関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
日本農業に従事する外国人農業労働者と外国人移民。
救うべきは日本農家ではなく日本農業。
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日本政府は、景気回復と農業保護の為に、国際競争力をなくした農家を切り捨てる事を決めた。
日本人消費者は、日本の農業生産者には関心がない。
時代は、生産者重視から消費者重視に変わってきている。
都市は、地方を見ていない。
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ダスグタ教授(国連新統計の開発責任者)「社会が進歩する基準を、長期の持続可能度を把握できるものに変えない限り、この地球とそこに暮らす人々は、短期的な成長政策の重圧に苦しむ事になる」
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反自民のマスコミや知識人達は、政権与党の民主党を全面支援していた。
民衆党政権によって、戦後築いてきた日本の形が歪なほどに変質した。
その変質を歓迎する反日勢力が、日本人の中にいた。
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2011年 日本政府はTPP参加に前向きな発言をし、農民の大半が猛反対した。
都市層は、経済の発展の為にTPP参加に賛成している。
生活苦に追い込まれている中小規模農家は、農業の将来性に絶望し、転職を模索している。
そして、農村部の青年も重労働の割には収入の少ない農業を次ぐ事を望まず、楽な仕事で給料の良い会社員に憧れている。
国際派的知識人の多くは、日本の将来の為には農業を犠牲にするのもやむなしとの声も上がている。
日本の農家は急速に減少し、そして日本の農業も衰退しようとしている。
今後は、安い外国産農作物が日本に大量に輸入され、低所得層は高い国産農作物を買う事が出来なくなる。
食の格差が起きる事は、当然の成り行きである。
昔は、金持ちが高い外国産農作物を食べ、貧困層が安い国産農作物を食べていた。
それは、食糧自給自足を放棄した、古代の城塞都市アテネや貿易都市カルタゴと同じ生き方である。
両城塞都市は、他の城塞都市同様に市民と同数の奴隷や農奴を所有し、汗水たらして生産する事なく豊かな都市生活を満喫していた。ゆとりある生活の中で、政治や哲学あるいは演劇や芸術などの高度な文化を生みだしていた。
彼等は、食べる事に血眼になって生きる泥臭くさい人生を嫌い、洗練された教養に満ち溢れたゴージャスな生き方に憧れている。
キリスト教的教養に憧れるものは言う、「人は、パンだけで生きるのものではない」と。 世界的教養を求める日本人は、重労働の農作業を「カインとアベル」の物語から神の天罰であると軽蔑し、汗水たらして泥に塗れる汚れた農作業は神に見放された奴隷の仕事と賤しんだ。
事実。日本の天皇やサムライと違って、大陸の王侯貴族など神に愛された特権階級で野良仕事を喜んで行う者はいない。
それは、中国や朝鮮の儒教的教養を持った上流階級でも同様である。
TPPが、日本の農業にどう影響するかは分からない。
世界的な食糧不足に向かっている現状で、日本の食糧自給率がどうなるのかも分からない。
全てが、不透明である。
総じて、現代の日本人ほど脳天気な日本人は存在しない。
いまだかって、現代日本人の様に危機感を持たない日本人は、日本の歴史上でいなかった。
現代日本人は、これまでの日本史でお目にかかった日本人とは全く違う日本人である。
サムライ日本人でもなく。
百姓日本人でもなく。
町人日本人でもない。
現代日本人は、日本の歴史と縁が切れた「絆」の薄い別世界の日本人である。
とにかく、中国化しつっある別の日本人である。
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日本の耕作地放棄地は、滋賀県の面積に匹敵する約40万ヘクタールで、その多くが地権者が行方不明とされている。
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アメリカは、投資家対国家の紛争を解決する為にISD条項(投資家保護条項。通称、毒素条項)で、日本の全てを支配しようとしている。
アメリカ人投資家の相手政府を訴え裁判で負けたことがなく、食糧・水道から生命保険や医療など生活に直結する重要な分野さえも意のままに支配ができる。
何故なら、重要なルールは全てアメリカに有利なように制定されているからである。
交渉力下手の日本には、アメリカを敵に回して自国に有利な条件を貫き通す粘り強さがない。
つまり、日本が負ける事は目に見え、日本国民はあらゆる分野で被害を蒙る。
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アメリカは、自国の農産物「コメ」を関税ゼロで大量に日本に売り込む事を最優先し、日本の消費者はもちろん、日本の農民や農業には一切関心はない。
武本俊彦「778%が500%になっても、大した事ではない。問題は、関税ゼロのコメを、アメリカから大量に買わされる恐れがある事です」
「TPPを機に、減反の廃止や補助金の廃止をセットで行うと言いますが、これらの政策は全て米価を下げる為のもの。そんな中で、アメリカから大量のコメが入ってきたら、米価はさらに下がって、やる気がある先進的な農家から経営難に陥り、農業が破壊されていくでしょう。そういうシミュレーションを、誰もしていないというのが、怖いですね」
TPPは、国内法よりも強い拘束力を持っている。
アメリカは、短くて10年、長くても15年以内に、日本が聖域として守ろうとするコメの関税撤廃を要求している。
TPPによって関税ゼロのコメが、大量に日本に輸入されればコメ農家は大打撃を受け経営がなり立たなくなり、農家の体力強化どころか多くが廃業に追い込まれる。
さらに、日本式の食品表示の義務も廃止され、店頭に並べられている食品が遺伝子組み換えであるかどうか、産地表示も、消費者にわからないように取り除く事が要求されている。
アメリカ規準による「食の安全」を、日本基準にするように圧力をかけている。
日本は外圧に弱い為に、国民の安全を犠牲にして屈辱交渉を呑まされ続けている。
日本は、60%以上の食糧を外国から輸入する外国依存度の高い国家である。
食糧と資源を外国で買う外貨を稼ぐ為に、日本製品を生産して輸出するしかない。
だが、日本製品の国際競争力は低下し、韓国産や中国産との販売競争で市場から締め出されようとしている。
メイド・イン・ジャパンとしての日本製品神話は、過去の物語となりつつある。
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アメリカは、TPPを通じて日本の金融資産である年金マネー・郵貯マネー・農林中金マネーの総計520兆円である。
TPPは、アメリカ一人勝ちで、日本に不利益のみで得する所はあまりない。
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1月24日 菅直人首相「日本は、この150年間に、明治の開国と戦後の開国を成し遂げました。不安定な国際情勢にあって、政治や社会の構造を大きく変革し、創造性あふれる経済活動で難局を乗り切ったのです。私は、これらに続く第三の開国に挑みます」
3月11日 東日本大震災。東北関東大震災。
地震による大津波で、米所である東北の農地は甚大なる被害を受け、数年は作付けは出来ないであろうといわれた。
福島原子力発電所から東日本に飛散した放射能により農地が汚染され、出荷制限により多くの農産物が廃棄された。
大津波による農地破壊と放射能による農地汚染、そして後継者を失い始めた農家。
この事を苦にする畜産農家で自殺者が幾人か出たが、都市の消費者は自分の食べ物にしか関心がなく、自殺者の思いに興味がなく死んだ人間の事はすぐに忘れた。
政治家や官僚など日本の指導者も、また同様に、気にもとめる者が少なかった。
天災と人災で農地と農業が破壊され、日本列島は今にも必要量の食糧を失う危険性がある。
無宗教無神論者は、神も仏もこの世には存在しないし、人の心は移ろいやすく信用ならず、あやふやな人の「絆」より自分の命のみを大事にすべきであると、子供達に教えた。
日本民族は、数限りなく襲い来る大災害の中で逃げ出す事なく踏ん張り、自分の希望と夢を持ち、明日の幸福を信じて、補完共生の隣保互助的集団主義で助け合いながら生きて来た。
最悪な状況に突き落とされても、仲間と共に絶望の中で明日を信じ、明日への光を見出していた。
明日の為に、今・今日を共に精一杯生きていた。そこには、個人力のある排他的個性は存在しない。
日本人は、集団として、仲間として、みんなで生きていた。
日本人は、没個性であるがゆえに、災害における人の不幸に付け込んでの暴動や略奪や強姦といった事件を起こした事がない。
だが、日本人もしょせん人間である。自分の欲得負けて、火事場泥棒を行う日本人もいた。日本人全員が、善人ではない。中国人や朝鮮人よりも、多少、少ないというだけである。
4月 天皇・皇后両陛下、皇太子・同妃殿下、秋篠宮ご夫婦は、相次いで避難所を慰問され、難民に暖かい言葉をかけ励まされた。
人に無条件に勇気を与えられるのは、日本においては、「神の裔」である天皇と皇族のみであった。
如何に人気のある政治家でも知名人でも、絶望の淵にある日本民族日本人に「勇気」を与える事はできない。
但し、無国籍日本人は、神の裔・万世一系の男系天皇(直系長子相続)に「絆」を感じないし心を動かされる事はなかった。
天皇を崇拝する日本民族日本人と、天皇を侮蔑する無国籍日本人は、全く別の日本人である。
7月27日 朝日新聞「食糧求め 戦乱の都へ 東アフリカ1,200万人危機 ……病院によると、重度の栄養失調で約250人の子どもが入院。だが、薬や食糧が足りず、毎日2,3人が亡くなっているという。……国連機関などは、ソマリアを含む東アフリカ一帯が過去60年で最悪の干ばつに見舞われ、1,200万人以上が支援を必要としていると訴える」
10月28日 日本政府は、自給率向上を目差すと言いながら、農業問題を誤魔化してTPP交渉に参加す事を表明した。
日本経済界の一部の経営者と国際派知識人は、グローバル化の為に諸手を挙げて歓迎し、不足した食糧は他国から安く購入すれば良いという日本農業不要論を主張している。
アメリカは、自国有利・他国不利のルールを強制的に押し付け、自国の農家を保護する為に日本の農業を破壊しようとしている。
日本の農業は、自己責任による自己努力で弱肉強食の市場経済に放り込まれようとしている。
経団連の米倉会長「農業従事者自らが努力しなければならない」
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2012年の食糧自給率は39%で、TPPが成立すると27%に下がり、その後どうなるかは不明であるとされている。
上がる事がないのは明らかである。
それでも、日本人は心配せずに食べていく事であろう。
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TPPは、日本の食卓を劇的に変える。
だが、日本では食べ物が大量に生ゴミとして捨てられている。
日本の食糧海外依存度は、増えるしかない。
日本の農地は狭く、日本の農家は中小規模で兼業でやっと生活している。
如何に頑張った所で外国の大規模農家に対抗できない。
今の人口に対して、国土を広め、農地を確保しない限り、食糧自給は不可能である。
消費者は、高値の国産農産物より安値の外国産農産物を買うのは明らかである。
日本人が食べて生き残る為には、無駄な努力をするより、高値で売れる日本産農産物を海外に売って、安い外国産農産物を輸入するしかない。
モノ造り日本が生き残るには、世界市場で売れる物を造って売る死か方法がない。
メイド・イン・ジャパン。
それが、鉱物資源のない日本、食糧自給に破綻した日本が生き残る最後の手段である。
忘れてはならないのは、
そう遠くない未来に於いて、
地球温暖化による気候変動で砂漠化と海面上昇が進み、地球上の農地は減少して農産物生産量は減少する。
人口増加による人口爆発で、食糧消費量は増大する。
農地にできる豊かな土地は、限りがある。
世界の強欲な投資家は、農地の減少と食糧消費量の増加を見込んで購入できる農地を買い込み、農産を高値で売るべく売り惜しみをしている。
日本で起きた米騒動が、何時か、世界きぼで起きる。
何時の時代でも、他人思いの人間は少数派で、自分の事しか考えない人間が多数派である。
いざとなった時、人は他人を犠牲にして自分だけは生き残ろうとする。
他人の善意を当てにする事は、無駄な事である。
人は、口では何とでも詭弁を弄して自分を正当化する。
それが、人間の本性である。
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日本の食糧自給率は、低下して40%しかない。
日本が、TPP(環太平洋経済連携協定)に参加し、「譲るべきは譲り、守るべきは守り」条件付きで賛成すれば、日本農業は打撃を受けて自給率はさらに低下すると言われている。
日本は、確実に食べ物を失い飢餓に陥り、異常気象で食糧生産が落ち込むと餓死者を出す可能性が大である。
緊急に食料を輸入するとき、遠くのアメリカか?近くの中国か?
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日本の農家は、後継者をなくして消滅しようとしている。
日本の自給率はさらに低下し、絶望的状況にいたろうとしている。
移民推進派は、日本の農家は救えないが日本の農業は救うべくであるとして、文化も風習も言語も宗教も全く異なる貧困国から、低賃金で数百万人以上の農業労働者を移住させようとしている。
現代版の農業奴隷である。
その多くは、反日意識の強い攻撃的な中国からとされている。
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TPP脅威論。アメリカは輸出拡大で雇用を増やす為に、日本の農業と医療・保険・福祉と流通などを根刮ぎ破壊しようとしている。
アメリカは、中国ほど傍若無人で傲慢で救いがたくはないが、必ずしも自国の国益を犠牲にして日本の言い分を受け入れはしない。
アメリカ人は、地球的人類的普遍宗教を信じない中国人とは違って、「隣人愛」を説く絶対神を信仰するだけに人としての常識は持っている。
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日本に、安全性に疑問視される遺伝子組み換え穀物が輸入され、TPPが成立すれば遺伝子組み換え農産物の規制ができ無くなると言われている。
政府は自国民の命の安全を守る為に輸入規制し、規制する事によってアメリカ企業が不利益を被った時、アメリカ企業は相手国政府を訴える権利があるとされている。
アメリカ企業が、不利益を被ったとして相手国政府を訴える。
余程の事が無い限りアメリカ企業が勝利し、相手国政府は負けるといわれている。
弱肉強食の市場経済に於いて、費用対効果で、利益の為なら相手国の国民は犠牲にされる。
日本のTPP賛成派は、日本側の安全が脅かされても、輸出して金儲けができれば其れで構わないとしている。
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奥田聡(亜細亜大学教授)「日本の交渉担当者は、TPPの事実上の骨抜きは避けたいはず。そのためTPPが行き詰まった時には、日中韓FTAが加速できる様に同時並行で進めている。
韓国が着々とFTAを拡大させるなか、海外市場で日本企業に実害が出始めている。そうした実態もTPP報道で伝えられるべきだ。
アメリカ絡みの通商交渉となると、大手メディアはアメリカ叩きができる無難な論点を中心に取り上げがちだ」
伊藤元重(東京大学教授)「主要メディアは、声を上げる人だけの意見を取り上げ議論している。
TPPでは、輸出の拡大はあり期待できない」
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2013年 ニューズウィーク誌日本版4・2号「日本農業を滅ぼす意外な『真犯人』
農産物 TPP交渉に最後まで反対した農家だが その実態は一枚岩ではない 消費者を見捨てる農家も出てくるだろう
(神田みどり 農業ジャーナリスト)
日本のTPP(環太平洋経済連携協定)をめぐる議論では、農業への影響が突出して強調されている。都市部に住むほとんどの消費者は対岸の火事のように考えているが、本当はそうだろうか。
実のところ、TPP参加のツケを最後に払わされるのは、都市部の消費者かもしれない。それはTPPをきっかけに、農業生産者が日本の消費者を見捨てるかもしれないからだ。
TPP議論ではまるで反対一色に見える農業生産者サイドだが、実は一枚岩ではない。むしろ、若手の間では、日本の人口減少と食市場の縮小、さらに安価な輸入農産物に市場が席巻されている現状に見切りをつけようとする動きが出始めている。低価格指向の日本の消費者よりも、アジアの富裕層をターゲットに海外進出しよう、というわけだ。
消費者は初めのうちはTPP参加による安価な農産物の輸入拡大を歓迎するだろう。しかしそのうち、日本の農業で今の製造業と同じように『空洞化』が進むかもしれない。
もちろん農業県にとって、TPP参加は地域経済を崩壊させかねない死活問題だ。……
高品質な日本の農産物や農業技術は、国際的にも定評がある。問題は円高のほか人件費、機械・エネルギーコストを背景とする価格の高さだ。TPP問題が浮上する以前から、グローバル化への対抗を求める消費者や財界から『農業は過保護』という農業バッシングの声も強まっていた。
いっそのこと農業条件に恵まれた海外で、優れた日本の農業技術を生かして農業をやればいい─。そう考えて、オーストラリア西部やベトナム、中国などで農業を始める生産者も登場している。『メイド・イン・ジャパン』ならぬ『メイド・バイ・ジャパニーズ』の発想だ。
『友人は「日本では(減反政策のため)作ったら怒られるから」と、インドネシアで稲作を始めた』と、既にベトナムと中国に進出している40代の果樹生産の農業生産者は言う。『海外の消費者がきちんと品質を認めて適正価格で購入してくれるなら、安い輸入品ばかり選ぶ日本の消費者より、当然そちらを選ぶことになる』
彼らのようなグローバル派が増えてくれば、消費者もまたグローバルな視点で選別される。日本の生産者なら国内消費者を優先する、と考えるのは幻想である。稲作専業農家の間には、TPP参加で日本の販売農家の7割を占める兼業農家の離農が進み、専業農家の規模が拡大するという『期待』もある。
一方、グローバル化が進むなかだからこそ、地元に足場を置き、消費者と顔の見える関係を重視するローカル派の専業農家もいる。家族経営を基本に、小規模でも環境負荷をなるべくかけず、安心できる良質な農産物を顧客に直接販売する農業だ。
彼らはアメリカのように一部企業による農業の寡占化が進むより、兼業農家も含めた多様な人々が共生し、地域社会を支えることを優先する。そのため、多くの離農と離村を生みかねないTPPには否定的だ。
こういったローカル派の農家がどれだけ生き残れるかは、その姿勢に共感し、安価な農産物に手を出さない消費者がどれだけ存在するかに懸かっている。
日本の農業の運命を握っているのは、実はTPP以上に、日本の消費者なのだ」
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TPP参加による農業被害想定予想数値で、反対派は生産者の立場から日本の農業破壊につながると警鐘を鳴らしているが、賛成派は消費者の立場からGTPにおける農業の規模は少なく経済に影響はないと主張している。
TPP賛成派は、無駄な経費を掛ける重労働集約型日本農業は高価な農作物を生産するだけ消費者の為になっていないと主張し、消費者の為に安い外国産農産物・加工食品を因り多く輸入すべきである訴えている。
だが。彼らは、安値の外国産農業を買わず、大金を払って日本産農産物を食べている。
金持ちは大金を払って高価な国産農作物を食べ、貧困層は危険ではあるが安い外国産農作物を食べる。
貧富による食の格差は、確実に起きる。
インターネット・ユーザーの一部は、悪戯半分で、福島原子力発電事故による風評被害を拡大させて面白がっている。
都市部の消費者は、ネット情報に右往左往して、福島を中心とした東北の農産物は放射能を含んでいるとして買う事を控えている。
そこには、「絆」も「つながり」も存在しない。
所詮は。絆もつながりも日本的「言霊」のない、無味乾燥の掛け声にもならない、自己満足的言葉遊びである。
子供の間での「放射能関連のイジメ」は更に陰湿で、根拠がない憶測情報が流れている。
子供社会は大人社会の鏡であり、大人がしたり顔で綺麗事を言っても、子供社会が病んでいれば大人社会はさらに悲惨な状態にある。
江戸時代の子供達は、何処に行っても笑顔で天真爛漫とハツラツとしていたと言われている。
福島の子供は、放射能で汚染され、大人になって結婚しても奇形児や白血病の子供しか生まない。などなど。
ネット世論が全部とは言わないが、一部のネットには他人を陥れて楽しんでいる病的な扇動的愉快犯が存在する。
陰湿な日本人は、表に出て堂々と公言せず、裏でコソコソと有りもしない事で人を誹謗中傷して不幸にして喜んでいる。
そして。心弱い現代の日本人は、人の噂を気にして、盲目的に威勢の良い人間に従う性質が備わっている。
現代日本人の心は、昔の純朴な日本人とは全く異なり、その違いは年月と共に変質している。
現代日本から、昔の日本は消滅しつっある。
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2013年12月1日 朝日新聞「農産物の輸出 その『攻め』にスキはないか (有田哲文編集員)
捜査難航である。福岡県南部にある『うきは警察署』が抱える一風変わった盗難事件が、なかなか解決しない。盗まれたのは、柿の苗19本である。
ただの柿ではない。福岡県農業総合試験場が品質改良に成功したばかりの世界初の種なし甘柿『秋王』。……
福岡県に限らず、わが国ではこのときおろ、農産物のDNA解析が充実してきた。日本の品種が中国や韓国で違法に栽培されている、との情報が相次いだからだ。
ブランド力のある独自品質は、国内はもちろん海外への輸出も期待できる。外敵から守らなければならない虎の子なのだ。
環太平洋経済連携協定(TPP)で貿易の垣根が低くなるのはピンチではなくむしろチャンスだと、政府はいま、『攻めの農業』の旗を振る。農産物の輸出である。わが国の農産物総産出額に対する輸出の額は、加工食品をのぞくと1〜2%程度。確かに伸びしろがありそうだ。
輸出のベテランはどう見ているのだろうと、名古屋市の卸売市場を訪れた。場内に事務所を構えるエム・アール・ティー・ジャパン
社長、小林志郎さん(63)。農産物輸出を手かげて17年になる。各地の産地と契約して、果実や野菜を香港やタイ、シンガポールなどアジア一円に売る。
形、色、味すべてがいい日本の果物は海外では特別な存在だ、と言う小林さんは、しかし、将来を楽観しているわけではない。日本産品を脅かしかねない産地がある。中国である。
『正直いって今の中国の野菜は信用がない。中国人も信用しないくらいですから。でも、これが例えば5年先にきちんとした管理をして、農薬をどれくらい使ったかなど生産履歴を作るようになったら、どうなるか。信頼を得るようになったとき、日本はやられますよ。山東省などでつくられているリンゴのフジにしても、10年前に比べたら良いのができるようになりました』
年配になった日本の農業指導者が、招かれて中国で教えている。という話も聞くようになったと言う。事実とpすれば、日本の家電メーカーを辞めた技術者が韓国や中国に渡ってノウハウを伝授した、あの構図と同じだ。日の丸家電が劣勢に立つ契機になった。中国の農場の一部では、国際的な安全認証をとる動きも強まっている。
一方で日本のやることはちぐはぐな感じもある。入れ代わり立ち代わり知事たちがアジアの売り先を訪れ、ゆるキャラを連れて宣伝する。海外で日本の産地間競争をし、価格はたたかれる。
小林さんは、こんな不吉なことも口にした。
『日本の輸出は、いまがピークなのかもしれません』
……
TPPをみんなに納得してもらう。輸出がそのための表紙に使われるだけなら、きっと後で失望がひろがる」
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TPP交渉におけるアメリカ側の意図は、日本の国益ではなく自国の国益を守り、自日本の利益を減らして自国の利益を多くする事である。
アメリカの新自由主義的戦略は、アメリカ人投資家やアメリカ企業がより多くの利益を獲得する為に都合の良いように「ルールを変更する」事であった。
そこには、日本国や日本国民の事は考慮されていない。
農産物の非関税酒障壁撤廃や混合診療の促進や保護制度の自由化である。
つまり、日本を根底から粉砕する為にISD条項を押し付けている。
外交下手の日本は、アメリカの意のままに操られ日本国民の福利を失おうとしている。
アメリカは、自国の経済の為に、日本ではなく中国を選んでいる。
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2014年4月21日 読売新聞「基礎からわかるTPP 中
Q 重要5項目とは
コメは日本の主食で生産農家も多い。麦は外国からの輸入が止まると国民生活に影響が出る。乳製品やサトウキビなどの甘味作物は、生産地が限られており、他の作物への転作が難しい。北海道や沖縄などが主産地になっているものが多く、地域振興の目的もある。5項目の農産物は、国内産に比べて2〜4倍程度高く、政府は高い関税をかけて保護すべき重要5項目と位置づけている。
昨年4月には、衆参両院の農林水産委員会が『関税死守』を決議した。米国が要求する関税撤廃や大幅な引き上げに日本側が応じれば、この決議に反することになりかねない。TPPには国会の承認が必要で、政府は安易な妥協ができない。
TPP交渉では、全ての貿易品目のうち、関税を撤廃する品目を示す『自由化率』を高くすることを目指し、90%台後半で決着する可能性が高いとみられている。だが、5項目の計586品目の関税をすべて維持すると、自由化率は93.5%にとどまる。
日米協議では、コメ、麦、甘味作物の3項目は現在の関税率をほぼ維持できる方向だ。586品目の中には、実際は輸入の実績がない品目や、ライ麦など国内でほとんど生産されておらず、関税を撤廃しても影響が少ない品目も含まれている。政府は、こうした品目の関税を撤廃し、農業への打撃を最小限に抑える形で自由化率を高めたい考えだ。
Q 牛・豚肉は 米要求で自由化
……
Q コメは 農家の半数が生産
コメは、日本の農業の象徴的な存在だ。国内の全農家約250万戸のうち、コメ農家は半数近くを占め、生産額は農業全体(約8.1兆円)の約2割の1,6兆円を占める。ただ、コメ作りは減少の一途をたどっている。生産量は1967年のピ−ク時に1,445万トンあったが、2013年は861万トンと約4割も減った。生産額は90年(3.2兆円)と比べて半減し、家電量販店大手、ヤマダ電機の13年3月期売上高(1.7兆円)より少ない。
政府は過去の貿易自由化交渉で、コメについては一定量(77万トン)までは無関税での輸入を認める『ミニマム・アクセス(最低輸入量)』を設定する代わりに、それを超えると778%の高い関税をたけ、安い輸入米が出回るのを防いできた。
さらに、国が事実上、コメの生産量を決める生産調整(減反)や補助金でコメ農家を手厚く守っている。コメの生産量を抑えて価格を維持する一方で、麦や大豆などに転作した減反農家に補助金を出し、その総額は、70年の減反導入から12年までの約40年間で約7兆6,000億円に上る。
その結果、『面積が狭く、生産の効率が悪い田んぼが多く残り、農業経営の大規模化が進まなくなった。これが国際競争力を低下させている』と指摘されている。
米国の平均的なコメ農家が約160ヘクタールの水田を持っているのに対し、日本は平均約1ヘクタールにとどまる。政府は減反政策を18年度に廃止する方針で、大規模農家を増やし、国際競争力を高めたい考えだ。
Q 麦は 消費 国内産は1割
パンやうどん、ビールの原料になる麦(小麦・大麦)の国内消費量は年間700万トンに達する。このうち、米国、カナダ、オーストラリアからの輸入が8〜9割で、国内産は残り1〜2割にとどまっている。
輸入は、政府が関税ゼロで外国から買い入れ、製粉会社に売り渡す『国家貿易』が大半を占める。民間企業が輸入する場合は高い関税がかかる。
政府は海外産麦を製粉会社などに売り渡す際、『輸入差益』と呼ばれる金額を、輸入価格に上乗せしている。製粉会社から徴収する上乗せ分は小麦の場合、約800億円に上り、麦農家に補助金として配分される。
麦の国内生産量は少ないが、最近は食のブランドと結びついた麦を生産する動きが広がっている。『讃岐うどん』が名産の香川県は、うどんに適した専用の品種を開発。博多ラーメンが有名な福岡県でも、ラーメン専用の『ラー麦』が開発されている。
Q 乳製品は 生乳 補助金で支援
……
Q 甘味作物は 安い外国産が流入
…… 」
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TPPが成立するや、中小規模のコメ農家は外国から輸入される安値の外国産米には勝てない。
日本農家一戸あたりの耕作面積は平均2.27ヘクタールで、オーストラリアの1,300分の1、アメリカの75分の1、欧州の平均と比べて6分の1にすぎない。
人件費では、コメ生産世界第五位のベトナムは日本の20分の1である。
日本のコメは美味く競争力があると言うが、和食には適していても、世界的な食事には適していない。
外国産でも、最新技術で品種改良されれば日本のコメに負けないコメが作れるようになる。
世界市場で、日本の高額高品質の家電製品が、性能を向上させてきた安価高品質の中国家電との競争に敗れて衰退したのと同様に、日本農業も何時かは価格競争で敗れる可能性がある。
今でこそ国際競争力があっても、将来も強いという保障はない。
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日本の農産物は、高値ではあるが、安全で美味しいという国際的評判を得ていた。
日本の農業は、TPP参加と円安で、国際競争力がある農産物だけを生産して輸出する機会を得た。
TPPは、日本の農家を危機に陥らせるのではなく、寧ろ、若者を農業に引き戻す好機になるかも知れない。
ただし、日本の低所得な消費者には不利益になる。
日本農家が生き残る手段は、国際競争力を付けて、国内消費重視から海外輸出重視に転換する事である。
警戒すべきは、大正期の「米騒動」の再演である。
食料自給率の維持及び向上は、不可能として諦める事である。
・ ・ ・
2014年
フライデー5月23日号 「緊急ルポ TPPで日本はアメリカの属国になる
牛、豚、米だけの問題ではない。
金融・保険・法律も変わる
オバマ大統領は尖閣発言の見返りに巨大な〝実利〟を取った!
『TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉の前進を歓迎するムードがありますが、もともとTPPはアメリカが自国に有利なように貿易ルールを決めて、自国の輸出を増やし、雇用を創出することを目的としたものだということを再認識するべき。リーマンショックでボロボロになった米経済を立て直すために、オバマ大統領は「海外の市場を開放させ、アメリカの生産物・サービスを売りつければいい」と考え、TPPを推進している。日本をその格好のターゲットなのです』
TPPについて取材を続けるジャーナリストの東谷暁氏はこう警鐘を鳴らす。
5月2日 、ロンドンを訪問中の安倍晋三首相は、金融街・シティーで行った講演で、
『日本とアメリカが力を合わせて、TPPの妥協に向け、交渉を急がせようと約束しあった。大きな前進だったと言える』
と宣言した。日米間でまだ完全に合意には至っていないが、最も難航すると言われた牛肉・豚肉の関税について、おおよその見通しが立ったことで、首相は安堵しているのだろう。
だが、このままTPP交渉が進められれば、日本がアメリカの属国になるということは避けられない。
アメリカ産の安い牛肉が流通し、日本の畜産業は壊滅状態になるかもしれない。
金融は乗っ取られる
まず、畜産業は間違いなくアメリカに食われる。アメリカは『現在、アメリカ産の安い豚肉にかけられている1㎏当たり482円の関税を、50円程度に引き下げる』などの要望を日本に提示、日本側も条件付きで合意しているとみられるが、九州大学大学院の布(せ)光恒准教授はこう危惧する。
『米国産の安い牛豚肉が日本の市場に大量に流入することで、日本の畜産農業は、高級ブランド牛・豚などを扱う業者以外はぼ廃業を余儀なくされるでしょう。将来の見通しも暗くなるので、後継者も育たなくなります』
農水省の試算によると、豚については関税が撤廃されれば国内の年間生産額が約7割も減るとのことだ。壊滅と表現しても大げさではない。
同様にコメなどの農産物もアメリカ産が日本市場に流れ込んでくる。ただ、アメリカの本音の狙いはそこにはない。
前出・東谷氏が指摘する。
『金融や保険などの日本の市場こそがアメリカが狙う本丸。TPP交渉を妥協することで、アメリカはサービス業などの参入障壁を取り除くことを要求してくる。その結果、日本の金融市場がアメリカに乗っ取られる可能性があります』
たとえば現在『ゆうちょう銀行』は約176兆円の預金残高を有しているが、アメリカはこれに狙いを定めている。TPP発効後、この莫大な資金を『日本の市場だけで回すのは不公平だ』としてアメリカへの投資に回すように求めてくる可能性があるのだ。
保険市場も同様だ。一般にアメリカの保険商品の方が、日本の保険会社の提供する商品よりも安い。TPPによって、アメリカの保険商品の販売が全面的に解禁されれば、市場はいま以上に外資に席巻されるだろう。
さらに、TPPによって法律まで変わってしまう。TPPと同時に、日米間でISD条項が結ばれる可能性が高いからだ。これは、投資先の国が政策変更を行った時、それによって損害を被った企業や投資家が、相手国政府を訴えることができるという制度だ。
仮にアメリカのAという食品会社から輸入した製品に、有害な物質が含まれていたとする。日本政府がこれを規制した場合、Aの株主は『日本の法律で不利益を被った』として日本政府を訴えることができるのだ。
前出の施准教授は『最大の問題は、TPPによって日本の社会構造そのものがアメリカ化すること』と指摘する。
『日本にもアメリカと同じ経済ルールが適用されることになるので、働く人たちの雇用が不安定になっていきます。対照的に、一握りの経営者や専門職の人々の収入が上がぅていくはず、つまり、富裕層と中間層の格差がが一気に拡大するのです』
4月25日に発表された日米共同声明で、オバマ大統領は『尖閣諸島は日米安全保障の対象』と明言した。その見返りとして、日本にTPP交渉で譲歩するように求めたことは明白だ。
安倍首相はオバマ大統領に感謝し、小躍りしたが、その代償は高くつくことになりそうだ。」
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2014年11月 アメリカ議会の中間選挙で、オバマ大統領が率いる民主党は大敗した。
アメリカ議会は、大統領にTPP交渉の権限を一任するTPA(貿易促進権限)法案に反対する保守派の共和党議員が多数を占めた。
民主党議員の中かも、TPPに対して消極的意見が出始めた。
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海外資本は、市場至上主義で日本の農地を獲得し、外国人労働者や外国人移民を使って安い農産物を大量生産して日本の食糧市場を支配する。
売り上げ金の大半は本国に持ち出され、日本のは微々たる税金しか入らない。
外国人労働者は、稼いだ金を本国に送金して日本では使おうとはしない。
外国人移民は、日本人と同じ食生活をせず、母国の食生活を再現する為に安い輸入食材を買って日本の高い農産物を決して買わない。
競争力のない日本人農家は、高い農産物を生産するばかりで食糧市場から淘汰され、そして後継者がいなくなって消滅する。
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2015年11月7日号 週刊現代「TPP妥協で日本の農地は海外企業のものになる 堤未果
10月5日。8年前から秘密裏に行われてきたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のアトランタ閣僚会合が終了し、記者会見が行われた。30章の機密条文は未公開だが、安倍総理は『アジア・太平洋の未来にとって大きな成果』と高く評価している。
日本のマスコミは概して『世界のGDPの4割を占める経済圏の誕生』とお祭りムードだが、実際はこれから先には長い道のりが待っている。
……
日本ではこの間、TPPと平行したダブル規制緩和が進められてきた。TPP交渉参加の条件である『TPP妥協を前提とした国内法改正』だ。このTPPの主目的である『非関税障壁』の撤廃がたっぷりと盛り込まれている。
10月19日。TPPで全農産物の8割の関税と、聖域とされた『重要五品目』の3割が撤廃される事が明らかになった。政府は農業対策として年末に3兆円を超える補正予算を組む方針だが、果たしてこれで農家の不安を払拭されるだろうか。
アメリカやEUは価格下落分の赤字を補助金で補てんし輸出補助金を上乗せして自国農業を保護している。TPP妥協後は、アメリカなどで大規模生産された安い農産物が、大量に流れ込んでくるだろう。
もし仮に今回補正予算を組めたとしても、農家への補助金を今後も継続的に捻出できるだろうか。そして仮に毎年3兆円の補助金を出しても、8月に成立した『改正農協法』により、今後外資系企業による農地買収が進めば、補助金の対象は現在の国内生産者から国内外の企業群に移行して行くだろう。
今月の政府が公表したTPPに関する日米間合意事項に記載された、『規制改革会議に外国人投資家の意見を反映させる』という条項は重要だ」
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12月号 正論「TPPで日本農業の未来は 東谷暁
さる10月4日、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の閣僚会合が大筋合意に達して、報道はお祭りムードに転じた。平成22年10月に菅直人首相(当時)がTPP参加検討を表明して以来、その内容が菅首相にもまだ分からないうちから賛成してきたのだから当然かもしれない。
しかし、同月8日に『重要五品目』とされた農林水産物以外にも、TPP発効直後に関税は撤廃されるか、数年で撤廃の品目が明らかとなり、14日にそれが100品目に達することも分かった。15日には八百数十品目のうち約半分が同じような扱いになることを農水大臣が認めた。
正直にいうが、私はTPPに反対してきたものの、ここまで日本政府が譲歩してしまうとは思わなかった。これは交渉中に分かったことだが、コメも77万トンのミニマム・アクセス米に加えて、7万8,400トンの輸入枠組みを新たに設けることを認めたのには、さすがに驚いた。
TPPに賛成してきた論者のなかには、韓国が米韓FTA(自由貿易協定)において、ほとんどの農林水産物が関税撤廃となったことについて、韓国への軽蔑を露わにして外交力の欠如を指摘した人もいた。しかし、韓国は少なくともFTA交渉では、コメは『譲許除外』つまり例外とすることに成功している。安倍首相は平成25年、『日本には外交力があります』と語ってTPP交渉に正式に参加することを表明したが、本当に日本に外交力があったのか、また、日本政府に本当に外交力を発揮しようとしたのか疑わしい。
少し前に米国農務省が発表したシミュレーションによれば、TPPによる参加国農産物の貿易は約86億ドル拡大するという。そうして呆れるべきは、このとき日本はそのうちの約58億ドル、ちまり全体の約7割を輸入品として引き受けることになっている。この数値が発表になったとき、私はまさかここまではいかないだろうと思っていたが、いま明らかになりつつあるTPP交渉の内情をみると、この数字は現実のものとなる可能性が高いと思う。
最近思うのだが、農業地帯を抱える選挙区で当選している国会議員のかなりの部分は、実は、2世や3世であって、子供のころから東京の名門校という人物が多い。『農業を守る』とか『攻めの農業』などと述べてはいても、日本農業の危機を実感として捉えていないのではないだろうか。
今回、TPP交渉による『成果』の現実を知った農業従事者、とくに若い人たちの多くは、すでに離農することを考えている。長期的な政策のない分野から、有能な人間が去っていくのは当然のことである。
TPPが発効して10年もしないうちに、かって農村といわれていた地域には、外資を含めた民間企業が、多くの農業生産法人を傘下におき、かって農民といわれた人たちの一部をサラリーマンとして雇い、さらに外国人労働者や移民を大量に使って、収益率の高い農作物や輸出用の農産商品を生産する光景が広がっているだろう。
そうなっても、改めて日本農業が『崩壊』したとか、日本の『終わり』だなどと叫ぶつもりはないし、所得が2倍になる『農村』もあるかもしれない。しかし、いまの自民党の政治家や任意団体JA全中の幹部たちは、こうした日本農業がよいと思っているのだろうか。こんな光景のためにTPPを推進し農協改革を受容したのだろうか」
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2016年10月5日 産経ニュース「農業に外国人労働者、国家戦略特区で受け入れ検討 日本人と同等以上の報酬
安倍晋三首相は4日開いた国家戦略特区諮問会議で、農業分野で特区への外国人労働者の受け入れを検討する方針を示した。厚生労働省の有識者検討会はインドネシアなどの外国人介護福祉士の就労を、平成29年度にも訪問介護サービスに拡大する方針を決定。人口減少や高齢化で深刻な担い手不足に悩む現場の労働力を確保しやすくする狙いだ。
現行制度では外国人労働者が農業に従事することは認められていない。
安倍首相は諮問会議で農業分野への外国人受け入れは特区の重点課題だと強調。法改正も視野に「実現に向けた議論を加速する」と述べた。特区の場所を含め、制度の詳細は今後検討する。
農林水産省によると、28年2月時点の農業就業人口は前年比8・3%減の192万2200人で、2年の4割程度にまで落ち込んでいる。
外国人の活用に向けた新制度では、日本人と同等以上の報酬を支払うことを義務付け、入管難民法の特例を活用することなどを想定している。
途上国の外国人を実習生として農家などで受け入れ、技術を習得するために働いてもらう既存の「外国人技能実習制度」は維持する方向だ。一定期間、実習を受ければ、特区で働ける仕組みも検討する。」
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10月6日 産経ニュース「【主張】農業と外国人 生産性向上の実現が先だ
政府の国家戦略特区諮問会議が、農業分野での外国人労働者の受け入れ解禁へ検討を始めた。
出身国での実務経験や、日本人と同水準以上の賃金などの条件を付けることが想定される。
安倍晋三首相は法改正を念頭に「実現に向けた議論を加速していく」と意欲を表明した。
農業就業人口は、少子高齢化や不安定な収入を嫌う風潮もあり、大きく落ち込んできた。農業の担い手確保は長年の課題であり、その解決のため安易に外国人に頼ろうとするものなら誤りだ。
日本の農業は行政の手厚い保護もあって生産性が低い。多くは家族経営で、農地の集約化がなかなか進まない実態もある。
解禁は当面、特区に限るが、いずれは全国展開を図るだろう。古い体質を残したまま、人手不足の穴埋めで外国人を受け入れても、強い農業の実現は困難である。
優先すべきは経営基盤の強化にほかならない。それには、情報通信技術(ICT)の活用で超省力・高品質生産を実現する「スマート農業」の推進などが必要だ。
農業経営のあり方を変えたうえで、日本人だけでは足りないところを外国人に依存する。それが物事の順序ではないか。
問題視すべきなのは、国の形を変えることにもつながる政策の大転換について、国民に十分に説明しないまま進めている点だ。どの会議、どの部署が責任をもって担当するかもよく分からない。
介護分野では先行して、介護福祉士を在留資格に加え、訪問介護の仕事も外国人に解禁する方針を示している。日本語の微妙な表現や、細かい生活様式を理解するには相当の時間を要する。そうした点は重視されていない。
介護は医療と同じく国民の命に直結する。その分野を外国人に依存し、将来的に人材不足に陥ったらどうなるのか。
安倍首相は先の訪米時の講演で「一定の条件を満たせば、世界最速級のスピードで永住権を得られる国になる」と胸を張った。
こうした発想で将来的に永住者が増えれば、首相が否定してきた「移民国家」と極めて近い社会にならないか。そういう選択には、国民の覚悟とコンセンサスが必要だ。永住者らの社会保障をどうするかなど影響は大きい。
「経済の底上げ」を外国人に依存する姿勢を危惧する。」
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