🐟23〗─1─「腐敗組織」農協の闇。JAは本当に農家の味方なのか?~No.92No.93No.94 

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 2022年8月11日 MicrosoftNews 現代ビジネス「「腐敗組織」農協の闇を、元「日本農業新聞記者」が暴く! JAは本当に農家の味方なのか?
窪田 新之助
 農業協同組合(JA)は、元来、営利目的ではなく、「経済的に弱い立場にある組合員の生産や生活の向上のため」に設立されたものだ。しかし、そんなJAが、今や共済(保険)事業と信用(銀行)事業に依存し、職員に過大なノルマを課しているという。そして、その結果、現在、多くのJAで「不正販売」と「自爆営業」が蔓延っている。
 JAで、一体なにが起こっているのか。なぜそのような事態になってしまったのか。元「日本農業新聞記者」窪田新之助氏の新刊ルポタージュ『農協の闇』から、3回に分けてご紹介します。
 © 現代ビジネス
 消された連載記事
 記事が忽然と消えていた。
 2021年7月13日から17日にかけて、オンライン・メディア「マイナビ農業」で4回にわたり掲載した、「JA共済の闇」と題するシリーズ記事のことだ。最終回の公開から1週間後、読み返そうとネットで検索したところ、なんの前触れもなくすべての記事が削除されていたのだ……。
 「共済」とは、協同組合に出資している「組合員」たちが互いに掛け金を出し合って、病気や交通事故、自然災害などで、命や家財などが不測の事態に陥った場合に、そこから共済金を受け取れるサービスや仕組みをいう。いわゆる「保険」であるが、あえて「共済」と呼ぶのは「互いに助け合う」という意味を込めてのこと。設立の目的が、株式会社と違って営利ではなく、「一人ひとりが経済的に弱い立場にある組、合、員、の、生、産、や、生、活、の、向、上、の、た、め、」とする、協同組合らしい言葉遣いである。傍点を振ったのは、本来、組合員こそが協同組合の主役であるということを覚えておいてもらいたいからだ。
 広告差し止めをちらつかせ、メディアを脅す「JA共済連
 なぜネット記事は削除されたのか。直後にその経緯を調べると、JAグループで共済事業の「司令塔」を自称する「全国共済農業協同組合連合会JA共済連)」が、オンライン・メディアの運営会社に圧力をかけていたことが判明した。
 JA共済連といえば、有名女優を起用した広告をテレビや新聞に打っているので、名前くらいはご存じの方も多いだろう。だが、実際は知名度以上に大きな巨大組織で、その規模は業界最大手の保険会社と肩を並べる。
 JA共済連は、私の連載記事が掲載されたオンライン・メディアの運営会社にも、数多くの広告を出稿していた。もし連載を削除しなければ、広告の出稿を取り止めると迫ったわけである。そして、これには、広告を出しているほかのJAグループの全国組織も同調をちらつかせたという。
 JAは本当に農家の味方なのか?
 この一件で思い出したのは、2011年に起きた、まったく似たような出来事だった。
 私は当時、JAグループの機関紙「日本農業新聞」の記者だった。その当時、力を入れて取材していたテーマの一つが、和歌山県で生産される梅干し用の梅を巡る価格カルテルの問題である。産地には梅干しの加工業者らでつくる協同組合があるが、その加盟各社が価格を横並びにして、農家から梅を安く買い取っていた。そして、それは、第三章で明らかにするとおり、過去形でなく、いまも続いている。
 © 現代ビジネス 田辺市とみなべ町に広がる梅畑
 私がこれを追及したのは、農家から梅干しの原料となる梅を不当な価格で買い取る行為に、なんと地元の二つのJAも加担していたからである。二つのJAは、農家のための組織でありながら、梅干しの加工もすることから、加工業者の協同組合にも加盟していた。
 JAグループの機関紙という性格上、「日本農業新聞」で、JAを名指しで批判する原稿は社内で通らない。そこで、原稿にはJAの名前を一切出さず、加工業者の協同組合を批判の対象とすることで、掲載にこぎつけた。
 疑惑が明るみに出たことで、最終的に二つのJAを含む加工業者らは、公正取引委員会から「警告」の措置を受けた。その詳細は後述するとして、ここではこの記事を掲載した後に起きた、次の出来事を記しておきたい。
 組合長が握りつぶそうとした不都合な真実
 私が価格カルテルの疑惑を報じた後、JAの関係者が圧力をかけて、続報を握りつぶしにきた。とくに強硬だったのは、当時、地元「JA紀南」(和歌山県田辺市)の組合長を務めていた中家徹氏(現「JA全中」会長)だ。第一報を載せた直後、私の携帯に電話をかけてきて、「続報は出すな」と牽制してきた。無視して続報を記事にすると、私では埒が明かないと思ったのか、今度は会社に圧力をかけてきた。
 © 現代ビジネス 原料梅が10キログラム入った樽
 「日本農業新聞」は、全国各地のJAが営業活動をしている。県内のJAに対して指導的役割を果たし、広報活動もする「JA和歌山中央会」の副会長でもあった中家氏は、その立場を使って、同紙の営業をやめることをほのめかしてきたのだ。そして、実際にそれを強行した。
 中家氏は、組合員である農家の利益に反する行為に目をつぶり、さらにそれを明らかにする報道を握りつぶそうとした。そして、その人物が、やがて「JAグループ和歌山」のトップを経て、JAグループを統率する「全国農業協同組合中央会JA全中)」の会長にのし上がっていく。しかも、彼は、在任期間中の2020年に、役員の定年をそれまでの「70歳未満」から「70歳以下」に変更させ、当時70歳だった中家氏はぎりぎりのところで二期目の続投を果たした。これにより、2023年まで会長職を務めることになっている。
 農家や組合員への裏切りが常態化しているだけでなく、そうした行為を黙認して、あまつさえ圧力をかけるような人物がグループのトップに居座り続けるJAとは、いかなる組織なのか。この巨大組織は、どのような不都合な真実を隠しているのか。協同組合という仮面を外した素顔は、どのようなものなのか。こうした問いが、本書を執筆するに至った動機である。
 「パチンコと風俗」以外、すべてを扱う
 JAとは「Japan Agricultural Cooperatives」の略で、総合農協は1992年から自らをJAと呼ぶようになった。本書では、時代に関係なくすべてJAと呼ぶことにする。
 JAは、総合農協という名前のとおり、その事業の幅は非常に広い。たとえば量販店や託児所、介護施設、結婚式場、病院なども経営している。いわゆる「何でも屋」である。やっていないことといえば、「パチンコと風俗くらい」と揶揄されるほどだ。
 組織の構造は縦割りのピラミッド型
 JAは、縦割りのピラミッド型の構造になっている。底辺に位置するのは地域のJAだ。地域のJAには、おおむねその土地の名前が付いている。たとえば愛知県を例にとれば、「JAあいち三河」(岡崎市)や「JAなごや」(名古屋市)といった具合だ。
 © 現代ビジネス
 この地域のJAは、かつて全国に1万以上あったものの、だんだんと減り、2022年4月1日時点で551となっている。減ったといっても、JAの空白地帯ができたわけではない。経営が悪化して単独で存続することが難しくなれば、近隣のJAと合併して生き延びる。だから日本中、JAの事業が及ばない地域は存在しない。どれほど辺鄙な山間・離島であっても、そこに人の営みがあれば、JAは何かしらのサービスや商品を提供している。
 「JA=悪」という立場には与しない
 ここで留意点を述べたい。JAに対する基本的な認識である。本書では、JAの腐敗の構造を徹底してあぶり出すつもりだ。おのずとJAを批判することになる。
 ただ、基本的に批判する対象はその場で取り上げるJAであって、JAすべてではない。それぞれのJAは、独立した経営体である。優れた組織もあれば、そうでない組織もある。あるいは同じJAでも、優れた点もあれば、そうでない点もある。だから、あるJAで起きている不祥事が、必ずしもすべてのJAに共通して存在するわけではない。そういう意味で、JA批判にありがちな「JA=悪」という姿勢に与するつもりは毛頭ない。
 腐敗した組織
 そうは言っても、多くのJAは秩序を失い、もはやどうしようもなく腐敗している。なぜか? 端的にいえば、その本来の理念や目的から遠く離れてしまったからだ。
 農業協同組合という組織の性格からすれば、言うまでもなくJAの本業は経済事業である。ところが、ほとんどのJAで経済事業は赤字に陥り、共済事業と信用事業(合わせて金融事業と呼ぶ)で穴埋めをしているのが実態だ。だが、頼りにしてきた金融事業も長引く低金利で見通しは暗く、概してJAの経営ははなはだ厳しい局面に置かれている。
 © 現代ビジネス 経済事業は赤字に陥り、共済事業と信用事業で穴埋めをしている
 にもかかわらず、多くのJAの上層部は、過去の成功体験にすがるしかなくなっているのが、悲しいかな現実である。つまり金融事業が低迷しても、ほかに打開策を見出せないので、またそのつもりもないので、それへの過度な依存を止められないのだ。JAの上層部は経営の能力ではなく、その土地で顔が利く人がなることが多い。彼らにできることといえば、金融事業で販売ノルマを設定して、その達成のために職員を追い立てるくらいである。
 結果、さまざまな無理が生じている。それが冒頭で紹介したような違法性や背任が疑われる行為として、あちこちから噴き出しているのだ。
 全国津々浦々に拠点を持ち、1000万人以上の組合員を抱えるJAは、日本に残る最後の巨大組織といえる。この巨象を包む闇は、限りなく広く、深い。
 © 現代ビジネス」
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