もの写真が集まりました。
 理想的な休憩は温泉でくつろいでいたり、横になってのんびりしていたり。嫌いな休憩は、授業の合間の休み時間や、仕事中の短い休憩時間の写真が目立ちました。
 そこから、私は日本人にとっての理想的な休憩は「ストレスからの解放」なのだと思いました。これが、顧客が気づいていない問題になります。
 中高生のストレスといえば、受験や恋愛、部活動や友人関係など。そうして、キットカットの受験生応援キャンペーンが生まれました。
 ちょうどこの問題を考えている最中に、九州地区では毎年1月と2月にキットカットがよく売れるという情報が舞い込みました。九州弁の「きっと勝っとぉ」がキットカットに似ているので、ゲン担ぎに買っていく人が多かったのです。
 そこで、「キット、サクラサクよ。」というキーコピーと共に、キャンペーンを展開しました。
 まず、各地のホテルと組んで受験生が試験に向かう日に、キットカットと一緒に「キット、サクラサクよ。」のコピーが書かれたポストカードを渡してもらいました。
 さらに東京都内の電車を「キット、サクラサクよトレイン」と称して、満開の桜の絵とキットカットのロゴをあしらったラッピングにして走らせました。加えて、車内の中吊り広告は駅長さん、親御さん、予備校の先生などの応援メッセージで埋め尽くしたのです。
 緊張とプレッシャーに押しつぶされそうになりながら試験に向かう受験生は、きっと励まされたでしょう。これも世界をよりよくする問題発見だったと今では思います。
 このような大々的なキャンペーンにより、「キットカットは受験生のお守り」というイメージが定着して、受験シーズンには爆発的に売れる商品となりました。
 これが、私が考えるマーケティングです。イノベーションは無から生まれるのではなく、問題からすくい上げるものなのです。
 問題発見=イノベーション
 今は、画期的なイノベーションに結びつく問題を見つけづらい時代だといわれています。
 世の中の生活水準が上がるにつれ、人々の不満や不便さは次々と解消されてきました。だから問題を発見しづらいとの説がありますが、本当にそうでしょうか?
 どんなに豊かな世の中になっても、人々の不満やニーズはゼロになることはありません。
 例えば、アメリカではニューヨークのような都会だとすぐにタクシーを拾えますが、郊外に行くと交通手段がマイカーだけになります。
 日本のように全国津々浦々まで電車やバスが走っていませんし、郊外でタクシーは拾えません。レンタカーを借りるしか手段はなかったのですが、その問題をUberが解決しました。
 Uber創業者のトラビス・カラニック氏とギャレット・キャンプ氏は、旅先でタクシーを拾うのに苦労した経験から、このサービスを思いついたといわれています。
 普通なら「新しいタクシー会社をつくろう」と考えるかもしれません。しかし、広大なアメリカの全域をカバーするようなタクシー会社をつくるのはムリです。
 そこで、アメリカ人の主な交通手段がマイカーである特徴を活かして、そのマイカーを利用するシステムをつくったわけです。
 どんな不便な地域でも呼んだらすぐに来てくれて、タクシーよりも安く利用できる。しかも車を持っている人にとってはお小遣い稼ぎになる。Uberは世界をよりよくする問題を見つけて解決したのは間違いないでしょう。
 そのような世の中の人が諦めている問題は、いくらでもあります。
 日本でも、最近は鉄道やバス路線が次々と廃止されて移動交通手段がなくなった地域が増えています。これからUberの需要が出てくるかもしれません。
 日本企業はなぜ弱いのか
 私は、日本でイノベーションを起こせたといえるのは、ソニーウォークマンだけではないかと考えています。
 ウォークマンの誕生秘話はご存じの方も多いでしょう。
 ソニー創業者の井深大氏が海外出張に行く際に、機内にカセットレコーダーを持ち込んで音楽を聴いていましたが、重すぎるので「もっとコンパクトなものをつくってほしい」とテープレコーダー事業部に話を持ちかけました。
 井深氏はその試作機を気に入って、同じく創業者の盛田昭夫氏に貸したところ、盛田氏も「これは面白い」と乗り気になり製品化したというエピソードがあります。
 これも、他の人が諦めている問題を発見した例です。
 飛行機で、他の乗客もいる中で音楽を聴こうとは誰も考えていませんでした。当時は機内で映画も観られなかったので、本を読むか寝るしかありませんでした。
 そのような時代に、「音楽を外に持ち歩けて、どこでも自由に聴ける」という製品を開発したのです。ウォークマンは世界中で爆発的なヒット商品になり、若者の音楽カルチャーを変えました。
 日本では、後にも先にもそこまでインパクトのある製品は生まれていません。
 松下電器産業(現パナソニック)やホンダ、トヨタも世界的に認められている企業ではありますが、既にある製品を改善・改良することに長けていたのだと思います。つまり、「リノベーションの天才」だったのです。
 戦後アントレプレナー(起業家)は大勢生まれましたが、自分で何かを開発したというよりは、リーダーシップを持って会社を興して大きくしていったというほうが正しいでしょう。
 人口が増え続けて、経済が上向きの時代ならリノベーションでも十分、会社を引っ張っていけました。しかし、今のように少子高齢化が進み、経済成長が30年ほど止まっている国でリノベーションしか生まれないのは、かなり危機的状況です。
 だからイノベーションを生み出す人を育てていくしかないと考え、私は 来年1月からYouTubeで「高岡イノベーションサロン」という学びの場を始めます。
 リノベーションしかできないのは、やはり問題発見ができていないからです。
 すでにある製品やサービスの問題点を見つけて改良するのも、人々の暮らしを便利にすることにはなるでしょう。
 ただ、リノベーションは自社以外でも発見し、改良できる問題です。リノベーションしかしてこなかったから、日本はいつの間にか国際競争で負けていたのです。
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