💫6}─3─人類の自己防御としてのと脳の無痛回路、感覚除去の神経回路。~No.57 * 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2015年12月18日号 週刊朝日「パテカトルの万脳薬 池谷裕二
 脳は痛みを消すための専用回路を備えています。緊張状態になるとこの回路が作動し、痛みを感じなくなるのです。たとえば、クラスで前に立って発表する時。緊張のあまりうっかり足がもつれて転倒しても、ほとんど痛みを感じません。あとでひどい捻挫だとわかることもあります。緊張で痛みが軽減されたのです。
 痛みは身体の異常や組織のダメージを知らせるシグナルです。同時に、不快感を惹起し、気力を低下させ、活動量を減少させます。これは早く回復するために体力を温存する休養の指令としても役立ちます。
 しかし、痛みはよいことばかりではありません。痛みを克服しなくてはさらに命に関わる深刻な事態に陥るという危機的状況では、痛みに悶えているだけでは問題です。シマウマがライオンに襲われて負傷した時、痛がってうずくまっては、最悪の結果が待っています。
 そこで脳が発達させた回路が、感覚除去の神経回路『オピオイド系』です。一時的に痛覚を無効化することで、迫る危機を回避する確率を高めるわけです。
 無痛状態に導くこの神経回路は、様々な状況で作動します。たとえば、放尿、排便、性行為では、組織が極端な摩擦を受けるため、本来ならば激痛が走るはずです。しかしオピオイド系がこれを緩和するのです。
 しかし、話はここで終わりません。オピオイドは別名『脳内モルヒネ』です。強烈な快感を引き起こします。放尿が爽快感と恍惚感を伴う理由はここにあります。
 登山やマラソンは、身体が人工的な危険に曝されている擬似的状況です。この危機感がクセになる人がいるのも、やはりオピオイド系の作用です。スポーツの心地よさは、たいてい恍惚への耽溺そのものです。
 外敵に襲われた動物もおそらく同じです。無痛と同時に恍惚を伴っている可能性があります。結局は逃げられず捕食者に食べられてしまう時、意識明瞭なまま身体が食いちぎられていきますが、私たちが想像するほどには、苦しんでいないと考えられています。実際、ライオンに捕らえられたシマウマはふと諦めたように体を横たえます。その姿は、自らの身体を天然の栄養源として喜んで捕食者に寄贈する雄姿にも見えます。
 武士道では、体の正面に受けた『向かう傷』は名誉の傷で、背後から受けた『後ろ傷』は恥の傷です。敵に襲われても正対するする雄姿は、実は、恍惚の極致に浸る自己陶酔なのかもしれません。」

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