🌀16〗─1─新しく出現した感染症の6割は動物由来。野生の宿主から家畜・ペットを介して蔓延する。~No.125No.126 

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 2021年3月14年 MicrosoftNews 東洋経済オンライン「感染症はなぜ広がる?人類悩ます「残念な真実」 新しく出現した感染症の6割は動物由来
 石 弘之
 © 東洋経済オンライン コウモリやサルなどの野生動物から感染症が広がることも少なくありません(写真:Polarpx/PIXTA
 現在も多くの人が感染症によって命を落としています。人類は誕生以来、さまざまな感染症と格闘してきましたが、なぜ感染症は次々に出現し、広がってしまうのでしょうか。ジャーナリストの石弘之氏の新著『図解 感染症の世界史』から一部抜粋・再構成して、その理由を解説します。
 前回:新型コロナ「武漢より前に世界拡散」の衝撃事実
 ペットから人へうつる病気もある
 人類は、1万年にわたって家畜と密接な関係を持ち続けてきたことで、ヒトは犬と65種類、牛と55種類、羊と46種類、豚と42種類、ヒトの感染症を共有しています。複数の宿主に感染するものも少なくありません。
 アメリカの進化生物学者ジャレド・ダイアモンドは著書『銃・病原菌・鉄』の中で、「家畜は病気の温床であり、食物生産が感染症を生んだ」と記しています。牛からはハシカや天然痘、豚からは百日咳やE型肝炎、カモ類からはインフルエンザなどを感染しました。
 ペットから人へうつる病気もあります。犬からは狂犬病エキノコックス症、猫からはトキソプラズマ、小鳥からは鳥クラミジア症(オウム病)などです。ただし、東京都が都内の小学校で飼われている小動物187頭を対象に9種の病原体を調べた結果、病原体は見つかりませんでした。
 このほか、国内で感染拡大や侵入が心配される動物由来感染症には、狂犬病、野鳥から感染する西ナイル熱エボラ出血熱などのウイルス性出血熱など数多くあります。
 アフリカなどでは、食料にする野生動物(ブッシュミート)から人へという新たな感染が続いています。たとえばサルやコウモリ、ハクビシンなど、さまざまな動物が市場で売られています。
 世界自然保護基金(WWF)などが2000年に発表した報告書によると、ブッシュミートの取引はケニアタンザニアなどアフリカ7カ国23カ所だけで年間8500キロ、価格にして770万ドル相当にもなります。WWFはアフリカ全域で年間6億頭以上の野生動物が食用のために殺されていると推定。野生動物の狩りのときにかまれたり、解体時の血液などから人へ感染しています。
 コロナウイルスは新興感染症のひとつ
 過去半世紀の間に出現した新しい感染症のことを「新興感染症」(エマージング感染症)、一度収まったものの再び流行する病気を「再興感染症」といいます。過去半世紀の間に現れた156種の病気のうち、114種(73%)までが新興感染症です。
 コロナウイルスはそのひとつで、HIVエイズ、ラッサ熱、エボラ出血熱など致死率が極めて高い新顔も含まれています。
 次々に新興感染症が出現したこの半世紀は、環境破壊が世界的に急拡大してきた時期でもあります。人口急増や経済拡大で、森林の伐採や開墾、鉱工業の拡大、都市の膨張など、本来の安定した自然のシステムが随所で崩壊しました。
 新興感染症はアフリカ起源のものが少なくありません。アフリカでは、人口の爆発と熱帯林の破壊が加速しています。ラッサ熱やエボラ出血熱など新顔ウイルスの流行地を見ると、熱帯林内にできてそれほど日が経っていない集落が多いことに気づきます。
 そういったところでは、森林を追われた野生動物と人が接触するようになります。生息地を失ったネズミなどのげっ歯類やコウモリが集落に侵入し、新たな病原体を持ち込むのです。
 森林伐採は熱帯林に集中しています。国連食糧農業機関(FAO)によると、毎年約250万平方キロ、1時間当たり東京ドーム127個分もが消失しています。熱帯林が地球の陸地に占める割合は7%に過ぎませんが、そこには地球上の生物種の50~80%が生息しています。病原体もその生物多様性の一部なのです。
 アメリカ野生動物保護学会は、新興感染症の60%までが動物を介して人に感染する「動物由来感染症」と発表しています。
 農業用の灌漑は宿主の絶好のすみかに
 人類が定住化を始めた初期、定住場所はほぼ水辺に限られていました。そのため、水を介して感染する病気が集団発生しました。農業用の灌漑(かんがい)のために、澱(よど)んで水深の浅い水路が掘られた結果、昆虫や巻貝など病原体の宿主の絶好のすみかとなり、感染症がはびこる環境を作り出したのです。
 その代表が、ハマダラ蚊が媒介するマラリアです。マラリア原虫が引き起こします。症状は発熱と悪寒ですが、錯乱などを伴うマラリア脳症を発症させることもあり、致死率は60%にも達します。
 マラリアが歴史に登場するのは、紀元前1万8000年ごろ。霊長類からヒトに感染したとみられます。農業の開始と同時期に流行が始まり、農業の普及とともに勢力を増していきました。
 日本でも古い文献に「おこり」と称される感染症が登場し、これはマラリアと考えられます。『平家物語』には平清盛の臨終の場面がありますが、高熱にうなされる清盛の様子から、マラリアと推測されます。日本では1960年以後、感染者は出ていません。
 今日でも熱帯、亜熱帯地域を中心に、100カ国以上で発生、毎年40万~100万人もの人が命を落としています。その9割はアフリカの5歳未満の子どもです。
 マラリアが根絶できないのは、蚊が巧妙な対抗手段をもっているためです。数多くのワクチンの試みも成功していません。蚊を退治するために農薬がまかれていますが、これにも蚊が耐性をもって効果が薄れています。マラリア以外に、蚊は10種以上の病気を運んできます。デング熱、ジカウイルス感染症日本脳炎、黄熱病などの感染症です。
 日本でも発生した「デング熱
 2014年夏、これまで日本国内ではあまり耳にしたことのなかったデング熱が、都心の代々木公園で発生しました。あっという間に全国に広がり、店頭から虫除けスプレーが消えました。
 デング熱の原因は、ヤブ蚊の仲間であるヒトスジシマカネッタイシマカです。蚊がデングウイルスを持っていると、蚊の唾液とともにウイルスが人の体内に侵入し、デング熱に感染します。
 デング熱の症状はさまざまで、突然の高熱や関節痛、頭痛、発疹(ほっしん)などがあり、重症状の「デング出血熱」になると、10~20%の感染者で注射痕から出血したり、鼻血、血便、吐血などの症状が起きます。
 世界では毎年2万人以上が死亡、特に乳幼児の死亡のおもな原因となっています。ただし50~80%は感染しても症状が現れません。
 実は私自身も、タイでデング熱にかかったことがあります。突然の高熱に続いて強い関節痛や頭痛が起こり、英語でbone-breaker(骨折り病)とよばれることがよくわかりました。
 デング熱の世界的流行の原因には、人がヒトスジシマカを発生させやすい環境を作ってしまったことに加え、地球温暖化の影響もあります。環境省によると、デング熱を媒介するヒトスジシマカの分布は、年平均気温11度以上の地域とほぼ一致しています。
 日本のこの蚊の分布は、1950年当時は福島県と栃木・茨城県の県境が北限でしたが、2000年以降は秋田北部から岩手県へ広がり、2010年には青森県内ではじめて確認されました。温暖化の影響をまとめた環境省の報告書では、2100年までには北海道まで拡大するという予測もあります。」
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