🌌34}─5─コロナ禍のペットバブル、非常識な「返品」も多発している。〜No.179No.180No.181No.182 

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 日本人はイヌやネコなどの動物が好きで愛情込めて大事にする、はウソである。
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 2021年2月23日 MicrosoftNews NEWSポストセブン「コロナ禍のペットバブル 非常識な「返品」も多発している
 © NEWSポストセブン 提供 ペットショップでは子犬、子猫でないと売れないという(イメージ、AFP=時事)
 犬や猫は法律上「物」であっても実際には「命」である。ところが、命とも思わず捨てる人間がいる。物のように安易にサプライズのプレゼントに使ったり、自分の都合で買った店に返品したりする人間がいる。俳人著作家の日野百草氏が、コロナ特需に沸くペットショップと売れ残った動物たちの行方、返品などの非常識な客の実態についてレポートする。
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「やっぱり飼えないから返すって飼い主、本当にいます」
 元ペットショップ店員、篠山あゆみさん(20代・仮名)が小さな声でこぼす。運ばれてからずっとコーヒーに口をつけず、元いたホームセンター併設のペットショップの悪口を一通り語り尽くしたあと、客の非常識について語り始めた。
 「ペット禁止の団地でバレたからとか、プレゼントで買ったのに受け取らなかったとか、地獄ですよ」
 一部の専門ブリーダーや特殊な動物を扱うような専門店を除けば、日本のペットショップの大半は顧客の住環境や生活パターンをヒアリングした上で犬や猫を渡すという仕組みがない。ペット禁止の団地やワンルームの住人でも金さえ払えば犬を買える。極端な話、四畳半の独居であっても客は金さえ払えば大型犬を買えるし、店は売れて金になればいい。
 「そうです。命が売れればいいんです。命がお金になればいいんです」
 篠山さんは「命」を繰り返すが、ペットショップの販売する生き物は民法上、「物」だ。「この法律において、『物』とは、有体物をいう。」の民法第85条が動物という有体を「物」と判断する根拠となっている。この有体物の中で例外は人間だけだ。つまりペットは排他的に支配できる、所有できる「物」である。日本のペットショップが「命」の売買をできる法的根拠がこの民法第85条だ。かつて人間を売買できたように、犬でも猫でも売買できる。売ってお金にできる。
 「それを非難することは私にはできません。バイトでも働いていたわけで。でも働いてみてわかったのは、本当に理解不能な人がたくさんいるということでした。普通、お迎えしたあとに気に入らないとか、やっぱ飼うのやめたで返品したりしませんよね」
 篠山さんがペットショップのアルバイトをした理由は、単純に動物が好きだから。もちろん働いてすぐそのギャップに苦しむこととなった。
 「大きな団地が近くにある(ホームセンター内の)店でしたが、コロナで売り上げはよかったですね。家族連れとかカップルが動物園気分で来てました。店に立つ私が言うのも変ですが、みんなコロナ気にしないのかなって」
 買ったペットを返しにくる人は、マシなほう
 篠山さんが勤務した期間は短く1年もない。動物と関係ない専門学校を卒業後にバイトを転々として、たどり着いたのがペットショップ。辞めた理由は、先の返品トラブルも含め、命の売買とそれに伴う命の軽視だ。
 「そのペットショップチェーンはすごいブラックだったんです。この店で売ってる子はオークションでも格安の子ばかりだって先輩は言ってました。社員さんは「出来が悪い」「病気持ち」とか平気で言う人でした。でもお客には調子のいいことばかり言ってました。格安の子を仕入れて、何十万って値段で売るんです。生体価格の倍近くします」
 ここでいうオークションというのは、日本各地で週に一回程度行われているペットの競り市のことである。日本のペットショップで売られている犬や猫の多くは、そういった競り市でバイヤーに競り落とされてからペットショップへと引き渡される。
 昨年「ペットショップの『コロナ特需』と売れ残った動物たちの末路」および「チワワが諸費込みで60万円 コロナで高騰するペット生体販売の闇」でも取り上げたが、コロナ禍で絶好調なのがペットビジネスだ。矢野経済研究所による「ペット関連総市場 市場規模推移と予測」によれば2019年度が1兆5700億円、2020年度は1兆5978億円、2021年度の予測では1兆6257億円と毎年250億円以上の増加が見込まれている。コロナ禍に疲弊する日本経済だが「巣ごもり」需要でペット産業は不況知らず、「犬でも飼うか」「猫でも飼うか」という人が増えている。
 初めてペットを飼うという家庭が増えているため、ペット保険も大手のアニコム損害保険アイペット損害保険ともに2020年上半期の新規契約件数が過去最高を記録している。まさにコロナ特需に降って湧いたペットバブルだ。景気循環には結構な話だが、扱う商品は「命」。法律上「物」として売られる子、ペットたちだが人道上は「命」である。
 「普通の人が思う以上にヤバい人って多いんです。団地で禁止されてるのにティーカップ(プードル)を50万円で買って、バレたからって返しに来るんです」
 ペットショップで購入した場合はクーリングオフの適用外である(それでも民事なので店次第)。店や土地柄によるのかもしれないが、常識では考えられないような客、飼い主になってはいけないような連中はいる。それがコロナ禍のペットバブルで初めて飼う人が増え、悪目立ちしている状況だ。もちろん、そんな連中でも犬や猫は金を出せば手に入る。
 「変な言い方ですけど、ちゃんと返しに来る人なんてマシです。社員さんが朝一で出社したら店の裏手にケージに入ったミニチュアダックスの子が置かれてたなんてこともありました。買った飼い主には連絡つかないし、たぶん、購入時にこちらに教えたのはデタラメの電話番号と住所なんでしょう。ペットバブルなんて最悪ですよ」
 大金払って犬を買ったのに意味不明の行動だが、飼えなくなった理由があったのだろうか。もっとも、店の大半は返品なんて受け付けていない。それでも実態は店次第の「個別案件」であり、販売時の説明に瑕疵があるとか、篠原さんいわく明らかに「ヤバい人」の場合、しぶしぶ応じることもある。返金も原則しないが、篠原さんの店の場合、めんどくさい相手の場合は返金もしていたという。結局のところ本部の判断、そして相手を見て決めるという。つまるところ、お互い犬や猫の幸せなんて二の次三の次。
 「捨てられちゃう可能性もありますから、それよりはマシ、と思うしかないです」
 ペットショップや動物病院に犬や猫が捨てられていたなんて話は昔からある。筆者の実家で飼っていた黒猫の三太郎は、妹が通っていた獣医大学で捨てられていた子だった。我が家で好き放題暮らして17年間の猫生を全うしたが、すべての捨てられた子がそうはいかない。ペットショップや動物病院、獣医大など、動物関連の施設なら捨ててもいいと思うのか、後ろめたさが解消されるのか。昔からよくあることとはいえ、理解し難い行為だ。
 売れ残りの鳥は死ぬまで、ハムスターは200円で投げ売り
 それにしても、篠山さんは半年ほどしか働いていないというのにこれだけのエピソード、非常識な人間はいくらでもいるということか。
 「それだけじゃないです。2ヶ月たって返品するって男性もいました。さすがに社員さんも驚いてましたよ。彼女にプレゼントしたけどトイレを覚えないし、うるさく吠えるんで彼女からいらないと言われたって。さすがに店長も拒否してましたけど、あの子はどうなったのでしょう」
 どうなったのもなにも、誰か別の人にあげたか、保健所に連れて行ったか ―― 筆者にはまったく理解できない連中だが、「そういう人間」は普通にいる。その男も彼女も「そういう人間」の類いだ。ひとたび飼い主となったなら、ペットはその欠点も含めて我が子同然に可愛い存在であると同時に責任が伴うはずだ。子犬も子猫も、飼い主を実の親のように頼るしかない。そんな我が子を虐待する人間、捨てる人間、他人にサプライズプレゼントという名の「遺棄」をして美談気取りのタレント ―― だが、彼らはたとえ非難されても、何が悪いかすらわからないだろう。そういう人間からすれば「物」であり、タレントからすれば自分を飾るためだけのファッションなのだろう。
 「ペットショップって、動物が好きな人には絶対無理な仕事だってわかりました」
 素直に語る篠山さんだが多くの「元・店員」となった人々の退職理由の大半はそれだ。好きなだけで続く仕事などないが、ことペットショップに至っては命の売買、ましてホームセンターやショッピングモールに出店している大半の「売らんかな」ペットショップは商売と割り切れる人でないと無理だろう。民法上の「有体物」、つまり「物」としてペットを扱える人でないと難しい。仕事だからと言ってしまえばそれまでだが、道徳なき経済は罪悪だ。
 結局のところ、以前から繰り返し指摘してきたように、あまりに野放しな日本の生体販売が原因であることは明白である。日本の動物愛護法は改正され、昔は罪が軽過ぎて器物損壊罪で裁いたほうがマシだったものが昨年、動物愛護管理法違反罪(5年以下の懲役又は500万円以下の罰金、それまでは2年以下の懲役又は200万円以下の罰金だった)として罰則が強化された。それでも遺棄、虐待はもちろん飼い主の資格のおおよそ無いような連中が減る気配はない。むしろコロナ禍のペットバブルで売る側はウハウハだ。
 「店にもよるのでしょうけど、お金になれば命なんかどうでもいいって人、ほんとにいるんですね。店も客も、理解できないヤバい人って本当にいるって知りました」
 篠山さんはしなくてもいい経験をしてしまったかもしれない。それでもいま、実家で保護猫を2匹飼っているそうで、不本意ながらもその店で「命」を学んだ結果なのだろう。筆者はペットショップ関係者には必ず聞くことがある。これが目的だと言ってもいい。売れ残った子はどこにいくのか。犬、猫、鳥、小動物、毎月仕入れる命のすべてが売り切れるわけでも、店員が引き取れるわけでもあるまい。これを篠山さんにも聞いてみた。
 「短い間だったので犬や猫はわかりません。他の店に行くだけでした。鳥は落鳥(鳥が死ぬこと)しなければずっと店で売るそうです。パピー(幼い子供)が売れ筋の犬や猫と違って、鳥は成鳥のままでも売れますからね。ハムスターは200円とか投げ売りすれば売れます。まとめてごっそり買う人もいます。何に使うのか知りませんが常連で、虐待のためかもしれないって店で噂してました」
 あまり多くは語ってくれなかった。これもいつものパターンであるが、ごく短いことを考慮すれば仕方のないことかもしれない。
 どんな相手でも客は客、お金さえ払えば動物は手に入る。ペット禁止の団地住民だろうが、老い先短い独居老人だろうが、異常な虐待マニアだろうが金さえ払えば命が手に入る。どこの国でもそういう闇があるかもしれないが、この国の命の売買はあまりにコンビニエンス、お手軽すぎる。さらなる厳罰化と規制が必要だろう。動物の命をないがしろにする国は、人間の命もないがしろだ。結局のところ人間に返ってくる。弱い立場の「命」から順番に苦しめられる。やがて人間も物として扱われる。
 あなたと出会った動物にも感情があり記憶がある。いったん出会ってともに生活すれば、我が子同然だ。その子は、あなたを疑わないしあなたと過ごした日々を忘れない。どんなに短くても覚えている。たとえ殴られても、病気で苦しくても、捨てられてもあなたのことが大好きだ。半年たらずで見知らぬ他人にサプライズプレゼントの道具にされて捨てられたって、あなたのことが大好きだ。
 それでもあなたは、手放しますか?
●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)寄草。著書『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)など。」

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