🐙13〗─1─100%の偽物の人工肉・培養肉が、人口爆発による食糧危機を救う。食の格差。~No.44No.45No.46 @ 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2016年5月17日号 ニューズウィーク東京版「100%培養肉が極上料理になる日
 食品 畜産業による環境破壊が世界的な問題になるなか研究室のおいしい培養肉が着々と進んでいる
 ……
 畜産業は地球を破壊する
 100%人工的に培養された肉を食べたことがある人は、今も世界に50人いないだろう。しかし最近は、動物を殺して肉を食べたいという人間の欲求の解決策として、そして将来有望な投資先として培養肉の開発に注目が集まっている。
 人間の食事の90%には、何らかの肉が含まれている。だがそれは、地球にとてつもなく大きな負担を強いている。
 英王立国際問題研究所によると、畜産業が排出する地球温暖化ガスは世界全体の14.5%を
占めている。世界の乗用車、トラック、飛行機、船舶が排出する輸送業全体の温暖化ガス量を上回る数字だ。
 さらに家畜の飼料作物を栽培するための土地開発は、森林伐採の大きな原因の1つになっている。南米では飼料用の大豆農場を拡大するために、1年で約1万1,660平方キロもの森林が伐採された。
 世界の食肉消費量は増え続けており、2050年までに現在の2倍に達するとみられている。最先端の農業技術を使っても、その需要に応えるのは難しいだろう。
 07年の国連の報告書によると、今や地球表面の30%は畜産業に使用されており、農地の33%は飼料用作物の栽培に充てられている。しかも水不足が深刻化するなか、パテ用の牛肉100グラムを生産するのに、約1,700リットルもの水を使うというのは容認できない。
 メンフィスはこうした問題を解決したいと考えている。同社の技術を使えば、培養肉1キロカロリー分の生産に必要なエネルギーは3キロカロリー。現在の標準的な畜牛では1キロカロリー当たり23キロカロリーが必要だが、極めて少ないと言える。
 実は、食用に堪える培養肉を世界で初めて開発したのはメンフィスではない。オランダのモサ・ミート社は13年8月、100%培養肉でできたハンバーガーのパテを発表した。開発費用33万ドルは、グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリンらの出資で賄われた。
 もちろん価格は今後も下がるはずだ。モサ・ミート社を率いるピーター・バーストレイトによると、既に培養肉約450グラム当たりの原価は27〜45ドルまで下がっている。このため5年以内に高級牛市場に参入し、10年以内に一般的な牛肉価格と同水準で競争できるとみている。
 培養肉は『極めて魅力的な商品だ』と、バーストレイトは語る。モサ・ミートは、2年前に培養肉パテを披露して以来、大きな進歩を遂げてきた。
 当時、パテを試食した人たちは、食感はいいが本物の肉の味がしないと評した。バーストレイトによると、食感がいいのはパテが『シャーレで1本1本培養された2万5,000本の小さな筋繊維』からできているから。同社は味覚面の改良を続けているという。
 宗教に大きな影響が
 ニューヨークのブルックリンに拠点を置くモダン・メドウも、培養肉市場への参入を検討している。同社の場合、食肉と同じようなクオリティーを再現するだけでなく、タンパク質など栄養分を調整した培養肉の開発を目指している。
 モダン・メドウは、香港の大富豪・李嘉誠(リー・チアチョン)率いるホライズンズ・ベンチャーズと、シリアル起業家ピーター・シールが立ち上げたシール財団から資金を調達したとされる。
 しかし、メンフィスのバレティは競争激化に焦っていない。それどころか、『世界には培養肉メーカーが1,000社ほど必要だ』と余裕を見せている。『こうした会社をライバルだとは思っていない。ライバルは既存の食肉業界』
 実際、培養肉は畜産業だけでなく、農業全体に破壊的な影響を及ぼす可能性がある。例えばハラールイスラム教)やコーシャ(ユダヤ教)といった、宗教的な手法に沿って処理された肉のみ食べてもよいというルールも、一気に無意味になる。
 培養肉がベジタリアンに与える影響は未知数だ。2008年、PETA(動物の倫理的待遇を求める人々)は、商業的に成り立つ品質の培養肉を作った団体に100万ドルを提供すると発表して、PETA内に深刻な亀裂をもたらした。
 現在、培養肉の製造には、非常に高価な牛の胎児血清が使われている。食肉業界との関係を本当に断ちたいなら、これは培養肉メーカーが乗り越えなくてはならない問題だ。だがその突破口もようやく見えてきた。
 培養肉は細胞的には牛肉と同じだ。しかし牛を殺して作ったものではないから、肉を食べることに良心の呵責を感じる人も、安心していいはずだ。
 バーストレイトは言う。『倫理的な理由からベジタリアンになったが、肉の味は好きだという人にとって、培養肉を避ける理由はない。動物は一切殺されていないのだから、食べない手はないだろう』(グラント・バーニンガム)」 
   ・   ・   ・   
 11月27日号 サンデー毎日「『夢のバイオ技術』食肉培養研究
 日本人研究者が挑む『食卓革命』
 中国の『爆食』をはじめ、世界の食肉需要が拡大すれば価格高騰は避けられず。消費者に直撃する。解決策として脚光を浴びているのが、実験室で肉を量産する夢のような技術、すなわち食肉の培養。動物から取り出した細胞を培養液で増やす技術のことだ。
 もちろん課題はある。高価な培養液が必要なため、2013年にオランダの研究者が発表した『培養ハンバーグ』では、200グラム弱分の培養に25万ユーロ(約3,000万円)かかった。近年の研究では、肉200グラムで100万円弱までコストダウンが進む。実用化の目安となる『200グラム当たり60円』を目指し、世界中の専門家がしのぎを削る。 そうした中、培養肉に邁進する若き日本人研究者がいる。羽生雄毅さん(31)だ。英オックスフォード大学で博士号を取得、食肉培養研究のため15年1月に勤務先の東芝を退社。現在、一人で会社を立ち上げ研究に取り組む。
 羽生さんによると、200グラム当たり5万円までコストを下げることに成功し、『5年後めどに実用化を目指したい』。年収60万円。得意の画像制作で日銭を稼ぐ日々だ。
 欧米では数億円単位で資金調達する培養肉ベンチャーが登場し、羽生さんは資金面では到底かなわない。
 『肉の培養技術は醸造(じょうぞう)技術に似ています。酒やみそ、しょうゆなどの技術の蓄積がある日本の技術をかき集めれば、シリコンバレーに対抗できるはずです』(羽生さん)
 実際、食肉を巡る情勢は厳しさを増している。たとえば牛肉。9月に中国が米国産牛肉の輸入を13年ぶりに再開すると発表、牛丼などに使用される米国産ショートプレート(ばら肉)の価格が11月までに1割上昇した。中国の『爆食』は世界の食肉価格を押し上げてきたが、今後は世界人口の増加などを背景に値上がりが続くと見られる。
 羽生さんの技術が『食卓革命』を起こすことを願わずにはいられない。(花谷美枝)」
   ・   ・   ・      
 2017年2月27日 産経ニュース「【食革命 人工肉の行方】(上)人工肉は食料危機を救えるか? 世界の需要まかなえない…30年後は本物と半々になる!
 ■市民怒号「これは中国製偽タマゴだ」
 「外殻はプラスチックじゃないか。これは中国製の偽タマゴだ」
 美しい海岸を擁するインド南部ケララ州コチン。昨年秋、現代的でこぎれいなスーパーマーケットに約100人の群衆が押し寄せ、店内は怒号に包まれた。
 市民らは陳列棚のタマゴを床にたたきつけ、駆け付けた地元警察やメディアで店はごった返した。タマゴの動画や写真が「フェイスブック」に投稿され、騒ぎは一層拡大した。
 きっかけは、数日前にトラックが中国製偽タマゴを運んでいるとの噂が伝わったことだ。州当局がタマゴのサンプルを回収して検査したところ、商品はいずれも本物と判定され、情報はデマとの見方が強い。インドでは当時、原子力政策やテロ問題をめぐる中印関係の悪化を背景に中国製品の不買運動が起きており、スーパーマーケットの担当者は、偽タマゴ情報は「その流れで生じただけだ」と話す。
 しかし、抗議運動を主導した弁護士のA・N・ラマチャンドラン氏は「州ではなく連邦政府の検査が必要だ」と州発表を信じない。ネット上には偽食品の情報があふれており、「がん患者が増えているのは輸入食品に偽物が含まれていることが主な原因。中国などからの食品輸入には的確な規制が必要」と食の安全への不信感をあらわにした。
 ■味もにおいも見分けつかず
 インドでの偽タマゴ騒動とは異なり、世の中には人工的に作られた「本物」に近い食品が幅広く出回っている。例えば、日本では色や食感をカニの身に似せたカニ風味のかまぼこがあるが、最近はさらに進化した食品が登場している。米国で脚光を浴びる先端技術などを活用し、味も食感もにおいも実物と見分けがつかない肉がそのひとつだ。
 米カリフォルニア州シリコンバレーに本社を置くインポッシブル・フーズが開発した植物性食品だけを使った「人工肉」。同社を起こした米スタンフォード大名誉教授(生物化学)、パトリック・ブラウン氏の“苦心の作”だ。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、同社はハンバーガーに使用される調理済みのひき肉のにおいを徹底的に調査。においの種類は数百にのぼるという。
 パテ(すりつぶした肉)に使われるのは大豆やキノコ類が一般的で、味やにおいは肉とは異なるシロモノだ。同社はヘモグロビンなどに含まれる「ヘム」という物質が肉のにおいに重要な役割を果たしていることを発見。植物由来のヘムを、小麦やココナツオイル、大豆などの植物性食品で作ったパテに混ぜることで、ひき肉の独特なにおいや肉汁まで再現した。
  ■  ■  ■  
 将来、牛肉や豚肉が世界の需要をまかなえなくなる−。人口増加や新興国の経済成長で食肉への需要が急拡大し、タンパク質の世界需要は2050年に現在の約2倍となる見通しで、新たな食料危機への対応は喫緊の課題となっている。家畜用肉の生産過程で大量の水や土地が必要となり、二酸化炭素の排出が多いといった環境上の理由も、人工肉の開発の背景にある。
 人工肉ビジネスには、マイクロソフトビル・ゲイツ氏が100億円以上を投じて話題となり、IT企業やベンチャーキャピタルも相次ぎ資金を投じ始めた。
   ◇  
 世界で人口の“ビッグバン”が起き、食料の確保が焦眉の急となっている。そんな中、全く新しい研究に基づいて「人工肉」が開発され、世界中から脚光を浴びている。人工肉の光と影とは。食の最前線を取材した。
   ◇   
 ■知らずに食べても肉として通用
 映画の都ハリウッドと世界に名だたる高級住宅街ビバリーヒルズの間に位置するウエストハリウッド。しゃれたレストランやブティックが密集し、米西海岸の流行を発信するこの街で、人工肉ベンチャー企業のインポッシブル・フーズが開発した人工肉のバーガーが話題を集めている。
 商品名は「インポッシブル(ありえない)バーガー」(14ドル=約1600円)。赤い肉汁がしたたるミディアムレアのバーガーで、メニューにはレタスやトマト、タマネギ、ピクルス、特製ソースなどが添えられているとの説明がある。ただ、肝心のパテについての記載はない。
 バーガー本体の見た目やにおいは肉そのものだ。パテの表面は少し焦げ、かむと脂のうまみもある。歯応えも通常のハンバーガーと変わらない。“肉”くずれする感じがあった以外は食後の満腹感まで同じだ。
 「よく注文するよ。肉なのか、野菜なのかというより、おいしいハンバーガーだからね」。ウエストハリウッドのレストランがお気に入りというジョナサン・アーバーさん(38)は笑顔でそう語った。
 人工肉は、ベジタリアン菜食主義者)やビーガン(完全菜食主義者)だけでなく、肉を摂取し過ぎないよう気をつける健康志向の人たちにも受け入れられ始めている。食文化や栄養の取り方にも変化をもたらす可能性が高い。
 アーバーさんは「肉ではないことが分かっていて注文しても、肉と変わらないと思うのだから、知らずに食べても肉として通用するはず」と話す。こうした畜産業界の構造に変革をもたらす可能性のある新興企業はインポッシブル・フーズだけではない。
  ■  ■  ■  
 米食ベンチャーのサベージ・リバー(カリフォルニア州)は、ハンバーガー用のパテ「ザ・ビヨンド・バーガー」を2枚5・99ドルで販売している。
 同社は、牛肉の分子構造を分析し、牛肉の食感に近いエンドウ豆のタンパク質や天然のアラビアガム、竹セルロース、ひまわり油など、100%植物由来の素材でひき肉の食感に近い人工肉を生み出した。肉の赤身らしさは、赤カブの色素を使って再現している。
 サベージはファストフード大手、米マクドナルドのドン・トンプソン前最高経営責任者(CEO)ら食品業界の第一人者を経営陣に招き、量産化に成功。昨年春から米高級スーパーのホールフーズ・マーケットで販売を始めており、同国内で売り場を拡大する勢いだ。
 サベージが米国販売を始めて間もない昨年、三井物産は「商社の機能を使って原料調達だけでなく、アジア全域での販売戦略で協力できる」と呼びかけた。両社の思惑は一致し、三井物産は昨年11月、サベージに一部出資、今年中に日本での販売を目指している。
  ■  ■  ■  
 専門家によると、穀物を飼料とする食肉は植物に比べ、タンパク質の生産効率が低い。同じ量のタンパク質を生産する場合、穀物に比べ牛肉は約10倍、豚肉でも4倍の飼料が必要となる。世界の人口増を見据えた場合、穀物を使った人工肉の生産は急務といえる。
 「世界のタンパク質需要に対し、2050年には植物性タンパク質が全体の半分弱を占める」。三井物産ニュートリション・アグリカルチャー本部の小西波也人室長(45)はこう予測する。米西海岸にとどまらず、世界で注目を集め始めた人工肉の生産が急がれる理由だ。
   ◇   
【用語解説】動物性タンパク質と植物性タンパク質
 肉、魚、卵、乳製品などに含まれる動物性タンパク質は、体内で作ることのできない「必須アミノ酸」をバランスよく含む。不足すると疲労や免疫力の低下を招く一方、過剰摂取は肥満や生活習慣病などにつながるとされる。大豆、豆類、野菜、果物などに含まれる植物性タンパク質は一部の必須アミノ酸が不足するものの、脂質が少ないことなどから病気のリスクを抑える働きがあるとされる。
   ・   ・   ・   
 2月28日 産経ニュース「【食革命 人工肉の行方】(中)細胞培養「食糧難克服に貢献するが私は食べたくない」 衛生的に製造も不安拭えず
 聴衆の視線が会場に設置されたスクリーンの映像にくぎ付けになった。パスタや野菜とともに盛りつけられたミートボール。女性がフォークで少し切り取り、恐る恐る口に運んだ。
 「これ、おいしいわ」
 昨年2月、米サンフランシスコ。ベンチャー企業が資金を募る投資家向けのプレゼンテーション大会でのことだ。ミートボールに使われたのは、牛の細胞を培養した「人工肉」である。
 開発に成功した米ベンチャー企業、メンフィス・ミーツの最高経営責任者(CEO)、ウマ・バレティ氏は壇上で映像を交え、効率的、かつ衛生的に製造できる人工肉のメリットを強調した。
 米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、人工肉の作り方はこうだ。生きた牛から採取した細胞に酸素や栄養素、牛の胎児の血液から作った血清を加えて培養する−。
■「もはや農業ではない」
昨年5月、三重県で開催された主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)。初日のディナーでは、松阪牛ヒレ肉が振る舞われ、首脳陣の舌を満足させた。
 「おいしい肉は、代々の畜産農家たちが積み上げてきた牛づくりの匠(たくみ)の技だ」。松阪牛の産地、三重選出の自民党衆院議員で、農業に精通した三ツ矢憲生氏(66)は語る。
 畜産農家は選び抜いた子牛を手塩にかけて育てていく。松阪で1頭ごとにマッサージを施したり、食欲を促すためビールを与えたりするように、肉質を高める工夫を全国の農家が模索している。人工肉について、三ツ矢氏は言う。「もはや農業ではない。それを『肉』と呼んでいいのだろうか」
 平日のランチタイム。東京・銀座の立ち食いステーキチェーン「いきなり! ステーキ」は連日満員だ。
 300グラムの厚切りサーロインが載った鉄板で脂が爆(は)ぜる。全国116店舗で1日約3万食、8・7トンを消費する。「米国産を中心に国産や豪州産も使う。甘みや歯応えなどそれぞれに長所がある」。運営会社、ペッパーフードサービス一瀬邦夫社長(74)は語る。
 人工肉が人の味覚をどれだけ満足させられるのかは未知数だ。一瀬氏は「食料難の克服には貢献するだろう。だが、私は人工肉を食べたくない。店でも扱わない。現状では、この国の消費者がそれを歓迎するとは思えないからだ」と話す。
 ■フランケン・フード
 「フランケンシュタイン」。19世紀の英作家、メアリー・シェリーは小説に野心的な科学者が生み出した怪物を描いた。それは暴走し、科学者の家族や友人を殺してしまう。
 神秘の領域を侵すとき、言いようのない不気味さを伴う。米国では、遺伝子組み換え技術で通常の2倍の速度で成長するサケが開発され、2015年に米政府が食用としての販売を承認している。だが、気味悪さを感じた人々は「フランケン・フード」と呼ぶ。
 日本でも科学技術を駆使して育てやすくした農作物に対する抵抗感は少なくない。大豆やトウモロコシなど遺伝子が組み換えられた8作物310品種について、国は人体への安全性を確認している。だが、生物工学系企業でつくるバイテク情報普及会が平成27年、女性2千人を対象に実施した遺伝子組み換え食品のイメージ調査では、67・7%が「怖い・悪い」と回答した。
 大阪学院大の田中豊教授(53)=社会心理学=は、「不自然さや生命倫理に反すると感じる科学技術に対して、人は危険性や不安を感じて忌避する傾向がある。自衛本能かもしれない」と指摘する。
 横浜市内のスーパーの肉売り場。子連れの主婦(29)が念入りに産地を確認していた。「子供に安心して食べさせられる食材を選びたい」と語る。
 そう遠くない未来、この棚にも人工肉が並ぶかもしれない。見た目は本物の肉と同じ。味も遜色がない。そして、価格が安い。
 あなたは買いますか?」
   ・   ・   ・   
 3月1日 産経ニュース「【食革命 人工肉の行方】(下)「肉を食べると凶暴になる」?もし人工肉しかない時代が来たら… 「短命だった100年前の日本人に逆戻り」
 選択眼を鍛える食育の使命
 「肉を食べると凶暴になるので、肉は絶対に食べさせない」
 学校現場で発育段階に応じた食事バランスや食品の基礎知識などを教える東京都学校給食研究会会長で栄養教諭の塩塚宏治さん(56)は、何度か面談した小学生の保護者のことが今でも脳裏をよぎる。
 「子供の成長期には野菜だけでなく、肉を食べることも必要。保護者には子供の食生活を変えさせるよう説得したが、平行線に終わった。あの子は今どこで、どんな食生活をしているのだろうか…」
 児童生徒の食生活の乱れが指摘されて久しい。朝食抜きは珍しくなく、健康食品やビタミンなどの錠剤を朝食代わりにするケースもある。
 食育の旗振り役の中心は農林水産省だが、学校給食を所管する文部科学省も児童生徒に正しい食事の取り方や食習慣を身につけさせる取り組みを開始。児童生徒の栄養指導などを行う栄養教諭制度をスタートさせたほか、米飯給食や地産地消の推進など学校給食の充実化を図っている。
 その一翼を担う塩塚さんは年間約200時間、都内の小中学校で、食育授業に奔走している。
 植物由来の原材料でつくった「人工肉」や培養肉などが相次いで開発される加工食品の氾濫に対し、日本の食育現場はどう立ち向かうのか。
 塩塚さんは「どんな材料が使われているのかをしっかりと見定める必要がある。児童生徒に正確な情報を伝え、食品の選択眼を鍛えることもわれわれの大きな役割」と話す。
 新しい加工食品やジャンクフードであっても、その存在を頭ごなしに否定はしない。まずは自分で成分表示を確認し、健康への影響の有無も考えさせる−。塩塚さんが描く食育には、賢い消費者を育成することも含まれているようだ。
  ■  ■  ■  
 「ごまかしで本質的なものではない。ちょっと違う感じがする」
 生産者として食育活動を行う東京都内の牧場経営の男性(64)は、人工肉に疑問を呈する一人だ。
 男性は約100頭の乳牛を飼育し、乳搾りや牧場でのキャンプ体験などを通して、多くの子供たちに「小さな命をいただいて人間の体はできている」と教える。それだけに、「作る過程や、原材料に何が入っているか分からない不安もある」と吐露する。
 「問題は食品の過度な加工だ」と指摘するのは、病院や保育園で、ご飯や焼き魚など素材の分かる食事を中心とした献立指導を行う管理栄養士・食生活研究家の幕内秀夫さん(63)だ。売れる加工食品は砂糖や脂肪が多く含まれる傾向があるといい、「人工肉も砂糖の入ったソースや清涼飲料水とセットで売る可能性がある。健康を考えたら勧められない」と訴える。
  ■  ■  ■  
 桜美林大名誉・特任教授(老年学・老年医学)の柴田博さん(79)によると、肉には脂肪燃焼に必要な物質「カルニチン」や鬱予防に効果のある脳内物質の原料となる「トリプトファン」などが豊富に含まれているとされる。
 仮に肉を食べず、人工肉に置き換えた場合、どうなるのか。
 柴田さんは「植物性食品の繊維質ばかりでは、腸が傷つきやすくなる。さまざまな食品を食べないと、肉を食べず短命だった100年前の日本人に逆戻りする」と警鐘を鳴らす。
 文科省の平成28年度スーパー食育スクール事業に指定された徳島県鳴門市の鳴門渦潮高校の中嶋宏彰実習助手は「新しい食品に飛びつく前に、まずはしっかり情報と知識を得ることが大切だ」と強調した上で、こう話した。
 「バランスの良い食事とともに、食べ方も重要。旬の食材をゆっくりと、おいしくいただく和食の伝統的な考え方をこれからも教えていきたい」
   ◇  
 この企画は岩田智雄、上原すみ子、高橋裕子、玉崎栄次、中村将、花房壮が担当しました。」
・・・


・・・
 食の格差。
 人口爆発に100億人となった人類を、自然での食糧生産では賄いきれない。
 それが現実である。
 100億人の人類を飢えさせない為には、偽物であろうが何であろうが食べられる食料を人工的に工場で大量生産するしか他に方法がない。
 動物愛護団体は動物を殺して食べる事を野蛮行為として猛反対しているだけに、動物を殺さない人工的培養肉に反対しないどころか、歓迎すべき夢のような話である。
 科学技術の勝利である。
 人の嗅覚は、科学薬品の調合で誤魔化す事ができ、人工的に作りだした臭いで如何なる食べ物もどんな花でも表現できる。
 人の、見た目、臭い、歯ごたえ、味加減、肌触りなど、全ての感覚を騙す事ができる。
   ・   ・   ・   
 日本の消費者は、何を選んで食べるのか。
 食糧自給率40%以下の日本は、地球規模で食糧生産が低下する将来、アメリカに依存せずに、独自で、独力で、食糧を確保できるのか。
 自分と自分の家族が食べ物に困っている時、誰が日本の為に貴重な食べ物を分けてくれるのか。
 島国で生きてきた日本人は、大陸に於ける非情な原則が理解できない。
 その好例が、第九条の平和憲法である。
   ・   ・   ・   
 誰も、自分が飢えている時、他人が餓死しようとも、手持ちの僅かな貴重な食べ物を恵んではくれない。
   ・   ・   ・   
 マッチ売りの少女は、浄く正しく、素直に、嘘偽りを言わず、善い行いに心がけ、街角に立ってマッチを売っていたが、誰からも救いの手を得られず、それでも明日は良い事が起きると信じ、努力は報われると信じながら、たぶん恨み言を言わず、世間を呪う事なく、何かを信じながら飢えと寒さでひとり寂しく死んだ。




   ・   ・   ・