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 2022年8月17日 MicrosoftNews 日経BPダークマターを失った奇妙な銀河、新たに奇妙な観測結果
 新たな観測で、奇妙な銀河誕生の秘密に迫る壮大な仮説が生まれた
 文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子
 この記事はナショナル ジオグラフィック日本版サイトからの転載です
 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、約7200万光年の彼方にある銀河「DF2」の画像。DF2は、ダークマターがほとんどない奇妙な銀河である。ダークマターは銀河を1つにまとめている目に見えない接着剤のような物質なので、DF2にこれがほとんどないことは天文学者たちを当惑させている。(SCIENCE: NASA, ESA, STSCI, ZILI SHEN (YALE), PIETER VAN DOKKUM (YALE), SHANY DANIELI (IAS) IMAGE PROCESSING: ALYSSA PAGAN (STSCI))
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 宇宙に存在する物質の80%以上を占めるダークマター暗黒物質)。ところが2018年と19年、そのダークマターがほとんどないように見える2つの銀河が見つかった。一体どうやってできたのか、天文学者たちはそれ以来、頭を悩ませてきた。
 「80億年ほど前に銀河と銀河が衝突し、その強烈なノックアウトパンチによって両方からガスがはぎ取られた」というのが、ダークマターのない2つの銀河DF2とDF4に関する最近の説明だ。この説明に今回、新たな観測結果が加わった。5月18日付けの学術誌「ネイチャー」に発表された論文によると、銀河衝突でばらばらになった残骸から、DF2やDF4と同じように奇妙な天体がいくつもでき、それらが一列に並んでいる可能性があるという。
 論文を執筆した米エール大学のピーター・バン・ドックム氏が率いるチームは、こうした変わり者の銀河の存在や、その付近の空間の特徴は、銀河どうしの衝突の残骸として説明できると主張する。「ガスを含む銀河どうしが激しく衝突すると、ガスがはぎ取られて衝撃を受け、銀河をまとめるダークマターがほとんどない混沌とした環境になるのです。その後、大きく不規則な形をしたガス雲の一部が分離し、それぞれが小さな銀河を形成するのです」
 バン・ドックム氏らが思い描くシナリオは、今後の観測で確認する必要がある。しかし、もしそれが正しいならば、今回発見された奇妙な銀河の行列が誕生した経緯をきれいに説明することができる。今回の論文によれば、銀河どうしの衝突は、ダークマターの基本的な性質の解明に役立つ可能性さえあるという。
 「明るい球状星団と、ダークマターがほとんどない双子の銀河と、今回発見された奇妙な銀河の行列のすべてをシンプルに説明できる理論は、今のところこれしかありません」とバン・ドックム氏は言う。
 銀河を支える見えない物質
 通常、銀河の質量の大半はダークマターの質量だ。1960年代後半、天文学者ベラ・ルービンは、回転するアンドロメダ銀河の縁の方にある星々が宇宙へ飛び出していかないのは、重くて目に見えない物質の重力によって引き止められているからではないかと推測した。その「接着剤」がなければ、アンドロメダ銀河や他の回転する銀河の縁の方の星々は失われてしまうだろう。(参考記事:「「ダークマター」をつかまえろ! 宇宙の謎を解く鍵を求めて」)
 ルービンの研究から半世紀がたった今でも、天文学者はまだダークマターを直接観測できていない。ダークマターは光を発することも反射することもない。ふつうの物質と直接相互作用することはないが、その重力は恒星や銀河といった観測可能な物体のふるまいに影響を与える。科学者たちは、銀河が星々を生み出しはじめるのに十分なガスを蓄積するためにはダークマターが必要だと考えている。
 ところが2018年に、バン・ドックム氏はNGC1052-DF2(略してDF2)という、ダークマターがほとんどないように見える銀河を発見した。約7200万光年の彼方にあるDF2は、大きな楕円銀河の近くにある薄暗くぼんやりした銀河だが、非常に明るく大質量の星団がちりばめられているという珍しい特徴をもつ。この銀河の質量を計算したバン・ドックム氏は、DF2にはごくわずかなダークマターしかないことに気づいた。(参考記事:「【解説】ダークマターない銀河を発見、なぜ重要?」)
 「最初の発見は、私たち自身にとっても意外でした」と彼は言う。「説明のつかないものを手にした私たちは、重要なテーマについて多くの主張をするようになりました。そのため多くの研究者から注目されるようになりましたが、懐疑的な目で見られることもあります」
 以来、バン・ドックム氏のチームは、この銀河で最初に観測した特徴の多くを確認してきた。2019年には、同じタイプの銀河をもう1つ発見した。DF4と名付けられたこの銀河も、薄暗くぼんやりとしていて、ダークマターがほとんどなく、奇妙な星団が点在していた。「2つの銀河は互いにそっくりですが、これらに似た銀河は、ほかにはありません」
 奇妙な銀河は、どのようにして形成されたのだろうか?
 宇宙の時計を巻き戻す
 2019年と2020年、バン・ドックム氏のチームはハッブル宇宙望遠鏡をDF2とDF4に向け、DF2がずっと遠くにあり、2つの銀河が互いに高速で遠ざかっていることに気づいた。これらの銀河の動きを巻き戻すと、最終的に宇宙空間の1点に収束する。はるかな昔、ここで衝突が起きたのだ。
 もとの2つの銀河が衝突したとき、銀河のダークマター部分は、何事もなかったかのようにそのまま宇宙空間を進み続けた。これに対して銀河のガス部分は高温・高圧の塊になった。DF2やDF4に見られるような巨大星団が形成されるには、うってつけの環境だ。
 2019年7月1日付けで学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に発表された銀河衝突のシミュレーションによると、最初のガスの塊は分裂し、その後数十億年の間に広がって、薄暗く非常に軽い銀河の列を残すという。そこでバン・ドックム氏らがNGC 1052銀河群の画像を調べてみると、DF2とDF4を含む11個の銀河が一列に並んでいるのが見つかったのだ。
 「最初に奇妙な観測結果があって、そこからひらめきがあり、こんなふうに銀河が見えるだろうという予測ができて、実際にそれが見えたのです」とバン・ドックム氏は言う。
 彼は、一列に並んだ銀河の先頭と最後尾には、衝突したもとの銀河のダークマターを豊富に含む残骸があるかもしれないと考えている。しかし、これらの銀河は非常に暗く、詳細な観測は難しいため、検証するのは容易ではないだろう。(参考記事:「巨大銀河団に多数の高密度ダークマター宇宙論揺るがす報告」)
 空に残る手がかり
 バン・ドックム氏が主張する説については疑問点もあるが、一部の科学者は、ダークマターがほとんどない銀河が形成され、成長したメカニズムをうまく説明できていると評価している。
 「いくつかの側面を同時に説明できることは大きいです」と、ダークマターと銀河の形成を研究している米テキサス大学オースティン校のマイク・ボイラン=コルチン氏は言う。
 ボイラン=コルチン氏は、バン・ドックム氏のシナリオが正しいなら、天文学者ダークマターの「粘着力」に関する理解を深めることができると言う。つまり、ダークマターはふつうの物質を無視するようにダークマターも無視するのか、それとも、ある程度の自己相互作用があるのかが明らかになるということだ。ボイラン=コルチン氏は、銀河の衝突によってDF2とDF4の奇妙な星団を説明できることも高く評価できると言う。
 「DF2とDF4が非常に巨大な星団をもっているように見えるのは、とても不思議なことなのです。なぜこんな星団ができたのでしょう? 銀河どうしの衝突なら、より巨大な星団を生み出すメカニズムとして納得がいきます」
 一方、銀河の形成について研究している英サリー大学のミシェル・コリンズ氏は、「これはある意味、大きな謎の始まりです」と言う。氏は、現時点ではバン・ドックム氏のシナリオは理論的なものにすぎず、衝突前の銀河が、現在観測されている銀河群を生み出せるだけの質量をもっていたかどうかもわからないと指摘する。
 一列に並んでいるという11個の銀河が、衝突してばらばらになった銀河の残骸なのか、それとも、たまたま関連があるように見えているだけなのかを知るためには、それぞれの距離を明らかにする必要がある。例えば、夜空の星座を構成する星は、地球からの距離はまちまちなのだが、たまたま関連があるように見えている。
 「一列に並んでいるように見える銀河が星座のようなものではないと断定するには、まだデータが不足しています」とコリンズ氏は言う。「私たち人間は、どうしてもパターンに意味を持たせたくなってしまうので、気をつけなければいけません」
 衝突説の裏付けには時間がかかるかもしれないが、バン・ドックム氏は、検証することはできると言う。氏はDF4の星団の年齢を詳しく調べて、DF2の星団の年齢と比較したいと考えている。その年齢が一致すれば、2つの銀河が同じ起源を持つことを強く示唆することになる。
 バン・ドックム氏はまた、列の中のDF2とDF4以外の銀河にもハッブル望遠鏡を向けて、同じように奇妙な星団があるかどうかを調べたり、銀河の動きと距離を測定して、1つの構造の一部であるかどうかを確認したいと考えている。
 運が良ければ、銀河の列の両端にある2つの暗い銀河を詳しく調べ、それが多くのダークマターを含むもとの銀河の残骸であるかどうかを突き止めることもできるだろう。とはいえこのプロジェクトには、次世代の地上望遠鏡か、NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の能力が必要になるだろう。
 「それができたらすばらしいでしょうね」とバン・ドックム氏は言う。「これらの銀河の測定は、私の究極の目標です」
 ギャラリー:ハッブル望遠鏡 50の傑作画像
 ハッブル宇宙望遠鏡は、長年にわたって宇宙の画像を送り続け、人々を魅了してきた。そのなかから、専門家が厳選した画像など本誌未掲載もあわせた50の傑作画像を紹介する。(NASA; ESA; F. PARESCE, INAF-IASF, BOLOGNA, ITALY; R. O’CONNELL, UNIVERSITY OF VIRGINIA; WIDE FIELD CAMERA 3 SCIENCE OVERSIGHT COMMITTEE)
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 [ナショナル ジオグラフィック日本版サイト2022年5月31日掲載]情報は掲載時点のものです。
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