⚡30】─2─中国の"LNG爆買い"で危険度を高める日本の電力不足。〜No.130 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 2021年7月23日 MicrosoftNews プレジデントオンライン編集部「「この夏と冬には東電管内で停電リスク」中国の"LNG爆買い"で危険度を高める日本の電力不足
 © PRESIDENT Online 中国北部の河北省唐山市で建設が進む液化天然ガスLNG)貯蔵タンク。2020年5月23日撮影。
 この夏と冬には東電管内で「電力不足」が生じる恐れ
 「梅雨明け以降、猛暑が来たらまたこの年末年始のようになるかもしれない」。電力業界から聞こえていたそうした不安は、この猛暑で現実になりつつある。
 この冬の電力不足は予想外の寒波による電力需要の急増に加え、燃料である液化天然ガスLNG)の輸送がパナマ運河のタンカーの停滞など特殊要因が重なり、電力燃料であるLNGの調達が困難になったことから引き起こされた。
 大手電力は稼働を止めている石炭火力発電所を急遽、再稼働したり、ライバルのガス会社からLNGの「おすそ分け」を受けるなどして急場をしのいだ。
 背に腹を変えられないとして、歴史的な高値を付けたスポット価格でLNGを購入したこともあり、大手電力の業績は軒並み落ち込んだ。
 さらに追い打ちをかけるように、この状況下に菅義偉首相肝入りの「脱炭素」の政策が加わる。
 経済産業省は5月、2021年7~8月と22年1~2月は電力需給が逼迫するとの見通しを明らかにした。夏はここ数年で最も厳しく、冬は東京電力管内で電力不足が生じる恐れがあるという。
 脱炭素政策で石炭火力が相次ぎ撤廃、需給バランスに崩れ
 電力の供給力の余裕度を示す「予備率」は北海道と沖縄を除き、7月に3.7%、8月に3.8%と見込まれている。一般的に予備率は3%が必要とされ、ここ数年では最も厳しい水準となりそうだ。さらに、22年1~2月は東電管内で予備率マイナスを予想している。
 経産省が「電力不足」を警戒するのは、脱炭素政策で環境負荷の高い石炭火力発電所が相次いで撤廃に追い込まれ、需供バランスが一気に崩れているからだ。電力会社の火力発電所は縮小傾向で、電力の安定供給に支障が出やすい状況となっている。
 経済活動の「血流」ともいえる電力が不足しかねないという一大事に、さらに新たな打撃が加わろうとしている。中国の「LNGの爆買い」だ。
 新型コロナウイルス感染拡大から一足早く抜け出した中国は、経済活動の回復から電力需要が高まっている。
 それに加えて、これまで沿岸部が中心だった経済活動の地域が内陸部まで浸透し始め、「国全体の電力需要がワンノッチあがっている」(大手商社幹部)という。
 中国は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になる見通し
 特に、製造業が集積し、中国の国内総生産GDP)の一割を占める南部・広東省では異例の電力不足に見舞われている。その理由は「少雨で水力発電がままならない」とか「石炭の価格上昇で火力発電所の発電が計画通りできない」などと説明されるが、そもそも内陸部の急速な工業化に伴って電力需要が増加している。さらに、脱炭素に向けた国際的な世論もあり、石炭からLNGへのシフトが進みつつあり、LNGの需要はかつてないほど高まっている。
 南部の国有送電会社、中国南方電網管内の1~5月の電力消費は前年同期比23.2%も増えた。全国平均より5.5ポイント高い数値だ。このため、電力当局は5月、電力不足を理由に、産業や企業ごとに供給を調整する方針を発表するなど、中国経済の成長へのボトルネックとなっている。
 内陸部への工業化の進展で不足する電力を賄うためLNGの爆買いを進める中国。調査会社ICISエッジは、今年、中国は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になるとの見通しを示している。
 業界では中国が世界最大のLNG輸入国になるのは2022年以降だと言われていたが、1年前倒しとなるわけだ。同社によると、20年6月から21年5月のLNG輸入量は、中国が7627万トン、日本が7632万トンとなっているが、21年の輸入量は、中国が8120万トンと、日本の7520万トンを上回る見通しだ。
 LNG不足で、新電力の経営破綻は今後も続く
 この「LNGの爆買い」で、日本の卸電力市場の取引価格が再び上昇基調を強めている。
 日本卸電力取引所(JEPX)で毎日取引するスポット価格(24時間平均)は、5月(1~22日)の平均が1キロワット時6.87円。20年5月の月間平均値である4.18円に比べ64%も高くなった。
 スポット価格はこの冬の寒波襲来と発電燃料の不足で1月に150円超まで急騰したが、2~3月は前年同期に近い水準に戻った。しかし、落ち着いたのもつかの間、LNG不足でスポット価格がまた上昇し始めた。
 例年なら、暖房不需要期となる5月は余ったLNGを消費する期間だが、「今年は余剰が少ない。余ったLNGを使ってつくる安値の電気の入札がかなり減っている」(JEPX)。
 電力供給が足りず電力卸価格の上昇がさらに進めば、卸市場から電力を調達する新電力の経営にも大きな打撃になる。
 この冬の電力不足で新電力最大手のFパワーが3月に会社更生法を申請、経営破綻した。負債総額は464億円と21年に入り最大の倒産となった。電力の調達不足を大手電力に肩代わりしてもらう代わりに支払う「インバランス料金」の負担が新電力各社の経営の重荷になっている。「4社のうち1社は支払い猶予を受けている」(業界関係者)といい、新電力の経営破綻は今後も続くとの見通しが強い。
 カタールと日本の電力会社らが結ぶ25年契約が終了
 新電力の淘汰・再編以上に深刻なのが、日本の製造業などへの生産活動にも影響を与えかねない大手電力の経営問題だ。
 大手電力は、政府が進める電力の自由化と脱炭素の「ダブルパンチ」に直面している。大手電力は自由化前までは「総原価方式」で燃料代の上昇分は電気料金に上乗せできたが、自由化後は、新電力の台頭でそれができなくなった。
 またLNGについては、在庫損を防ぐために、その時々の在庫の状況を見ながらスポットで契約する「随時契約」に舵を切っているが、そのスポット価格が中国の爆買いで上昇している。
 中国の「爆買い」によるLNG市場での台頭は、調達国とLNGを供給する産ガス国との関係も変える。
 例えば、2021年末に日本の電力・ガス会社など7社と結んでいる中東・カタールと結んでいる25年間のLNGの供給契約が切れる。カタールは日本のLNG輸入の約1割を担うが日本の電力・ガス会社7社が結んでいる25年間のLNG契約が終了する。
 カタールLNGの供給国として存在感を高めた陰には日本の存在がある。湾岸戦争の翌年の1992年、中部電力が先頭を切って契約を結んだ。当時のカタール湾岸戦争の影響もあり経済が混乱していた。復興のために見出したのがLNGの輸出だ。三井物産などが少数株主として開発の合弁プロジェクトを立ち上げた。
 カタールにしてみれば、中国になびくのは自然
 カタールにとって日本は湾岸戦争からの復興をサポートしてくれた「恩人」ともいえる存在で、長く両国の関係は良好だった。しかし、そこに中国が割り込むことになる。
 この冬に東アジアを襲った寒波は中国にも波及し、カタールなどにも調達の手を広げた。一方、日本はLNGの調達先を分散するために中東依存を減らす動きを強めており、カタールが望む長期契約に揺らぎが生じている。「足りなくなった時に一時的にカタールに発注するスポット契約が多くなってきた」(大手商社)。
 そんななか、3月に入り、カタール国営石油会社は合弁会社に参画している米エクソンモービル三井物産、丸紅などの出資を22年1月に解消すると発表した。LNGで生計を立てているカタールにとって、安定的に大量のLNGを買ってくれる「お得意様」を優先するのは理にかなった話だ。日本は米国やインドネシア、ロシアなど最近になってLNGのプロジェクトを立ち上げている。日本が相対的にカタールとの取引の比重を下げているとすれば、カタールが今や日本を凌駕する購買力を持つ中国になびくのは自然だ。
 日本にとってまだLNGは電力燃料として必要だが、脱炭素の流れを受けて太陽光や洋上風力など再生エネルギーに置き換えようとしている。カタール以外からの調達先の確保も急いでいる。大手電力各社は「足りなくなった時にスポットでカタールからLNGを調達すればいい」と考えている節があるが、カタールにしてみれば「そんな都合よく売れない」ということになる。
 新電力も加えた業界は「総倒れ」の状況に
 LNG火力が厳しいなか、日本の大手電力にとって最後のよりどころは原発だ。関西電力美浜原発福井県)が運転開始から40年を超える原発として初の再稼働にこぎつけた、「結局、日本の脱炭素のカードは原発しかないのか」との批判の声は多い。
 不完全な自由化のなかで推し進めようとした脱炭素の大号令で、新電力も加えた業界は「総倒れ」の状況に直面しつつある。中国のLNG爆買いで、LNGの調達価格はあがり、それが日本の電気料金の上昇に跳ね返ってくるのも時間の問題だ。電気料金が上昇すれば、自動車や電機業界など製造業は競争力を維持するためにも生産拠点を海外に移さざるを得なくなる。その動きがさらに日本国内の電力需要を弱め、電力会社の経営を悪化するという悪循環を引き起こす。
 LNG化石燃料であるため、脱炭素の世界的な潮流の中で依存度を減らす必要があるのは事実だ。しかし、偏西風が恒常的に吹き、安定した風力発電ができる欧州とは地理的条件が違うため、すぐに再生エネルギーにシフトすることは日本にとって現実的ではない。
 「地球環境保護」を全面的に掲げ、自国に有利に働くように政策誘導をする欧州に対して、「日本の国情をもっと対外的に説明すべきだ」との声は政府内にもある。しかし、原発や再エネをどういう形でつなぎながら中長期的に脱炭素に向けてエネルギー戦略を練り上げていくかという議論は、東電の福島第一原発事故以降、政府は本格的な議論を避けてきた。中国が日本に代わり、LNGの輸入大国になれば、エネルギーの安定調達が不安定になり、日本の産業を支える安価で安定的な電力供給の課題がまた一つ増えることになる。」
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