⚡65】─1─親中派日本企業は自由・資本主義市場から「レッドカード」を宣告される。~No.271No.272No.273 

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 2022年10月1日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「これから日本企業が中国企業と親密につき合うと「レッドカード」になってしまうのだろうか
 日中国交正常化から50年。世界は「ボーダーレス」どころか「ボーダフル」になってしまったが、日本はどう生きていけばいいのか(写真:Legacy Images/アフロ)
 東京都内が「安倍晋三元総理の国葬」で厳戒態勢にあった9月27日、筆者は日本国際貿易促進協会(国貿促)の「日中国交正常化50周年記念シンポジウム」にパネリストとして登壇していた。
 テーマは「日中経済の新動向とグローバルサプライチェーンの再編」。フォーシーズンズホテル東京大手町の会場は、300人を超える参加者で満席だった。
 てなことをご紹介すると、さる筋の人たちからは「当節、不届きな親中派の一味」と思われてしまうかもしれない。そうは言っても、日中関係は重要である。なにしろ日中両国は、お互いに引っ越しができない間柄。そして日本は、安全保障面でアメリカと同盟関係にありつつも、経済面では中国の力を最大限引き出さねばならない立場である。この難しさは、中国ビジネスに携わっている最前線の人たちがもっともよく理解していると思う。
 ほかならぬ国貿促河野洋平会長が、国葬に出席されていたためにシンポジウムの閉会式に間に合わなかった、というあたりも、昨今の日中関係のビミョーさを反映しているように感じられた。
 以下はその日の討議を振り返りつつ、米中2大強国の狭間で生きていかねばならない日本と日本企業の今後についてのささやかな試論である。
■「国境なき経済」が加速するはずだったが・・・
 かつて「ボーダーレス・エコノミー」(国境なき経済)という言葉があった。と言うと個人的には、若き日の大前研一さんの姿が懐かしく思い浮かぶが、「21世紀には『国境なき経済』の時代が到来する」と考えられていた時期があった。
 とくに1991年12月にソ連が崩壊したときは、「ああ、これで本当に冷戦が終わった」という安堵感は深かった。これから先、各国は軍備を削減して「平和の配当」を享受するだろう。そうなれば、民間部門に回るお金が増えることになる。防衛産業はハイテク産業への転身を図るしかなく、実際にシリコンバレーは驚異的な発展を遂げることになる。
 1993年にはウルグアイラウンドが妥結して、貿易紛争処理のためのWTO(世界貿易機関)という機関も誕生した。アメリカのシアトルで初めて行われたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議も忘れがたい。貿易自由化の進展は目覚ましかった。同時に世界的に行革・規制緩和が進んでいたから、これから政府の役割は確実に減っていくはずであった。加えて折からの「IT革命」が、国境を超えることのコストを下げ、世界経済の生産性を高めていた。
 このトレンドが続いていけば、国家というプレイヤーの出番は減っていき、代わりに多国籍企業NGO(非政府組織)や国際機関が中心となる時代がやってくるだろう。1990年代にはそんな夢があった。
■国境がなくなるどころか「ボーダフル・エコノミー」に
 ところが実際に21世紀になってみると、どうにも勝手が違っていた。「9.11」の同時多発テロ事件には、皆が文字通り腰を抜かした。アメリカはアフガニスタン戦争、イラク戦争に突入していき、軍事予算はむしろ「青天井」となった。サイバー空間も急激に発展を遂げたが、そちらでもセキュリティのコストは増大する一方であった。
 2005年にアメリカ南部を襲ったハリケーンカトリーナ、2011年の東日本大震災のような大型自然災害も相次いだ。そして2008年には、リーマンブラザーズ社の経営破綻に端を発する国際金融危機が生じた。2020年以降の新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)も、これらの系譜に加えていいだろう。
 こうした「想定外の事態」が起きるたびに、対応に追われるのは各国政府(ときに中央銀行を含む)であった。何のことはない、21世紀も国家の時代だった。ボーダーレスどころか、「ボーダフル・エコノミー」と言えようか。トランプ政権に至っては、本当にメキシコ国境に「壁」を建設した。つまり国境は残ったし、国家は役割を失わなかったのである。
 しかも国家は互いに猜疑心を抱き、どんどん溝を深めているように見える。今年は何と、「戦車に乗って隣の国に攻め込む」という古式ゆかしい戦争を、こともあろうに国連安保理常任理事国であるロシアがやらかした。西側諸国は前例のない規模の経済制裁で対応しているが、エネルギー危機や食糧価格の高騰を通して世界全体を苦しめている。せめてウラジーミル・プーチン大統領が自棄になって、核兵器を使わないことを祈らずにはいられない。
 それではグローバリゼーションも終わってしまうのか。そういう見方も少なくないところではあるが、さすがにそうはなっていないようだ。国境に壁を作ってヒトの流れを制限する動きはあるけれども、金やモノやサービスの交換は盛んに行われている。日中貿易だって増えているし、米中貿易は実にその3倍の規模である。
 アメリカの対中政策は、オバマ政権下の2015年頃に転換を迎える。それまでの楽観論をかなぐり捨て、経済面でも安全保障面でも、中国の野心を食い止めることが優先事項となった。次なるドナルド・トランプ大統領はさらにショーアップされた形で、ジョー・バイデン大統領はやや控えめな形ながら、対中強硬姿勢では一貫している。ほとんどの政治課題が左右に分裂している今のアメリカにおいて、「対中強硬姿勢」ほど、超党派の支持を得ているテーマはない。
 ところが面白いことに、米中貿易はなおも伸び続けている。つまりワシントンDCがいかに旗を振っても、ウォールストリートやシリコンバレーは容易に言うことを聞かないのだ。アメリカ企業はもちろん法律には従うけれども、政府に対して決して従順ではない。
 似たようなことは、北京政府と中国企業の間にも一定程度はあるのではないか。米中の企業はすでにさまざまなアライアンスを組んでいて、隙あらば儲け話に食いつこうとする。「米中デカップリング」と言われつつも、実態面がなかなか追いついていないのは、米中双方に意外な類似性、もしくは対称性があるからではないかと思う。
アメリカや中国の企業のように、図太くあれ
 問題は日本企業である。今日のような「ボーダフル・エコノミー」においては、企業は純粋な市場原理に基づいて最適立地で投資決断、というわけにはいかなくなった。「半導体はなるべく国産」であることが望ましいし、「それが無理でも、せめてサプライチェーンは確実なものに」と考えねばならない。つまり「経済安全保障」に配慮せねばならない。
 ただしここで忘れちゃいけないのは、「あくまでも基本は自由貿易である」ということだ。もしも日本に「核心的利益」というものがあるとしたら、それはおそらく自由貿易である。エネルギーも食料も他国に依存して、工業製品を売ることで生計を立てている日本経済にとって、これほど重要な原則はない。
 ところが困ったことに、自由貿易は「相手あってのこと」である。日米間だって、過去には幾多の貿易摩擦問題があった。日中間にはさらに多くの問題がある。そうした中で、自由貿易原則が通じる相手を増やしていくことが、「ボーダフルなグローバル経済」で生き延びていく知恵となる。もっともこれは今に始まったことではなく、「通商国家ニッポン」がずっと苦労してきたことでもあるのだが。
 気をつけなければならないのは、日本の組織は「枝葉にとらわれて幹を忘れる」のが大得意であるということだ。「さあ、これからは経済安全保障だ」ということで、あっちこっちに忖度しすぎて企業活動が委縮してしまう、というのはいかにもありそうなことではないか。できればアメリカや中国の企業のように、図太くあってほしいものである。
 先の通常国会では、経済安全保障推進法案が成立した。秋の臨時国会では基本方針が策定され、今後は制度ごとに段階的に施行されることになっていく。つまりは運用の在り方が重要になってくる。
 新しいルールというものは、法律の条文ができたからと言って、いきなり定まるものではない。いろんな実例に際して、「これはセーフ、これはアウト」という判定を積み上げることによって形成されていくものだ。このプロセスにおいて、各企業が最初から安全運転志向に走るようでは、それこそ「角を矯めて牛を殺す」ことになりかねない。
 あえて刺激的な表現を使うならば、「一発退場のレッドカードをもらうわけにはいかないけれども、イエローカードであれば最初はもらっても授業料」というくらいの覚悟が必要なのではないか。若い頃に「昭和の商社マン教育」を受けた世代の一員としては、最近のリスク回避的な日本企業がちょっと心配になっているのである。
 ここから先はお馴染み競馬コーナーだ。10月2日はいよいよ秋のG1戦線の緒戦、スプリンターズステークス(中山競馬場、11R、芝1200メートル)が行われる。
 今年のJRAでは、「G1レースで1番人気馬が1回も勝ててない」という怪現象が起きている。となると、今回1番人気が予想されるメイケイエールもいかにも罠っぽい。
 今年は重賞レースを3つも勝って本格化の呼び声が高いのだが、彼女の過去をさかのぼるとG1レースは桜花賞を含め4回も期待を裏切ってきたことは忘れがたい。いかんいかん。お前を軸にはしたくない。よって対抗扱いとする。
スプリンターズSの本命は「あのG1馬」に決定! 
 本命にしたいのは、G1馬のシュネルマイスターだ。前走の安田記念(1600メートルのG1)からスプリンターズステークスに距離を短縮するのは、2020年のグランアレグリアと同じパターン。普通に毎日王冠(10月9日のG2レース、距離1800メートル)を使うのではなく、あえて短い距離を走らせてスピードを鍛え、次はマイルチャンピオンシップを狙う作戦らしい。これは面白いと思う。
 穴馬にはナランフレグを。高松宮記念を勝って、大泣きした丸田恭介騎手の雄姿は忘れがたい。
 このレース、「3着に2ケタ人気馬が入って3連単が大荒れ」ということが多く、ついつい買い目が多くなる傾向がある。今年は絞って、馬連馬単で仕留めてみたい。
 (当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
 かんべえ(吉崎 達彦) :双日総合研究所チーフエコノミスト
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