⚡38】─3─社会主義の日本病が日本社会・経済を蝕み衰退させている。 ~No.169 * 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 社会主義経済政策は、人口爆発にともなう戦後復興・高度経済成長・バブル経済までは成功したが、人口激減が始まったバブル経済崩壊以降では失敗の連続であった。
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 2017年9月29日号 週刊朝日「虎穴に入らずんばフジマキに聞け 藤巻健史
 中央銀行マンの矜持はいずこに?
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 当コラムで以前、日本の労働配分率の低さは終身雇用のせいではないか?と書いた。
 安倍首相が賃上げをいくら求めても、経営者が人材喪失のリスクを感じないと、賃上げのインセンティブが働かない。終身雇用で不況期でも従業員を解雇しにくければ、固定費化しやすい人件費をなるべく上げたくない。好況期であっても、不況期に備えようとするのは無理もないだろう。
 人材獲得の競争が激しい新卒採用市場は、初任給がそれなりに上がった。労働市場が競争的ならば、賃金は上昇する。日本人は終身雇用という安定と引き換えに、高収入をギブアップしている気がしてならない。
 政府は次の国会の目玉として、『働き方改革』を挙げている。ただ、所得税の累進カーブの修正、終身雇用と年功序列制の廃止を盛り込まないと、抜本的改革など無理なのだ。
 米企業では、労働者全員が明日にでも解雇される恐れがあり、全員が非正規とも言える。望まない転勤を強いる企業はない。同一労働は同一賃金だ。
 成果をあげれば、十分な報酬を出す。そうしないと従業員はみな辞め、操業停止に追い込まれるからだ。そうなれば株価も落ちる。
 転職市場が発達していれば、退職は怖くない。労働需要は日本全体で一定のはずなだから、1人辞めれば1人の需要が生まれる。経済を活性化させて失業率をゼロ近くにしておくことが、政府の大切な仕事になる。
 ところで、私が日銀OBと話をすると、黒田東彦総裁の異次元の量的緩和に、みな非難ごうごうだ。しかし、現役職員はこうした批判の声をあげられない。心の中で『まずい』と思っても、声を出せないのだろう。中央銀行の矜持はいずこにと思ってしまうが、これも終身雇用制の弊害なのかもしれない。
 クビを切られたり、閑職に追いやられたり、定年後の仕事の斡旋がなければ、生活のめどうを失う、転職市場が米国ほど発達していない日本では、非常に怖い話だろう。終身雇用制が、国の基幹政策さえも誤らせているのかもしれない。
 官僚が政治家にペコペコし、企業が監督官庁に弱く、政治家が有権者に弱いのも、仕事を失うのが怖いからだろう。次の仕事が簡単に見つかるなら、辞める自由が出る。言いたいこと、正しいと信じることを自由に言うのだが」
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 10月13日 週刊朝日藤巻健史
 英国病から日本病に、危機感乏しい日本人
 私が英国に赴任した1982年、経済が低迷し『英国病』て真っ盛りだった。英国とアルゼンチンが争ったフォークランド紛争の勃発直後。『アルゼンチンに爆撃されたら、地下鉄に逃げ込め』と脅しのような励ましを受けながら赴任したことを覚えている。
 当時、地下鉄は動く灰皿だったうえ、ストでしょっちゅう止まり、公衆電話の7割は壊れており、ごみ収集車が動かずに街がくさかった。『英国病』とはまさにこういうことか。妙に感心したのを覚えている。
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 先日、『THE INTERNATIONAL ECONOMY』という雑誌が送られてきた。世界的に権威ある経済誌だ。
 各国の元財務相、元中央銀行総裁、元銀行頭取やチーフエコノミストハーバード大、ロンドン大など著名大学教授ら、そうそうたる論客が寄稿している。2017年夏号の特集は『Japan Disease(日本病)』だった。
 かつて『英国病』と揶揄(やゆ)された英国に代わり、世界は今や日本経済を『日本病』と名付けているのだ。世界から、当時の英国病並みの状況とみられているのかと思うと、あまりにも情けない。
 『デフレから脱却できない国』などという生やさしい分析ではない。
 世界がこれほどまでに『日本経済に問題あり』と考えているのを、日本人は知っているのだろうか?
 世界の投資家はそんな国の株式には投資しない。デイトレーダー以外、そんな国の通貨を『比較的安全な通貨』などとは思わない。世の中、『昨年より景気がよくなった』『アベノミクスでよくなった・悪くなった』と議論しているが、そんな次元の話ではないのだ。
 財政出動と金融緩和を極限まで出動しても、日本の名目GDP(国内総生産)はこの30年間でわずか1.5倍にしかなっていない。米国は4.1倍、英国は4.9倍、韓国は17.8倍、中国は何と75倍にも増えているのに。
 この事実にこそ目を向けて原因を分析し、改革しなければならない。小手先ではなく根本的な改革だ。それが政治家の務めだろう。
 ただ、送られてきた雑誌に記されていた原因分析や解決策は、表面的でしかないと思った。他国の学者やアナリストは、日本人からの聞きかじりの話をたいそうな論文に仕上げる。モルガン銀行時代によく経験したが、あの時と同じだ。
 私にも寄稿依頼が来ていたのだが、都議選の応援で忙しく、英語原稿を書く余裕がなかったのが残念だ。
 私は、30年間の日本経済の低迷は『日本が世界最大の社会主義国』だったから、と考えている。
 行きすぎた格差是正で結果の平等を求め、相変わらず規制が多く、世界に冠たる国民皆保険を自慢している大きな政府の国なのだ。その結果が『国力に比べて強すぎる円のレベル』にもつながっている。
 それが私の分析で、改善しないと日本の未来はない。日本国内では、『資本主義は終わった』などという主張をよく聞くが、そうではない。『日本は社会主義だった』から、ダメになった。資本主義を積極的にとり入れた中国はこの30年間で、名目GDPを75倍にもしている」
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 10月20日号 週刊朝日藤巻健史
 急増する訪日外国人、その意味することは・・・
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 豪州政府関係者によると、今度赴任した駐日大使は元政治家だそうだ 元政治家は米国・英国・日本の3ヵ国にしかおらず、日本重視の証拠とのことる。
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 今や豪州を訪れる日本人よりも、訪日する豪州の旅行者のほうが多いそうだ。少し意外だったが、『訪日旅行者が増えたのは、日本への旅行が安くなったと感じるからではないか』という。
 私は『円が強すぎる』が持論。豪州人にとって日本旅行は高すぎるはずだ。1987年に、1豪ドル=約101円、現在は約89円だから円は強くなり、豪ドルが弱くなった。
訪日旅行が安くなった感じるとは到底思えない。おかしい。
 議論していてわかったのは『豪州の1人あたり名目GDP(国内総生産)は、30年前に日本の約65%。ところが今や1.5倍近くに上昇した』ことだ。30年前と比べ、豪州の名目GDPは7.4倍に膨らんだのに、日本はわずか1.5倍。一人あたりで逆転したのも確かに当然だ。
 一人あたり名目GDPが上がれば、一人ひとりの生活レベルが上昇したことになる。所得水準もそれ相応に上がったはずだ。生活がより豊かになった豪州人からすると、多少の円高豪ドル安になっても、日本旅行が安く感じられるのだろう。
 80年、1人民元を購入するには160円も必要だった。今や16円ぽっちで買える。中国側からみると、通貨がこんなに安くなれば海外旅行がべらぼうに高くなり、できなくなるはずだ。でも、日本中にこれほどまでに中国人旅行客があふれるのはなぜか?
 大幅な人民元安のおかげで、中国の名目GDPが30年間で75倍になったからだ。通貨が10分の1に減価しても
 7.5倍の豊かな生活ができる。何度もこのコラムで指摘した点だが、豪州旅行者が増えたのもそれと同じ理屈なのだ。
 そう考えると、訪日旅行客が増えたのもそれと同じ理屈なのだ。
 日本は『日本病』にかかり、生活水準が相対的に落ち込んでいる。ゆえに、訪日旅行が安く感じられるようになっていたら、情けない。『生活レベルに差があるがゆえにすべてが安い』との理由で、かつて日本人が大挙してアジアに旅行していたのと、事態が逆転しつつあるのだ。
 名目GDPを伸ばす必要がある。そのためには、社会主義からの脱却をはかることと円高是正が急務だ」
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 10月19日号 週刊文春「それでも社長になりたいあなたへ 宋文洲
 『働き方改革』の本当の意味とは何なのか。
 もう少し日本の人事習慣について話を続けます。
 『終身雇用』に代表される日本の人事習慣は企業や経済だけでなく、社会や家族関係に対しても、間違いなく悪影響を与えています。何度も言うように、経営者には米国や中国並みの高収入を与え、結果が出なかったらすぐ辞めてもらう。そちらの方が企業にとっても大変有益なのだ。
 数年前、日本を代表する某ハイテク企業の役員に役員室を案内してもらったことがあります。名誉会長に挨拶しに行ったのですが、部屋の電気は点いておらず真っ暗でした。だだっ広い部屋の奥で、名誉会長本人は豆電球を点け、読書していました。
 『なぜ部屋の電気を点けないんですか』と私が聞くと、『馬鹿野郎、もったいないだろう』と一喝されました。
 いやいや驚きました。電気代どころか、部屋に専用車、祕書、そして報酬。社員何人分の費用がかかっているのか。そして何よりも彼の存在によって改革できず、企業がどれほど損失を被っているのか。この名誉会長がそうした事に目を向けることはまずないでしょう。さらに恐ろしい事は、
 会長、社長も名誉会長の座を狙っていたことです。
 直接的な費用について言っているわけではありません。高齢の経営者が居座ることで、その間、企業は確実に死んでいく。ならば2倍の年収を払って65歳以上の役員を退社させた方が、その企業は何兆円も得をする可能性があります。
 大企業の場合、社員がいくら頑張ろうとも、企業の方向性が時代に合わなければ淘汰される。経営上最も重要なのは、企業の方向性を定めるための経営者の能力を発揮することです。
 これと同様に、会社内の仲間意識も経営上の無駄でしかありません。社会のニーズに合わない事業を解体し、人材を別の事業や企業へ振り分けることは企業にとっても社会にとっても正しいことです。しかし『うちの会社で働けて、社員は幸せでしょう』と真顔で口にする経営者も少なくない。
 経営者と同様、社員に対しても高い給料を支払い、業績が悪ければ、すぐ辞めてもらうシステムをつくるべきだと思います。こういう議論になると『成果主義は日本に向かない』と主張する人が多いのですが、確かに日本人サラリーマンには意識改革が必要です。
 多くの日本人サラリーマンは会社や上司に対し、家族のように処遇されること期待する。高度成長期の名残かもしれません。しかし以前、お話ししたように、経営者は娼婦のような気持ちで、顧客、株主に尽くすべきですし、サラリーマンは社長や上司の使用人という意識が必要です。
 アマチュアではなくプロ意識を持てということです。そうしないと会社に座っているだけの社員が増え、折角の『人材』がただの『人在』になっていく。
 この延長線上にあるのが企業トップの『人在』です。それが高齢化していくと、改革を阻害する『人罪』になっていくのです。こうした『人罪』が『社員を家族のように考え、会社を我が家のようにとらえる』のです。
 地位に恋々とせず、会社組織にしがみ付かず、ビジネス上の結果を出すことで報酬を得る。その報酬を生かし、会社の外で家族や友人と人生を楽しむ。
 こうした生き方を目指す若いサラリーマンが増えれば、本当の意味での『働き方改革』が実現すると思うのです」
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 有能人材を抱え込む為の終身雇用・年功序列・毎年給料昇給という経営モデルは、人口爆発期では有効であるが、人口激減期では無効である。
 バブル経済までのビジネスモデルや成功モデルは、人口爆発期の経済モデル為に人口激減期には通用しない。
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 長期経済停滞期であった江戸時代では、終身雇用・年功序列・毎年給料昇給は存在せず、自己責任と自己努力で、一切の社会や生活の保障がなく、生きるのも死ぬのも個人の完全なる自由であった。
 江戸時代は、如何なる甘えも許されない能力主義実力主義が大原則であった。
 江戸時代の社会とは、誰も助けてくれない為に、生きたければ、金持ちになれたければ、自分の才覚で実現するしかない苛酷な社会であった。
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 現実の日本社会には「甘え」などは存在しない。
 「甘え」は人間が作る夢想して恣意的に作る幻である以上、「甘え」が支配する現代の日本は自然環境ではなく人工環境である。
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 人口爆発期では好景気で働き口は全国各地にあった為に、正社員にならず非正規として全国を渡り歩き、好きな仕事・やりたい仕事・自分に合った仕事を選びながら気ままに転職できた。
 人口激減期では、それができない。
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 将来、会社を背負って立つ優秀な人間は、毎年採用する新卒社員数百人どころか数年か十数年の採用者の中に一人いるかどうかである。
 そのたった一人の金星を逃がさない為に、そこそこの人材や有象無象の社員と共に終身雇用・年功序列・毎年給料昇給で縛り囲い込んでいた。
 なぜなら、それ程の優秀な人材は、大会社に頼る事なく独立してベンチャー起業しても成功できるからである。
 真の企業エリートとは、そうした人間の事で、試験で高得点を取る高学歴者ではない。
 現場の名人級技術者・技能者や創造性豊かな研究者・開発部員でも同様である。
 日本式終身雇用・年功序列・毎年給料昇給そして義理人情の浪花節的家族主義は、そこそこの人材や有象無象の社員を守るのではなく、会社を背負って企業エリート一人の為に存在していた。
 会社は、全ての社員を面倒を見てくれる有り難い保護組織・互助会ではない。
 自分は有能な人材で自分の存在が会社の業績を上げていると自惚れる無能者が増え蔓延ると、日本式終身雇用・年功序列・毎年給料昇給は有害となって会社を衰退させ、最悪倒産か良くて外国資本への身売りとなる。
 それが、バブル経済崩壊後の日本の姿である。
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 本当に得難い人材とは、会社に連綿と為ず、その気になれば会社を辞めて独立してベンチャー起業し成功するものである。
 残念ながら、そうした人材は、欧米諸国に比べて日本ではほんの僅かで貴重な人材である。
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