📉12〗─1─大学が軍事研究、反対意見相次ぐ 日本学術会議シンポ。~No.27 

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 2017年2月4日 朝日新聞「大学が軍事研究、反対意見相次ぐ 日本学術会議シンポ
 竹石涼子、嘉幡久敬、杉原里美
 安全保障と学術をめぐるシンポでは、会場とパネリストの間で活発な質疑と意見交換があった=2月4日、東京都港区の日本学術会議
 日本学術会議は4日、東京都内で安全保障と学術との関係を巡り、軍事研究を行わないとしてきた過去の声明の取り扱いなどについて議論するシンポジウムを開いた。検討委が1月、中間とりまとめで軍事研究に慎重姿勢を示したことに参加者が相次いで支持を表明。検討委は今回の討論を踏まえ、今春の最終とりまとめを目指す。
 約340人が集まった会場ではまず、検討委委員長で法政大教授の杉田敦氏が中間とりまとめの背景を説明。防衛装備庁が2015年から始めた大学などへの研究助成制度について、同庁の介入の度合いが大きく、学問の自由や開かれた場としての大学への影響が懸念されるとした。
 続いて意見表明を申し出て講演した科学史、技術戦略、物理学、医学の各分野の4人とメディア代表の1人が中間とりまとめを支持。一方、未来工学研究所政策調査分析センター研究参与の西山淳一氏はミサイル開発の経験から軍民両用研究に理解を求めた。
 その後、参加者と検討委委員との公開討論があり、防衛装備庁の研究助成制度について科学史の研究者が「大学も研究室も大学院生も巻き込むことになる。大学は教育する場でもあり、個人がやりたいから、というのは良くない」と意見を述べ、別の大学研究者も「応募しないことが望ましいと明記してほしい」と発言した。」
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 安全保障と学術に関する検討委員会
 (声明)「軍事的安全保障研究に関する声明」
 インパクト・レポート
 (改訂版)
 1 声明内容
 (背景)
 日本学術会議は 1950 年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明(声明)」を、また 1967 年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発出した。半世紀を経過し、近年、再び軍事と学術とが各方面で接近を見せている。その背景には、軍事的に利用される技術・知識と民生的に利用される技術・知識との間に明確な線引きを行うことが困難になりつつあるという認識がある。他方で、学術が軍事との関係を深めることで、学術の本質が損なわれかねないとの危惧も広く共有されている。また、防衛装備庁が大学等の研究者をも対象とした安全保障技術研究推進制度を平成 27 年度に発足させ、これへの対応のあり方も検討を要するものとなっていた。
 日本学術会議は、第 229 回幹事会(平成 28 年5月 20 日)の決定にもとづき、安全保障にかかわる事項と学術との関係について、今日の時点で日本学術会議として示すべき考え方を検討することを目的として、安全保障と学術に関する検討委員会を設置した。
 本声明は、安全保障と学術に関する検討委員会が審議を行い、第 243 回幹事会(平成 29 年3月 24 日)において決定したものである。
 なお、インパクト・レポートは意思の表出から一年以内に幹事会に提出するものとされており、通例、一年後をめどに提出されている。しかし本声明の場合、インパクトの大きさとその範囲の広さ、ならびに課題別委員会である当委員会がこの9月で任期切れとなることに鑑み、この時点で出すことが適切と判断した。次期以降との連続性に関しては、「5. 考察」を参照されたい。
 (声明全文)
 日本学術会議が 1949 年に創設され、1950 年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、また 1967 年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した背景には、科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、上記2つの声明を継承する。2 科学者コミュニティが追求すべきは、何よりも学術の健全な発展であり、それを通じて社会からの負託に応えることである。学術研究がとりわけ政治権力によって制約されたり動員されたりすることがあるという歴史的な経験をふまえて、研究の自主性・自律性、そして特に研究成果の公開性が担保されなければならない。しかるに、軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後
に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある。
 防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(平成 27 年度発足)では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い。学術の健全な発展という見地から、むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である。
 研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められる。大学等の各研究機関は、施設・情報・知的財産等の管理責任を有し、国内外に開かれた自由な研究・教育環境を維持する責任を負うことから、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである。学協会等において、それぞれの学術分野の性格に応じて、ガイドライン等を設定することも求められる。
 研究の適切性をめぐっては、学術的な蓄積にもとづいて、科学者コミュニティにおいて一定の共通認識が形成される必要があり、個々の科学者はもとより、各研究機関、各分野の学協会、そして科学者コミュニティが社会と共に真摯な議論を続けて行かなければならない。科学者を代表する機関としての日本学術会議は、そうした議論に資する視点と知見を提供すべく、今後も率先して
検討を進めて行く。
 2 採択年月日
平成 29 年3月 24 日
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