🗡59〗─2─危機的日本防衛産業の維持へ国が本腰。~No.186 

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 2021年10月20日 MicrosoftNews Merkmal「“危機的”国内防衛産業の維持へ国が本腰 「輸入増→撤退→基盤崩壊」悪循環どう断ち切る
 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
 © Merkmal 提供 航空自衛隊が導入するF-35B戦闘機。国内で最終組み立てと検査が行われているF-35Aとは異なり、完成機をアメリカから輸入する形で導入される(画像:イギリス海軍)。
 撤退相次ぐ防衛装備品 防衛省も危機感
 防衛省が令和4(2022)年度から、危機的な状況にある防衛産業基盤の維持・育成に本腰を入れる。
 2021年8月31日、防衛省が令和4年度予算の概算要求を発表した。同省は概算要求と年末の予算案の発表時に、来年度予算の概要をまとめたパンフレット「我が国の防衛と予算」を発表しており、その冒頭では来年度、同省がどのような事業に重点を置くのかが示されている。
 今年度(令和3年度)の「我が国の防衛と予算」の冒頭では、宇宙・サイバー・電磁波領域の強化や、スタンド・オフ防衛能力の整備、少子高齢化も踏まえた人的基盤の強化などが挙げられていたが、令和4年度はこれらの事業に加えて、防衛産業基盤の強化が明記されている。
 防衛産業をめぐっては、利益率の低さに加えて、航空自衛隊F-35戦闘機や海上自衛隊のSM-6ミサイルといったアメリカからのFMS(対外有償軍事援助)を使用する防衛装備品の輸入が増加しており、相対的に国内企業が製造する防衛装備品が減少している。そうしたこともあって、防衛装備品の製造から撤退する企業が相次いでいる。
 防衛省もこの状況に危機感を持っており、防衛装備庁は2020年12月17日に経団連日本経済団体連合会)と意見交換会を実施している。この意見交換会では「サプライチェーンの維持・強化」「契約制度および調達のあり方」「先進的な民生技術の積極的な活用」「情報保全の強化」「防衛装備・技術の海外移転」の5項目についての話し合いが行われている。令和4年度概算要求には、ここで得た知見を基にしたとみられる防衛産業基盤の強化へ向けた様々な施策が盛り込まれている。
 DX推進に11億円計上
 © Merkmal 提供 韓国の航空機メーカーKAIのMRO施設(画像:KAI)。
 サプライチェーンの維持・強化に関して防衛省は令和4年度概算要求に、製造工程の効率化を促す企業の支援制度の創設と、防衛産業のDX(デジタル変革)を進めるための革新的な技術の研究に要する経費として11億円を要求している。
 海外に目を向ければ、アメリカ空軍の次期高等練習機としてボーイングとサーブが共同開発したT-7A「レッドホーク」や、イギリスが開発を進めている将来戦闘機「テンペスト」など、近年の防衛装備品開発では、開発期間の短縮とリスク低減に寄与するデジタル設計が多用されている。
 また、3Dプリンターを使用する部品の製造も増加の一途をたどっており、韓国は開発を進めている新戦闘機KF-21「ポラメ」に、国内企業が3Dプリンターを使用して製造する部品を多用することで、国産化率を引き上げる方針を示すなど、製造工程の効率化を可能とする新技術の導入も活発になっている。
 イギリスの軍事情報誌『Janes』は、防衛省航空自衛隊の次期戦闘機の開発にデジタル設計を多用する方針を固めたと報じているが、日本の防衛産業はデジタル設計や3Dプリンターなどの新技術を使用する部品の製造では、先進諸国の防衛産業に比べてやや出遅れている感がある。
 防衛産業のDX推進と製造工程の効率化は、防衛産業基盤の強化だけではなく、日本の防衛力整備を円滑に進めていく上でも不可欠だ。来年度に予定されている防衛産業のDXを進めるための研究成果が再来年度以降、どのような形で実際の施策に反映されていくのか、今後も注目していく必要があると言えよう。
 海外に売れた装備はレーダー1件
 条件付きながら、防衛装備品の海外移転を可能とした防衛装備移転三原則が2014年4月に制定されてから間もなく7年半が経過するが、自衛隊から退役した航空機や航空機部品の譲渡を除けば、海外への防衛装備品の輸出実績は、2020年8月にフィリピンとの間で成立した警戒管制レーダーしかない。
 日本の防衛装備品が国際市場で競争力を持てない理由の一つは、輸出後のサポート体制が他国に比べて貧弱なことにある。工業基盤が充実している先進国以外の国への防衛装備品の輸出にあたっては、輸出後も長期にわたって保守整備のサポートが求められることが多い。このためアメリカ、ヨーロッパ、ロシアなどの企業は、自国の軍で輸出する防衛装備品の運用や維持整備に携わっていた退役軍人を雇用して輸出国の軍をサポートしている。
 これまで日本の防衛産業には他国の軍が運用する防衛装備品の維持整備を支援できる体制がなかったが、令和4年度は東南アジア諸国を対象に、民間企業と防衛省自衛隊が一体となって、防衛装備品の維持整備の技術支援を行う計画で、そのための経費として2億円を要求している。
 防衛装備庁は在日アメリカ軍の防衛装備品の維持整備によって培われた国内企業の高い技術力を活かして、外国の軍が運用するアメリカ製防衛装備品のMRO(整備・補修・オーバーホール)事業への国内企業の参画も模索している。令和4年度に計画されている東南アジア諸国へ向けた防衛装備品の維持整備の技術支援は、防衛装備品の輸出だけではなく、外国軍が運用するアメリカ製防衛装備品のMRO事業へ参入することへの足がかりを築く意味もあるものと考えられる。
 防衛省が令和4年度に計画している防衛産業基盤強化のための取り組みは、いずれも有効なものであると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思うが、すでに国内防衛産業基盤は危機的状況にあり、迅速に具体的な施策を実行していくことが求められる。」
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