🗡59〗─3・B─低成長と円安で防衛産業「低利益率の苦悩」。防衛企業100社超が撤退。~No.187 

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 日本の国防力が低下して喜ぶ日本人達。
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 2022年11月6日06:00 MicrosoftNews 現代ビジネス「防衛費いくら増額しても吹き飛ばされる「円安爆弾」の破壊力 経済成長がなければ防衛力増強もなし
 磯山 友幸
 6兆円突破は確実
 来年度予算での防衛費はいったいいくらになるのか。
 岸田文雄首相がバイデン大統領との日米首脳会談で「防衛費の相当な増額を確保する決意」を伝えた5月から半年近くが経とうとしているが、具体的な金額は国民に示されていない。岸田首相は「数字ありきではない」として明言を避け続けてきたが、その間にも自民党や政府関係者から数字が流れ、地ならしが進む。
 © 現代ビジネス 12式地対艦ミサイル 陸上自衛隊HPより
 新聞などメディアは「国民的議論が求められる」と書くが、財源をどうするかを含めて、国会でのまともな議論がないまま、年末の予算案の政府原案まで突き進みそうな気配だ。
 「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指します」
 7月の参議院選挙に向けた自民党の「公約」にはこう書かれていた。これまで対GDP国内総生産)比1%以下が、戦後日本の「国是」とも言える水準だったものを、いきなり倍増して2%にするのが国際的な「常識」だとしたのだ。
 これを元に、2023年度から5年間で総額43兆円から45兆円にすることを政府が検討しているとさんざん報じられている。23年度については「6兆円台半ば」とする声が多く、24年度以降毎年1兆円を積み増していくということらしい。
 来年度の6兆円台半ばという数字もあくまで「当初予算」の話だ。防衛省は8月末の概算要求で過去最大の5兆5947億円を計上したが、さらに金額を示さない「事項要求」を100項目規模で盛り込んでおり、これらの中から実際に予算に加えれば6兆円突破は確実だ。
 当然出てくる財源問題
 もっとも「当初予算」は当てにならない。2021年度は当初予算では5兆3422億円だったが、補正予算で7738億円が増額され6兆円を突破している。2022年度の当初予算も5兆4005億円と、21年度の当初予算どうしを比べれば微増だが、すでに2次補正予算で4500億円近くを増額する予定で、さらに3次補正が組まれれば積み増される可能性がある。つまり、国民の目につかないところで、数字を上乗せするのが常態化しているのだ。
 当初予算に組み込むと、国会審議で「財源問題」が槍玉にあがる。11月4日の記者会見で鈴木俊一財務相は「歳出歳入の両面から検討を進めて、必要な安定財源を確保していくことが重要だ」と語った。財政規律を何とか保ちたい財務省としては当然だが、安定財源というのは「新たな負担」を意味する。
 岸田首相は2021年9月の自民党総裁選の候補者討論会で、消費税について「10年程度は上げることを考えていない」としており、ロシアのウクライナ侵攻で情勢が変わったとはいえ、いきなり「消費増税」は打ち出せない。自民党税調の議論では「法人税」に引き上げをという声も出たが、早速経済団体は反対の声を上げた。数兆円単位で「新しい財源」を捻り出すのは至難の技だ。
 そうなると、結局は赤字国債の発行で賄い、日本銀行国債を買わせるということになりかねない。そうでなくても為替の円安が続いている中で、財政赤字の拡大は、さらに円安に拍車をかけることになりかねない。
 「為替爆弾」の破壊力
 その円安が防衛力強化に影を落としている。各国の軍事費を国際比較する際には主として米ドル建ての金額が使われる。世界銀行のデータ(2020年)によると、世界トップの米国は7782億ドル、2位の中国が2523億ドル、3位のインドが728億ドルといった具合だ。日本は491億ドルで9位だ。2021年度の補正後の6兆1160億円を年度末の為替レート1ドル=122円で計算すると500億ドルである。
 ところが、今年度当初予算の5兆4005億円を現在の1ドル=147円で計算すると367億ドル。今後補正を組んで6兆円まで増やしたとしても408億ドルに過ぎない。円安で日本のドル建て防衛費は壊滅的に小さくなる。他国の為替も対ドルで弱くなっているので単純に比較できないが、2020年で10位の韓国は457億ドルだったので、これを下回ってしまう可能性が出てくる。「為替爆弾」の破壊力は甚大だ。
 これは数字のマジックで、実態は表していない、という声もあろう。日本の防衛装備品の多くは米国などから輸入している。当然、円安になれば、購入費用は増える。しかも、米国など海外先進国は猛烈な物価上昇(インフレ)の最中だ。製品価格自体がうなぎ登りになっている。国内メーカーが製造するにしても、輸入鋼材などの原材料費は大幅に上昇しており、防衛装備に十分な予算が確保できるか心許ない。
 これまで通り、ドルベースで500億ドルの防衛予算を確保しようと思えば、今の為替だと7兆3500億円を計上して横ばいである。つまり、政府が「相当な増額」と覚悟を決めて予算を増やしても、ドル建てでの「見た目」は横ばいがせいぜいなのだ。大幅に日本円建ての数字を増やしても、諸外国への抑止力は働かないということだろう。さらに円安が進めば、さらに防衛費のドル建ての「見た目」は小さくなる。
 成長に背を向け続けたツケ
 だからGDP対比で見るべきなのだ、という意見もあるだろう。確かにそうだ。だが、GDP比は言うまでもなく、分母のGDPが増えない中で、分子だけを増やせば一気にパーセンテージは上がる。まして、GDPが減っていけば、防衛費を増やさなくてもGDP比は上昇してしまう。
 そう、つまり、日本の防衛力が安全保障関係者から「不十分だ」と指摘されるのは、日本のGDPが増えてこなかったことに最大の問題がある。ドイツの名目GDPは1990年の1兆3174億ユーロから2021年には3兆6017億ユーロへと2.7倍になった。これに対して日本は1990年の462兆円から2021年は541億円と1.17倍だ。仮にドイツ並みに2.7倍に成長していれば名目GDPは1247兆円。防衛費が1%だとしても12兆円に増えていた計算になる。
 かつての民主党政権時代、当時の若手幹部が「もう成長なんて必要ないんじゃないですか。これだけ豊かになったのだから、分かち合って分配すれば幸せになる」と言っていた。成長戦略がないと批判されて大慌てで作るなど成長に背を向けた政権だった。
 岸田首相も就任当初は「新自由主義的政策は取らない」と言い「分配」を掲げていた。日本の貧弱な安全保障体制は成長を度外視してきたツケとも言える。経済的な国力の低下を食い止めることが、最も重要な安全保障政策である。」
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 11月7日 産経新聞「防衛産業「低利益率の苦悩」 100社超が撤退
 市岡 豊大
 有料会員記事
 国際観艦式に臨む海自艦と海外から参加した艦艇=6日午前、神奈川県沖の相模湾海上自衛隊機から・春名中撮影)
 政府が防衛力強化を目指す一方で日本の防衛産業が深刻な状況にある。利益向上が見込めず大手メーカーが相次いで撤退し、防衛装備品のサプライチェーン(供給網)の維持が懸念される。防衛装備庁は利益率向上、研究開発支援、海外輸出強化の3点を中心に対策を検討。年末にかけて政府が改定を進める国家安全保障戦略など「安保3文書」では抜本的な防衛産業基盤の強化策を打ち出す方針だ。
 <特報>防衛産業、事業受け渡しを国がサポート
 「防衛費の9割は国内向けで防衛力の抜本強化は経済成長の観点からも重要。防衛産業は防衛力そのものだ」。浜田靖一防衛相は2日、首相官邸での経済財政諮問会議でこう述べた。同会議への防衛相の出席は初とみられ、防衛省幹部は「それだけ防衛産業の重要性が増した」と解説する。
 防衛産業の市場規模は家電産業(約2兆円)や航空宇宙産業(約1・2兆円)を上回る約3兆円。唯一の顧客である防衛省と直接契約できる「プライム企業」と呼ばれる主要15社を筆頭に、戦車や艦艇、航空機などの重工業▽レーダー、電子機器などの電気通信機器▽火薬や信管などの弾薬製造-などがある。
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 11月7日 MicrosoftNews 読売新聞「中露の艦艇監視、戦闘機では費用対効果悪い…海保と海自が無人機を共同運用へ
 © 読売新聞 海上保安庁が海自八戸航空基地を拠点に運用を開始した無人機「シーガーディアン」(海上保安庁提供)
 海上保安庁海上自衛隊が警戒監視用の無人航空機を来年度にも共同運用する方向で調整していることがわかった。日本周辺海域で中国やロシア軍艦艇の活動が活発化しており、海保が運用を開始した無人機の情報を海自と共有し、警戒監視の効率化を図る。海保と海自による新たな連携強化策の柱となる。
 複数の政府関係者が明らかにした。共同運用する機体は米ジェネラル・アトミクス社製「シーガーディアン」。高い監視能力を誇り、海難事故の捜索や不審船の監視などにあたる。海保は10月19日から海自八戸航空基地青森県八戸市)を拠点に1機の運用を開始した。早期に3機体制とし、南西地域にも配備したい考えだ。
 現状は無人機で得られた画像を一定程度加工した上で海自に提供しているが、来年度からはリアルタイムで共有する方向だ。運用状況を検証したうえで、利用しない時間帯に海自が試験的に活用するなどして共同運用に切り替える。
 自衛隊は主に固定目標を監視する無人機「グローバルホーク」を導入したものの運用には至っておらず、海上を広域で監視する無人機も保有していない。共同運用の実績を重ねた後、海自もシーガーディアンを導入する案を検討している。
 東シナ海では、中国軍が無人航空機を頻繁に飛来させている。運用コストの低い無人機に対し、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進(スクランブル)して対応しており、費用対効果が悪すぎると指摘されている。このため、領海侵入や領空侵犯のおそれがない場合には、海自の無人機のみでの警戒にとどめるなどの運用も模索する。太平洋側の監視態勢強化のため、海自硫黄島航空基地(東京都小笠原村)などに配備する案もある。
 海保と海自の連携強化は、政府が検討する防衛力の抜本強化でも重要な論点になっている。
 沖縄県尖閣諸島周辺海域では、法執行機関の海保が中国海警局の船と向き合っているが、海保で対処不能な事態に発展した場合に切れ目なく海自に引き継ぐ体制整備が不可欠だ。政府は、両組織の協力を促進するとともに、有事における両組織の連携のあり方も検討する考えだ。
 ◆シーガーディアン=全長11・7メートル、全幅24メートル。24時間以上の航続が可能で、一回の飛行で日本の排他的経済水域EEZ)の外周を1周以上できるとされる。夜間用赤外線カメラやセンサーを搭載し、地上からの遠隔操作で不審船などに警告を出すこともできる。米国の沿岸警備隊などに配備されている。
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