🌌28}─1・B─インド洋の海水温異常→チベット高気圧→日本の異常気象。~No.120 * ⑲ 

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 JAMSTEC 国立研究開発法人 海洋研究開発機構
 トピックス:コラム
 【コラム】今夏、インド洋に正のダイポールモード現象が発生か
 ~発生すれば3年連続に~
 2019年5月24日
 付加価値情報創生部門 アプリケーションラボ
 昨年の晩秋から、熱帯太平洋はほぼ全域で、平年より水温が高い状態が続いています。典型的なエルニーニョ現象とは、少々様子が違うようです。今後の熱帯太平洋の動向も気になるところですが、これからの季節は、熱帯インド洋の動向にも注意する必要がありそうです。それは、熱帯インド洋に正のダイポールモード現象が発生する可能性が高まっているためです。予測通りに進行するならば、2017年、2018年に続き、3年連続で発生することになり、非常に珍しいケースであると言えます。(2006年、2007年、2008年も3年連続で発生しました。Behera et al. 2008; Cai et al. 2009)。
 熱帯インド洋に正のダイポールモード現象が発生すると、インド洋東部から海大陸周辺にかけて、海水温が低下し、対流活動が抑制されて、インドネシア、オーストラリアでは干ばつが発生し、水不足による農業への影響や山火事の多発による煙害などが危惧されます。最大級の正のインド洋ダイポールモード現象が発生した1994年は、日本は記録的な猛暑でした。昨年も日本は記録的猛暑になりましたが、熱帯インド洋では正のインド洋ダイポールモード現象が発生していました(JAMSTECニュースコラム2016年6月6日掲載)。
 インド洋のダイポールモード現象とは?
 インド洋のダイポールモード現象は、熱帯インド洋で見られる気候変動現象で、5、6年に1度程度の頻度で、夏から秋にかけて発生します(Saji et al. 1999, Nature)。ダイポールモード現象には正と負の現象があり、特に正の現象が発生すると、熱帯インド洋の東部で海面水温が平年より下がり、西部で高くなるために、通常は東インド洋で活発な対流活動は西方に移動し、東アフリカのケニヤ周辺やその沖合で雨が多く、逆にインドネシアやオーストラリア周辺では雨が少なくなります(詳しくはこちら)。また、大気循環の変動を通して、西日本では雨が少なく、気温が高めに推移する傾向があります。このように、インド洋ダイポールモード現象は、インド洋周辺国だけでなく、欧州や東アジアの天候の異常に影響します。さらに、東アフリカで発生したマラリアなどの感染症の大流行(Hashizume et al. 2012)や、オーストラリアの小麦の凶作(Yuan and Yamagata 2015:詳しい解説)などを引き起こし、私達の安全・安心を脅かす程甚大な被害を与えることが解ってきました。
 インド洋ダイポールモード現象の発生は事前に予測できるか?
 インド洋ダイポールモードの現象は、最先端の科学技術でも、数ヶ月前から事前に予測することが難しいとされています。その中で、アプケーションラボのSINTEX-F予測シミュレーションは、スーパーコンピュータ”地球シミュレータ”を使って数ヶ月前からインド洋ダイポールモード現象の発生予測に成功しています。例えば、準リアルタイムで、2006年に発生した正のインド洋ダイポールモード現象の発生予測に成功し、国内外においてインド洋ダイポールモード現象の予測研究を活性化する先駆的成果をあげました(Luo et al. 2008)。その後も、予測精度を向上させるベく、予測システムの改良を続けています。例えば、従来のモデルを高度化(海氷モデルの導入、高解像度化、物理スキームの改善等)した第二版となるSINTEX-F2システム(Doi et al. 2016)や、海の内部の3次元の水温/塩分の海洋観測データ (海に浮かべてある係留ブイ(例えばJAMSTECTRITONブイ)、国際協力で海に投入されているARGOフロート、船舶観測等を予測初期値に取り込んだSINTEX-F2-3DVARシステムを開発しました(Doi et al. 2017)。SINTEX-F2-3DVARシステムでは、インド洋ダイポールモード現象の予測精度が向上していることを確認しました。
 従来のSINTEX-Fに加えて、モデルを改良したSINTEX-F2や、海洋初期値の作成プロセスを高度化したSINTEX-F2-3DVARを使って、今夏から秋にかけてのインド洋ダイポールモード現象の発生を、2019年5月1日時点で予測したのが、図1です。強さの不確実性は残るものの、3つのシステムが共通して、この夏から秋にかけてインド洋ダイポールモード現象が発生する確率がかなり高いと予測しています。
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 ウィキペディア
 チベット高気圧とは、春から夏にかけての暖候期前半に、チベット高原を中心としてアジアからアフリカにかけての広範囲を覆う、対流圏上層の高気圧である。
 概要
 上層の高気圧であり、100hPa(高度15-16km)や200hPa(高度約11km)の高層天気図では明瞭に確認できるが、海面気圧の地上天気図では認められない。特に中心付近は対流活動が活発なため、海面付近の高度では逆に低気圧となっている。
 4月ごろマレー半島やその周辺のインド洋上に準定常的な高気圧として現れ始め、5月にはインドシナ半島付近の定常的な高気圧として解析されるようになる。6月になると中心がチベット高原に移り、8月頃まで活動が維持される。特に、7-8月頃には勢力が拡大して東に張り出すことがしばしばある。
 熱帯の海洋の中でも西太平洋やインド洋は海面水温が高く、対流活動が活発である。そして、夏期のアジアでは海から陸へ向かう大規模な季節風(モンスーン)が吹いている。これにより、インド洋・西太平洋・アジアではモンスーンの移動に付随して対流活動の活発な領域が移動する。この領域では、大量の降水に伴う潜熱加熱(非断熱加熱)が加わって大規模な対流が維持されている。周囲よりも温まりやすいチベット高原の熱特性に、北上してきた対流活動の活発な領域の潜熱加熱が加わった結果として、対流圏上層が高圧となることで生じるのがチベット高気圧である。
 日本付近では、夏季には対流圏下層を太平洋高気圧が広く覆っている。太平洋高気圧が平年よりも北西に偏り、その上、チベット高気圧が平年より東に張り出す年の夏は、猛暑になりやすいことが知られている。
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 太平洋高気圧(英語: Pacific High)は、太平洋に発生する温暖な高気圧である。亜熱帯高気圧(サブハイ)の内の一つ。北太平洋に存在する北太平洋高気圧(きたたいへいようこうきあつ、North Pacific High)と、南太平洋に存在する南太平洋高気圧(みなみたいへいようこうきあつ, South Pacific High)の2つがある。日本において単に「太平洋高気圧」と言う場合北太平洋高気圧を指す。また、大西洋ではアゾレス高気圧がこれに相当する。
 北太平洋高気圧の中心はハワイ諸島近辺、北東太平洋上にあり、東西に張り出して、東側ではアメリカ合衆国西海岸に年間を通じて温暖で乾燥した気候をもたらし、夏の日本の天気を支配する。その他の季節にも影響を及ぼすことがあり、冬に勢力が強いときは、寒気の南下を妨げることがある。広大な太平洋高気圧のうち、日本の南海上付近のものは小笠原諸島付近に中心を持つことが多いことから小笠原高気圧(おがさわらこうきあつ、Ogasawara High)とも呼ばれる。
 チベット高気圧との関連
 日本列島付近は太平洋高気圧の勢力範囲としてはむしろ周辺部に当り、この高気圧のために定常的に高温乾燥気候が持続する事は少ないが、夏期にチベット高原の上空の圏界面近くに発達するチベット高気圧が、時に西日本付近にまで伸びてくることがあり、その場合は太平洋高気圧の更に上層部に高気圧が重なる形になるので、高気圧の背が更に高くなり、しかも安定する。そのため西日本を中心に高温で雨の降らない状態が長続きし、深刻な干ばつ・渇水をもたらす事がある。
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 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
 チベット高気圧
 夏季にチベット高原の上空の対流圏上部に発生する高気圧。ヒマラヤ山塊を含むインド内陸部は夏に日射や降水に伴う潜熱の解放によって空気が加熱され,広い範囲にわたって上昇気流が発生する。大気下層は低気圧になり,インド洋から内陸部に向けて夏の季節風(インド・モンスーン)が吹く。上昇した空気は対流圏上部で四方に吹き出すが,吹き出す空気にコリオリの力が働いて時計回りの大気の循環(高気圧性の渦巻)ができる。これをチベット高気圧と呼ぶ。チベット高気圧が発達すると,ヒマラヤの南側を吹いていた偏西風が北側に移る。これに呼応して日本付近の季節が梅雨から盛夏に移行する。
 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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 JAMSTEC 季節ウォッチ
 インド洋ダイポール現象とは?
 インド洋ダイポール現象は、熱帯インド洋で見られる気候変動現象で、数年に1度、夏から秋にかけて発生します。インド洋ダイポール現象には正と負の符号があり、正のインド洋ダイポール現象が発生すると、熱帯インド洋の南東部で海面水温が平年より冷たく、西部で海面水温が温かくなります。この水温の変化によって、通常は東インド洋で活発な対流活動が西に移動し、東アフリカで雨が多く、インドネシアでは雨が少なくなります。また、熱帯からの大気の変動を通して、日本では雨が少なく、気温が高くなる傾向があります。
 一方、負のインド洋ダイポール現象は、熱帯インド洋の南東部で海面水温が平年より温かく、西部で海面水温が冷たくなります。この水温の変化によって、通常は東インド洋で活発な対流活動がさらに活発となり、インドネシアやオーストラリアで雨が多くなります。また、熱帯からの大気の変動を通して、日本では雨が多く、気温が低くなる傾向があります。
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 ウィキペディア
 ダイポールモード現象(英語:Indian Ocean dipole( mode)、略称:IOD)とは、インド洋熱帯域において初夏から晩秋にかけて東部で海水温が低くなり、西部で海水温が高くなる大気海洋現象のことをいう。それに伴って起こる風や気候の変化を含み、エルニーニョ現象と同様に世界の気候に大きな影響を与えることが明らかになった。特にアジアあるいはインドの夏のモンスーンに影響を与えることから、その重要性が次第に認識されつつある。インド洋ダイポールモード現象、インド洋ダイポール、ダイポール現象とも呼ばれる。
 概要
 1999年に海洋研究開発機構の山形俊男、サジ・N・ハミードらによって発見された太平洋のエルニーニョ現象に類似した現象である。ただし、海水温の分布様式はエルニーニョ現象とは東西逆である。
 インド洋東部の南東貿易風が異常に強い時に発生することが多いが、同海域の温度躍層(水温躍層)が深い場合には発生しにくい。インド洋の海水温変動ではエルニーニョに伴うインド洋全域昇温に次ぐ強いシグナルを持つ。
 研究によれば、1961年や1994年の現象のようにエルニーニョ現象とは独立に発生する場合もあれば、エルニーニョ現象を誘発する場合もあると考えられている。
 通常、2年連続で発生することは珍しいが、2006 - 2008年は3年連続、2012 - 2013年は2年連続で発生している。
 発生の原因
 なんらかの理由でインド洋で南東貿易風が強まると、東側にあった高温の海水は西側へ移動させられ、また東側では深海からの湧昇や海面から蒸発が盛んになるために海水温が低下する。これが正のダイポールモードである。
 一方、インド洋で逆に南東貿易風が弱まると、東から西への海流が滞るため高温の海水が東側に滞留し、西側は海水温が低下する。高温となった東側では対流活動が活発化する。これが負のダイポールモードである。
 影響
 (正の)ダイポールモード現象が発生すると、インド洋の西側にある東アフリカでは海水温の上昇により蒸発が盛んになり降水量が増加する。逆にインド洋の東側にあるインドネシアでは蒸発が抑えられるので降水量が減少する。両地域の大気の性質は、インド〜日本にかけてのモンスーンアジアの気象に多大な影響を持っているため、ダイポールモードによる大気の変化が伝播するとこれらの地域で異常気象を引き起こす。
 この現象はテレコネクション(遠隔相関)によってアジア各地の気候に影響を及ぼすと考えられている。フィリピンから中国南部、インドシナ半島からインド北部にかけては降水量が増加し気象庁気象研究所(当時)の新田勍により発見された太平洋・日本パターン(PJ)と呼ばれるテレコネクション機構により、日本を含む極東地域では降水量が減少し猛暑となるとされる。1994年の現象は北朝鮮の農業に大きな打撃を与えた。日本でも1994年、2001年、2006年、2007年、2008年、2010年、2012年などの猛暑はこの現象によりもたらされたとされている。
 また、モンスーン-砂漠機構によって地中海沿岸諸国の猛暑はこの現象と密接な関係があることがわかってきた。この猛暑はこれを抑えるべく北欧からのマエストロ、エテジアンなどと呼ばれる冷涼な風を招き、大気を不安定にして低気圧の発生を促す。こうして形成された大気擾乱はアジアンジェットと呼ばれる渦位の導波管を伝わって日本を含む極東域にたまり、対流圏全域に及ぶ等価順圧な高圧域を形成する。日本付近が猛暑になる場合には「鯨の尾」の高気圧パターンが存在することが経験的にわかっているが、最近の研究からダイポールモード現象によるテレコネクションはこの一因となると考えられている。
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