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・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
世界の意欲的な若者、野心的な若者からすれば、日本の大学は時代遅れで魅力がなく、大金を払ってまでして留学して学ぶ価値がなさそうに見える。
外国人留学生にとって、卒業証書目的で学園生活を楽しみ青春を謳歌する裕福な日本人学生と一緒に学んでも役に立たない。
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外国人が日本に関心を持つのは、昔ながらの日本の風情であって、現代の日本あるいは未来の日本ではない。
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産経新聞iRONNA「 このままでは国立大学がヤバい
「もうノーベル賞はとれなくなる」。わが国の歴代ノーベル賞受賞者たちがこう警鐘を鳴らすのも無理はない。科学技術立国を支えた国立大学の研究予算が財政難を理由に大幅に減額され、いま若手研究者が腰を据えて研究できる環境が崩壊しつつあるという。このままではニッポンの国立大学がヤバい。
注目される大学の統合
科学技術立国を支える国立大学の地盤沈下が止まらない。英国の高等教育専門誌が調査した「THE世界大学ランキング」を見ると、2004年には200位以内に国立6大学がランクインしていたが、18年版では東大(46位)と京大(74位)以外に日本の大学の姿がない。その大きな要因が研究論文数の減少だ。例えば自然科学分野では主要先進国が軒並み04年に比べて大幅に増やす中、日本だけが減少している。
この地盤沈下の背景には財政難を理由に04年から始まった国立大学予算の削減がある。研究活動の基盤となる国立大学運営費交付金は13年間で12%(1445億円)削られ、そのしわ寄せが40代未満の研究者を直撃している。任期付き雇用の比率は07年の39%から17年に64%に達しており、腰を据えて研究ができなくなっているのだ。
一方、研究テーマ毎に交付される競争的資金の科学研究費助成事業(以下、科研費)は、17年度は2284億円と04年度に比べ454億円増加している。今年度からは国力の源泉となるような挑戦的な研究にも予算を振り分けることで、現状の打開に乗り出している。研究に失敗は付き物であるが、選定する側の目利き力も問われることになる。運営費交付金の増額を求める声も大きいが、国家財政が悪化する中、元の予算規模に戻すのは現実的ではない。国立大学のダウンサイジングや運営効率を向上させることで、研究予算を捻出していくしかないだろう。今年4月から名古屋大と岐阜大が運営法人の統合に向けて協議を開始し、関係者の注目を集めている。
文部科学省は地域の国公私立大学が新法人を設立し、教育の連携や入試の共同実施などを可能にする仕組みづくりも検討している。ごった煮的なこの大学再編案には私大が破綻した際の教職員の受け皿づくりという思惑が透けてみえる。というのも学校法人の17%が経営難に陥っており、定員割れの私大・短大は約4割もあり、大学の淘汰がこれから本格化するからだ。しかし、地盤沈下した国立大学の足を引っ張るようなことをするのではなく、学生に選ばれない私大には「名誉ある撤退」を後押しするべきだ。(月刊『Wedge』編集長 塩川慎也)
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土台から崩れゆく日本の科学、疲弊する若手研究者たち
『月刊Wedge』
木寅雄斗 (Wedge編集部)
国内の大学の最高峰、東京大学。その将来有望な若手研究者が働く研究室─―そこは、そのイメージとはほど遠い苦境に陥っていた。東大で物理学を研究する高山あかり助教は、研究室の現状をこう語る。
「プリンターのトナーや紙、そういった必需品の購入にも気を遣います。研究室の机と椅子も、他のところで不要になったものを譲ってもらいました。研究のための本は自腹で買うことも多いですね」
こうした物品の購入など研究を行うための経費は、基本的に各研究者に配られる「国立大学運営費交付金」から支払われる。これは文部科学省から各国立大学の財布に入り、そこから各研究者に配分される補助金だ。国立大学の研究者にとって運営費交付金は何にでも使える「真水」であり、研究の基盤となる資金だ。
昨今ノーベル賞を受賞した研究も、こうした自由に使える基盤的経費が充実していた恩恵が大きいことは、2015年にノーベル物理学賞を受賞した東大教授の梶田隆章氏も指摘している(Wedge本誌12月号17頁にインタビュー掲載)。また、東大名誉教授の安井至氏は「ノーベル賞学者たちが助教の頃は、研究室ごとに現在の価値で1000万円ぐらいは基盤経費が入っていただろう。私が東大から退いた03年でも光熱費・水道代は大学が支払った上で、別途で200万円ぐらいは支給されていた」と語る。
しかし1990年代の行財政改革の機運の中、国立大学にも効率化が求められるようになった。2004年に国立大学が法人化されると、基盤的経費は「運営費交付金」として再定義され、国の財政難を背景に前年比で1%ずつ削減されることになった。運営費交付金は法人化から13年間で12%(1445億円)が削減された
現在、ある工学系の東大准教授の研究室に支給される運営費交付金は200万円にはとても届かない額だという。さらに研究室の光熱費・水道代、場合によっては大学内の実験施設の賃借料も引かれるようになったため、削減幅は額面以上に大きい。ある理学系の東大研究者は「運営交付金は大学によって金額が異なるが、100万円交付されればかなり高いほうで、多くの研究者はギリギリでやりくりしている」と語る。東大ですら運営費交付金だけでは十分な研究などできないのが現状だ。
一方で、研究者への研究資金として重視されるようになったのが、科学研究費助成事業(以下、科研費)を代表とする競争的資金だ。科研費は自動的に下りてくる運営費交付金とは違い、文科省に研究テーマを申請し、同じ分野の研究者による審査を経て交付の可否が決定する。17年度で2284億円の予算がつき、04年度から454億増加している。
だがこの競争的資金への偏重が問題であると、日本より良い研究環境を求めて香港科学技術大学に移籍した川口康平助教授は、次の通り指摘する。
「科研費は将来にわたって確保できるかどうか予測ができない。使途や期間も限られており、研究者やスタッフを長期間雇用するための人件費に使えない」。加えて科研費では「真水」である運営費交付金とは違い、申請した研究テーマに使う実験器具などにしか使えないのだ。また運営費交付金の減少は、研究資金面以外でも若手研究者たちに死活問題をもたらしている。ポストの不安定化だ。
東京工業大学の西田亮介准教授は「労働法制上、既存のポストは手をつけにくいので、新規雇用の際に人件費のコントロールが容易な任期つき教員への置き換えが進められている」と指摘する。
文科省の調査によれば、07年度に39%だった40歳以下の任期つき教員の割合は、17年度には64%に増加している。「3年の期限のある競争的資金で雇われた研究者は、1年目はその分野を学び、2年目に研究して論文を書き、3年目にはその成果をもって次のポストを探すことになるだろう。腰を据えて研究する時間は短い」(梶田教授)
加えて目減りした運営費交付金の影響で、若手研究者は研究時間も奪われている。スタッフを雇ったり外注化したりできず、研究室の雑務も若手研究者が行わざるを得ないためだ。高山助教も、自身で経理や総務的な仕事までこなしているという。科研費申請の書類作成も2週間近く要する。もちろん、大学教員として研究室の学生への指導も行っている。
文科省の科学技術・学術政策研究所の調査によると、国立大学の教員の勤務時間中、研究に充てられている時間は02年の50・7%から13年には42・5%に減少している。若手はさらにひどいようで、高山助教は「体感で1割程度しか研究に充てられない」という。また工学系のある東大准教授は「准教授以上はまず科研費などの研究費をとってくることが仕事になる。そのため研究は実質的にできていない。若手が厳しいのはもちろん、教授でも時間のない実態は変わらない」と語る。
こうした運営費交付金の減少は、日本の科学技術に対し重大な悪影響をおよぼす。
まず科研費に依存した研究体制は〝国がどの分野を重視しているか〟という政策的な動向によって、研究内容が左右されてしまう。たとえば「理学系での最近の科研費は『情報分野』に重点が置かれている」(東大の若手研究者)という。重視すべき分野に集中投資されることは研究費の選択と集中を促すという面でメリットもあるが、多様性が失われたり、短期的に成果が見えにくい基礎研究分野が軽視されたりする懸念がある。
また、研究成果である論文数も減少する。自然科学分野の15年の論文数は、米、英、独、仏、中、韓の主要国が04年比でその総数を大きく伸ばしている一方で、日本のみ減っている。イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education」の「THE世界大学ランキング」04年版では東大は12位、京大は29位、東工大、大阪大学、東北大学、名古屋大学が200位以内にランクインしていたが、最新の18年版では東大は46位、京大は74位に後退し、他の大学は200位以内から転落している。
日本は00年以降、自然科学分野で15人のノーベル賞受賞者を輩出し、科学技術大国とされてきた。しかしそれらの受賞の多くは研究者が20代後半から40代前半の若手のころにに行われた研究が後年になって評価されたものだ。次世代のノーベル賞を生む土壌は既に崩壊し始めている。梶田教授は「このままでは日本からノーベル賞受賞者は生まれなくなる」と危機感を隠さない。
ではどうするべきか。安井名誉教授は「すぐに成果が出る研究は民間がやる。先進国として、あくまで科学技術立国を目指すのならば、運営費交付金を増やすべきだ」と語る。梶田教授や16年にノーベル医学・生理学賞を受賞した東工大教授の大隅良典氏など、運営費交付金増額を求める声は大きい。
しかし財政難の時代に運営費交付金を増額することは現実的に考えて難しい。川口教授は現状のジレンマをこう分析する。
「運営費交付金を戻すのはセカンドベスト(次善の策)だ。いったん戻すべきだという危機意識は正しいが、財政難という時代の中で誰にもファーストベスト(最善の策)がわからない。そうこうしているうちにこのままでは大学が崩壊するというところまで来てしまった」
国の財源なき中で、有望な若手研究者にいかに資金を回し、科学技術立国の基盤である国立大学を再興させればいいのか。次章以降でそのヒントを探っていく。
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