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日本漁業は地球温暖化と和食ブームによって衰退し、日本人は魚介類を輸入して食べている。
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2024年9月3日6:00 YAHOO!JAPANニュース SmartFLASH「“令和の米騒動”なんてどこ吹く風「どっさり山積み」香港スーパーに日本米が並ぶ理由を現地商社マンが解説
大量の米が売られている香港の高級スーパー『city super』
全国の小売店で、日本人の主食であるコメの品薄状態が続いている。政府備蓄米を放出するよう要望が高まる一方だが、坂本哲志農林水産大臣は8月27日の記者会見で「9月にかけて新米が出回るので、順次、品薄は解消する」と述べ、放出に慎重な姿勢を崩していない。
【写真アリ】香港では日本米が山積みに!
「岸田首相が食糧安定供給を議論する会合で、コメの流通状況を改善するよう坂本農水相に要請したものの、米価高騰は避けられない見通しです。ただでさえ相次ぐ食品値上げラッシュのさなかで、家計や飲食店への打撃は計り知れず、コメ政策の破綻を指摘する声もあります」(政治担当記者)
「令和の米騒動」と揶揄されるほど“米びつの底”が見えそうなわが国だが、アジアに目を移すと、意外にも日本米の在庫は十分ある、というから驚きだ。たとえば、東京から飛行機で約4時間の香港――。現地在住ジャーナリスト・角脇久志氏が報告する。
「8月22日の香港Yahoo!ニュースでは、『日本のコメ在庫が歴史的最低値に落ち込み、パニックが起きる! ネットユーザーらはスーパーでコメ製品が品薄になっていると苦情を寄せるも、農林水産省は3つの理由を挙げて消費者に心配しないように呼びかけている』というタイトルで報道されるなど、日本のコメ問題には香港市民も関心を寄せています。しかし、香港の街なかのスーパーなどには、日本米の袋がどっさり山積みになっており、品薄どころか、あり余っている状況なんです。これは飲食店でも同様で、日本発のおむすび専門店『華御結(はなむすび)』でスタッフに取材したところ、『とくにおむすびの材料用のコメや、店頭販売用の日本米が不足しているという話は聞いていない』とのことでした。
また、8月11日に香港1号店をオープンし、1時間待ちの行列ができるほど人気となっている牛丼の『松屋』。こちらは秋田県産のあきたこまちを使用しているのをセールスポイントにしていますが、『日本米の不足でメニューが提供できない』みたいな話は出ていません。私自身、日本料理店へときどき行きますが、日本米の不足でメニューに影響が出ている話は聞いたことがないですね」
もともと、香港には日本料理店が多く進出しており、和食を好む香港人も多い。平均レベル以上のお店では、日本米を使用していることを売りにする店が多いが、品薄の影響はどこもほぼ皆無だというのだ。
「中国産のコメやタイ米と比べ、割高な日本米ですが、香港では人気が高く、ブランド米として認知され、幅広い食品店で販売されています。香港政府工業貿易署が発表している最新のコメの輸入統計では、2023年度の、香港への日本米の輸入量は1万1200tで、香港が輸入する米の4.4%。2024年度は、7月31日までの統計ですでに7500tと、輸入量の5.0%に達しています。これは2023年度と変わらずか、むしろ、やや微増のペースです。ちなみに、2014年が1700t……輸入量における0.5%なので、日本米の売上は、ここ10年でじつに6倍以上になっているんです」(角脇氏)
では、金額が割高なのかというと、そんなこともないという。
「日系でいうと、高級スーパー『city super』には日本米専門コーナーがあり、日本全国30種類以上の日本米が販売され、品ぞろえではナンバーワン。価格はブランド米の南魚沼産コシヒカリが2kgで172香港ドル(約3200円)、北海道のゆめぴりかが2kgで160香港ドル(約3000円)、ひとめぼれが2kg155香港ドル(約2900円)などで、高級店なので他店に比べて高めです。しかし、日本でも有名なディスカウントショップ『ドン・キホーテ』では、北海道の農家より仕入れ、香港の自社工場で精米したななつぼしを『安田精米』というブランドで専用コーナーを作り、大々的に宣伝・販売しています。ほかの日系スーパーでは2kg100香港ドル(約1900円)以上することが多い、ななつぼしですが、2kg69香港ドル(約1300円)と、割安で販売して人気です。
また、日本人社長が香港で120店舗展開するおむすびチェーン店『華御結』では、福井県産のコシヒカリが2kg2パックで150香港ドル(約2800円)。日本米としてはかなり割安です。ほかに香港ローカルで、中国系大手商社が運営する、日本商品をメインに取り扱うショップでは、独自ルートで仕入れた三三〇(直播米)という、ゆめぴりかの系統の日本米を販売しており、価格は29.9香港ドル(約560円)。ここも、ほかの日系スーパーに比べて、かなり安いといえます」(角脇氏)
日本では品薄の日本米が、香港で過不足なく流通しているのはなぜなのだろうか。ある香港の商社マンが解説する。
「コメに関しては、作付け前に多くの量が、JAやコメの卸売業者など、引き取り先や売り先が決まっているんです。その売り先がどれくらい買うかに合わせて作付けすることが多いので、大きく余剰分は出ないということです。香港など海外の取引先であれば、多くは半年から1年前に売買取り引きを結んで輸入をするため、直近1~2カ月で、日本がコメ不足になったからといって、急に輸入量が減らされるということはあまり考えられないんです。急に流通量を増やすことはできないが、必要な分は前もって確保されているので、香港の売り場には日本米が山積みというわけです」
海外旅行のお土産に、こっそり日本米を買って帰る――。そんな“逆輸入”が横行することにならなければいいが……。
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日本の食料自給率は、減る事はあっても増える事はない。
日本農業・日本人農家を潰したのは、戦後民主主義教育を推進したメディアと教育である。つまり、エセ保守とリベラル左派である。
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バブル経済時の「日本農業不要論」の付けが、令和の米騒動である。
観光立国を目指す日本政府とメディアは、収益率の悪い第一次産業である農業は産業のお荷物と見なし、外国人観光客を呼び込む為にサービスや情報に人材と資金を集中させるべく日本改造を行っている。
その象徴が、財界が進めているカジノ(賭博)を含む巨大リゾート計画である。
教育は、農業の大切さを教えない。
農産物を盗む窃盗事件が多発している。
天照大神から授かったお米を粗末にすると目が潰れる。
宗教心に篤い日本民族にとって、塩とコメは神に捧げる神聖な特産品であった。
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台湾有事や巨大地震などの自然災害で、日本は確実に食糧を失って日本人は飢える。
国力(経済力・軍事力・科学技術力)を失った日本は、世界市場で食糧やエネルギーの獲得競争に敗れ、買い負けして必要量を確保できなくなる。
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農業国家は、外貨を稼ぐ為に国内で生産した農産物を商業国や工業国へ輸出し、自国民が飢えない為に外国から安い農産物を輸入する。
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日本政府は、長年、コメ余りに苦しんでいた所に外国での和食ブームを商機としてコメの輸出に力を入れた。
メディアは、衰退する日本農業を守る為には、和食ブームを利用して国際競争力を高めてコメや農産物の輸出を奨励し、収入源と後継者不足に苦しむ日本人農家を救うべきだと主張した。
それが、農業に於けるクールジャパン戦略であった。
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今だけ・自分だけ・金だけの現代日本人は、日本民族が受け継いできた「コメ神話」を捨てた。
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日米戦争は、石油を巡るエネルギー戦争であったが、同時に外米を巡る食糧戦争でもあった。
それ故に、日米戦争は避けられない戦争であり、日本にとって積極的自衛戦争であった。
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9月3日 YAHOO!JAPANニュース MBSニュース「“米が買えない”で注目される国の『備蓄米』って何?常に100万トン備えるも政府が放出に慎重なのには理由が【令和の米騒動】
スーパーマーケットなどに“米がない”として「令和の米騒動」とも呼ばれる中、話題になっているのが『備蓄米』です。政府は100万トンもの米を備蓄。この備蓄米は何のための米なのか、「品薄」と言われる中でなぜ放出しないのか、農業経済学者の小川真如さんへの取材などをもとに情報をまとめました。
【写真を見る】スーパーは悲鳴『入荷しても30分で売り切れ』でも備蓄米を出さない理由…「農水省は大不作のため準備」と専門家
「コロナ禍の反動」「台風・地震の不安感」などで需要増
小川氏によりますと、今“米が買えない”理由は、簡単に言うと『供給と需要のバランス』だということです。
供給面としては、去年、品質の良い一等米が少なかったということです。しかし、米全体の作況指数(※通常の年を100としたときの、その年の米の収穫量)は101で、品質の良い米は少なかったわけですが、米全体としては特に不作ではなく、普段よりもちょっと多いぐらいの収穫量があったということです。
ではなぜ米がないのか。需要面として、コロナ禍の反動で外食が好調、さらにインバウンドがたくさん米を消費しています。また、物価高で米に割安感があるということもポイントで、麺やパンなどに使われる小麦の値段が高騰していく中、消費者が米の購入に走ったという流れがあるということです。そのほか、台風・地震での不安感や、報道を見て買いだめをする動きがあったようです。
「備蓄米」は1993年『平成の米騒動』をきっかけに開始
そして、最近、耳にすることが多くなった『備蓄米』。備蓄米とは、毎年20万トン程度、国が買ってキープしている米のことで、常に100万トン程度備蓄されています。米は生もののため、5年持ち越した後に飼料用などとして販売されます。特別な温度・湿度管理で5年程度は人間が食べられるような状態で蓄えられているのが備蓄米です。
この備蓄米の制度は、1993年の「平成の米騒動」をきっかけに1995年に開始。当時はタイ米や中国産の米などを輸入し対策しました。
政府は収穫前(6月末くらいまで)に生産者に契約し、主食米の平均的な価格で買い取っています。この備蓄米の量がなぜ100万トンかといえば、例えば10年に1度の不作、もしくは不作が2年連続起きたとしても対応できる量だということです。
こうした量の備蓄米は普段、リスク分散という意味で全国各地に保管場所があり、民間業者の倉庫や施設などに保管しています。
年間490億の費用がかかる備蓄米 有事の際に放出
備蓄米の維持管理には“結構なお金”がかかります。農林水産省の資料(2021年決算額)によりますと、保管などにかかる経費は年間約113億円。また、農家から米を買って、5年が経過したら飼料用として売ります。買い上げる価格より安く売るため、損が出ます。この売買損益約377億円を含めると、合計で年間約490億円かかることになります。これは税金から支出されていて、490億円をかけて備蓄しておくべきかどうかなどは、過去に議論されてきました。
過去に備蓄米を主食用として供給した例があります。2003年には米の不作が原因で一部供給されました。2011年に東日本大震災が発生した際には米がなくなり、4万トン程度が放出されました。そして2016年に熊本地震が発生した際にも放出されました。お金はかかりますが、有事の際のセーフティーネットという位置づけになっています。
放出で「米の価格が急激に下がる可能性」を政府は懸念か
現在、“米が品薄”となる中、大阪府の吉村洋文知事は「ひっ迫しているのであれば米を眠らせておく必要はない」として、国に備蓄米の放出を求めました。一方、坂本哲志農林水産大臣は放出に慎重な姿勢を見せています。
米は民間流通が基本で、政府が備蓄米をどっと出してしまうと、需要供給や価格に大きな影響が出ることが懸念されていて、今は一時的に米の値段が急激に上がってますが、備蓄米を放出してしまうと価格が急激に下がる可能性があり、米農家が大ダメージを受けるという側面もあるということです。そのため、簡単に備蓄米は出せないという政府側の主張があります。
農業経済学者の小川真如氏は「生産が減っておらず自然災害もない中で備蓄米を出すとなると、食糧法の解釈が変わってくる」と指摘。食糧法第2条で『政府は米穀の供給が不足する事態に備えた備蓄の機動的な運営を図るものとする』とする一方、食糧法第3条では『「米穀の備蓄」とは米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え…』となっています。法のポイントは「供給が不足」や「生産量の減少」で、今回は生産量が不足していないため“当てはまらない”状況です。
米農家に打撃を与えない程度に、混乱が起きない程度に備蓄米を放出するというのは、様々な意見がありますが、都市部だけでなく地方も含め全体に供給しないといけないとなると、このハンドリングが政府としても非常に難しいのではないかとも言われています。
では、もしこの備蓄米が放出されるとしたらどんな手順になるのか。大凶作などで民間在庫が著しく低下する見通しとなれば、農林水産省は部会を開き、その市場の状況などに合わせて最終的に農林水産大臣が放出を決定するという流れです。農林水産省によりますと、有事の際は2~3日で供給ができるということです。
“米不足”に備えるポイントは?
そして、台風10号の新米への影響についてです。8月29日までの取材で、小川氏は「今年は生産を増やした産地も多いが、台風直撃となると収穫に影響の可能性も。本年度の生産激減が引き起こされて明確になれば、もしかしたら備蓄米の放出も」という見解を示しています。日本米穀商連合会の相川英一専務は「今ある稲穂が水に浸かると品質が落ちるので、そこは心配。ただ今年の流通量は去年より多い見込み。そこまで大きな影響はないと思う」と話していました。
大阪府の吉村知事も、9月中には供給が安定するという話があるとして、必要以上に買い込むことはしないでほしいということを呼びかけています。
最後に、“米不足”に備えるポイントについてです。小川氏は、近年では都市部に人口が集中し、農家との繋がりがない人が増えているとしたうえで、普段から“スーパー以外の買い物先”を構築しておくことがポイントだとしています。農家とのつながり、直接購入の術など、自分が米を買えるルートをいくつか持っておくというのも大切だということです。
(2024年8月29日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
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9月3日9:17 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「「コメ離れ」なのになぜ「令和の米騒動」が起きたのか…「時給10円」で農家を働かせる政府の信じられない愚策
「コメ離れ」なのになぜ「令和の米騒動」が起きたのか(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/kaorinne
日本人のコメ消費量は年々減少している。農林水産省によると、一人当たりの年間消費量はピークだった1962年度から半分以下の51kgまで落ち込んだ。それなのになぜ「コメ不足」が起きているのか。東大大学院教授の鈴木宣弘さんは「コメ不足の根本的な原因が改善しない限り、今後も慢性的なコメ不足が続くだろう」という――。
【写真】「備蓄米放出を」大阪府吉村知事の訴えに政府は…
■「令和のコメ騒動」政府は「対応しない」と明言
2023年の猛暑の影響や、インバウンド観光客の増加でコメ消費量が増えたことにより、全国的に「コメ不足」が発生、「令和のコメ騒動」だと話題になっている。
実際にスーパーなど小売店ではコメが品薄となり、「お店に行っても買えなかった」という声も多い。
特に関西の品薄がひどく、大阪府の吉村知事は政府に「備蓄米の放出」を要望すると発表している。
一方、政府はコメ不足対策として何かするつもりはなさそうだ。
坂本哲志農水相は8月27日の会見で「新米が出回るのでコメ不足は9月には解消する」として、政府の備蓄米放出も否定した。
政府備蓄は100万トン程度もある。実際に放出しなくとも、「放出の用意がある」と発言するだけでも、状況を変えられるだろう。なのに、それをわざわざ否定しているわけだ。
なぜ政府は及び腰なのか。理由は2つある。
①「コメは余っている」と言ってきたのに備蓄の放出で「コメ不足」を認めることは、政府の沽券にかかわる。
②そもそも、需給調整は市場に委ねるべきものとし、コメを過剰時に買い上げて不足時に放出する役割は担わず、よほどの事態でないと主食用の放出は行わない方針が決まっているので、「この程度」ではできない、ということだろう。
今回の対応は「政府は何もしない」と宣言したに等しい。「コメの流通の円滑化」を卸売業者などに要請するだけ、子ども食堂へのわずかな備蓄米供出のほかは何もしないと言っているわけだ。
政府が自分たちのメンツしか頭にないようでは農家も国民ももたないだろう。
■「コメ不足はもうじき解消」を信じてはならない
毎年7月~8月は、前年に採れた古米と、今年採れる新米のちょうど端境期にあたり、もともと需給が逼迫しやすい。9月になれば新米が流通するのでコメ不足は解消する」は、短期的にはおそらく間違いではないだろう。
ただ、長期的に見ると話は別である。コメ不足は今後も続くと思われる。
近年、日本人のコメ離れが進んでいるといわれてきた。農林水産省によると、一人当たりの主食用コメの消費量はピークだった1962年度(118kg)から年々減少し、2022年度は半分以下の年間51kgまで落ち込んでいる。
コメを食べる日本人は減っているのにコメ不足が起きているのはなぜか。根本的な原因は「減反政策」という「農政の失敗」にあるからだ。
政府が政策失敗を認め、これを是正しない限り、今後わが国は慢性的なコメ不足に直面すると考えられる。
■根本的な原因は「コメの生産量低下」にある
コメ不足の原因として、冒頭で指摘したように「2023年の猛暑」と「インバウンド消費の増加」が挙げられている。
だが、政府も認めている通り、2023年のコメの作況指数は101と、不作とは言いがたい。猛暑の影響で1級米が減少したほか、日本海側で不作だった影響もあるが、コメ不足」の原因を異常気象だけに求めるのは早計だろう。
またインバウンド消費の増加についても、増加量は約1%程度という。
では根本的な原因は何かというと、「コメの生産量が低下している」ことにあると考えられる。
■稲作農家の平均所得は「1万円」
政府はこれまで「コメの過剰在庫」を理由に、農家に厳しい政策をとってきた。
①生産者には生産調整強化を要請し、②水田を畑にしたら1回限りの「手切れ金」を支給するとして田んぼ潰しを始め、③農家の赤字補填はせず、④小売・流通業界も安く買いたたく。
農家を苦しめ、コメの生産を減らしてきたのである。
実際に、農水省が公表している「営農類型別経営統計」を確認すると、農家の苦境に驚くほかない。
稲作農家が1年働いて手元に残る所得は、2020年の時点で、1戸平均17.9万円しかなかった。時給にすると181円という低水準である。
だが、2021年、2022年には、コロナ禍でコメ消費量が落ち込んだこともあり、年間の平均所得はなんと1万円に低下している。時給換算だと10円である。
■「インフレで農家は儲かっている」は間違い
「インフレの影響でコメ価格が上昇しているのだから、コメ農家の収入も増えているはずだ」と思う向きも多いであろう。
たしかに、現在のコメ価格は上昇しているが、農家がコメを売ったのは昨年である。もちろん昨年のまだ安かった米価で売っている。だから農家に値上がりのメリットは還元されていない。利益を得ているのは流通・小売だけである。
そもそも店頭のコメ価格は上がっているが、生産者米価はまだまだ低水準にある。
現在、生産者米価は1.6万円/60kg前後となっているが、コメの生産コストも1.6万円/60kg強であり、やっとトントンか、まだ赤字という水準だ。
ある稲作農家は筆者に、「家族農業の米作りは、自作のコメを食べたい、先祖からの農地は何としても守るという心意気だけで支えられている」と語った。
もっと農家を支援しなければ、農家ももたないし、国民ももたないという状況になっている。
■政府はコメの生産を奨励すべき
政府はコメの生産を奨励する政策をとるべきだ。
その結果、もし「コメ余り」になったとしても、政府備蓄を増やすことで対応できる。
そもそも、今夏のようなコメ不足に対応するために、政府備蓄がある。
政府の言う通り「9月には解消」する一過性のコメ不足なら、なおさら政府備蓄の放出で対応できるはずだ。
十分な政府備蓄があれば、「異常気象によるコメ不足」にも対応できるはずだ。
近年は猛暑の年が続いているし、異常気象も毎年恒例となればもはや異常でもなんでもない。対応できないような「想定外の事象」とはいえない。
インバウンド消費の急増についても、コロナ禍前に戻ったわけだから、想定外ではない。
需給の変化は当然起きると考え、それに対応するために十分な政府備蓄を確保するのが政府の仕事であるはずだ。
そのために、農家を支援しコメの生産を奨励する政策こそ、本来政府がとるべき方針であるのは言うまでもない。
■日本の穀物備蓄は1.5~2カ月しかない
「農家いじめ」を続ける日本をよそに、世界は国内農業の保護を行っている。
中国は台湾有事をにらみ国内の食料備蓄を増やしているという。14億人の国民が約1年半食べられるだけの穀物を買い占めているというが、このせいで世界の穀物価格が下がらないという説もある。
一方、日本の穀物備蓄能力はかなり貧弱で、実は1.5~2カ月ほどしかない。
日本は中国と違って、国内で消費するコメは自給可能だ。いまは700万トンくらいしか作っていないが、日本の水田を全部利用すれば1400万トン以上のコメを生産できる。
「令和のコメ騒動」が起きているのだから、コメはもっと増産し、備蓄ももっと増やせばいい。
中国のように1年半とまでは言わなくとも、せめて1年くらいは食べていけるだけの備蓄をもつべきだ。
■財務省が反対するからできない
そうできない理由は、「そんな金がどこにある」と財務省が反対するからだ。
ただ、日本政府にはお金がないわけではない。台湾有事への備えとして、トマホークミサイルをはじめ、防衛力増強のために今後43兆円も使うという。
しかし、兵器ばかりあっても、食料がなければ命は守れない。
防衛予算の一部でいいから、食料の備蓄に回すことが必要だ。「食料の確保」は安全保障の一丁目一番地である。
本来政府内でこういう議論をもっときちんとやらなくてはいけない。
■「牛乳余り」だったのに一転して「牛乳不足」になる理由
コメと同じように、政府の失敗によって需給が不安定化しているのが「酪農」だ。
コロナ禍で「牛乳余り」が叫ばれていたが、今度は反対に牛乳が不足傾向にあり、すでにバターは足りなくなっているという。
昨年の猛暑で生乳の生産量が減ったのが原因と言われているが、それは一部でしかない。コメ同様、根本的な原因は「農政の失敗」にある。
政府は牛乳の過剰在庫を理由に、①酪農家には減産を要請し、②乳牛を処分したら一時金を支給するとして乳牛減らしを始め、③酪農家の赤字補填はせず、逆に、脱脂粉乳在庫減らしのためとして酪農家に重い負担金を拠出させ、④小売・加工業界も乳価引き上げを渋った。
これにより、酪農家の廃業が増え、生乳生産が減ってしまった。
■国内農業をつぶして輸入を増やしている
コメ同様に、生乳の増産を奨励し、バター・脱脂粉乳の政府在庫を増やしていれば、その買い入れと放出で需給調整できたはずだ。
それをしないから、牛乳余りになったり、牛乳不足になったりするのだ。
結果、政府はバターなどの輸入を増やすことで対応し、余計に酪農家を苦しめることになっている。
農水省の2022年の「営農類型別経営統計」によると、酪農経営の営業利益は平均で約700万円の赤字となっている。特に、酪農業界を牽引し、経営規模を拡大してきた大規模酪農家の赤字がひどい。「搾乳牛飼養頭数200頭以上」の赤字は、平均で2200万円を超えている。
政府がやっているのは、国内農業をつぶして輸入を増やすという「逆行政策」にほかならない。
■「一部の農家が潰れるのはやむを得ない」が政府の本音
いま政府がやるべきなのは、これまでの農政を転換し、農家を保護して生産を奨励する方向に舵を切ることだ。
だが、今のところ政府の姿勢に変化は見られない。今年は25年ぶりに「農業の憲法」とも言うべき「食料・農業・農村基本法」が改正されたが、政策の転換は見送られた。
それどころか、「これまでの農業政策は正しい。農業の生産性向上のためなら、一部の農家が潰れるのはやむを得ない」という新自由主義的な方向性がより強く打ち出されている。
■事実上の「国家総動員法」さえ成立
新たな「農家いじめ」も導入された。
台湾有事をにらんで今年5月に成立した、「食料供給困難事態対策法」がそれだ。
日本で食料危機が発生した場合、農家に米、大豆などの増産計画の届け出を指示し、拒否すれば罰金を科す、という法律だ。事実上、農家から半強制的に食料を「徴発」する法律で、戦前の「国家総動員法」を彷彿させる。
そんな急激な増産が実際できるわけがないし、していいわけもない。
そもそも、現在の「農家いじめ」が今後も続くとなると、いずれ農業従事者は激減してしまう。農村は破壊され、増産どころか、いずれ国内農業消滅の危機に直面するであろう。
このような状況下にありながらも、政府は対応するつもりがまったくない。
となると、「令和のコメ騒動」は長期化、慢性化すると考えるのが自然だろう。
鈴木 宣弘(すずき・のぶひろ)
東京大学大学院農学生命科学研究科教授
1958年三重県生まれ。82年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学大学院教授を経て2006年より現職。FTA 産官学共同研究会委員、食料・農業・農村政策審議会委員、財務省関税・外国為替等審議会委員、経済産業省産業構造審議会委員、コーネル大学客員教授などを歴任。おもな著書に『農業消滅』(平凡社新書)、『食の戦争』(文春新書)、『悪夢の食卓』(KADOKAWA)、『農業経済学 第5版』(共著、岩波書店)などがある。
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2024/08/28 18:00
8月28日 PRESIDENT Online「このままでは「令和の米騒動」が繰り返される…コメ不足を放置して利権を守る「農水省とJA農協」の大問題
農水省が備蓄米の放出を拒み続ける本当の理由
山下 一仁
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
コメが不足している原因は何か。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「猛暑の影響やインバウンド消費の増加といわれているが、根本原因は減反によるコメの生産量減少だ。高価格を維持するために農水省はコメの供給量を減らし続けており、わずかな需要増でも不足する事態になっている」という――。
「米の供給が不安定です。多くのお客様にお買い求めいただくため、1家族1日1袋までとさせていただきます。供給が安定するまでご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いします」と書かれた張り紙が貼られたスーパーマーケット(2024年8月27日、東京都)写真=AFP/時事通信フォト「米の供給が不安定です。多くのお客様にお買い求めいただくため、1家族1日1袋までとさせていただきます。供給が安定するまでご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いします」と書かれた張り紙が貼られたスーパーマーケット(2024年8月27日、東京都)
コメ不足の根本原因は「減反政策」
コメの値段が上がっている。棚からコメが消えたスーパーもある。それなのに、農林水産省は「コメの需給は逼迫していない」という。コメ不足について、マスメディアで言われている原因は本質的なものだろうか? また、農林水産省はなぜコメ不足を否定するのだろうか?
コメ不足の原因として二つのことが言われている。一つは、供給が不足、もう一つは需要の増加である。
コメの流通業界は、2023年産米の作況指数は平年作以上だったが、猛暑の影響で品質が低下し一等米の比率が減少したと説明している。一等とか二等とかいうコメの等級は、一定量のコメの中に、粒のそろったコメ(整粒)の比率が高いか低いか、白濁した粒など被害を受けた粒の比率がどのくらいなのか、などで決定される。
イネの穂が出た後に高温が続くと、コメの内部に亀裂が生じてしまう“胴割れ粒”やでんぷんの形成が悪く白く濁ったように見える“乳白粒“などが生じる。胴割れ粒は精米にする際に割れてしまう。この割合が多いと精米歩留まりが低下し、商品としての評価が下がる。コメの流通業界の主張をわかりやすく説明すると、「見た目の悪い割れたコメや被害のあったコメなどを流通段階で取り除いたので、消費者への供給量が少なくなった」というのだろう。
指摘されないファクトがある。
2023年産米の作況指数101だった。だが、これはコメの生産量が前年より多かったことを意味しない。作況指数というのは一定の面積当たりの収量(“単収”という)の良し悪しだからである。コメの作付面積が減少していれば、作況指数100でも、生産量は前年を下回る。
JA農協と農林水産省は、コメの需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反(生産調整)=作付面積の減少を進めてきた。前年比10万トン減少という前提でコメの作付面積を減らしていれば、作況指数が前年並みの100でも、昨年の9月から今年の8月までに供給される作年(2023年)産のコメの量は前年(2022年)産に比べ10万トン少なくなる。
現に、作況指数101にもかかわらず、2023年産のコメ生産量は前年の670万トンから9万トン減少した。猛暑による影響を云々する前に、2023年産のコメ供給量は減反で減少していたのである。
わずかな需要増で「コメ不足」になった
需要の増加として挙げられているのは、インバウンドによるコメの消費増である。
しかし、毎月300万人の旅行者が日本に7日間滞在して日本人並みにコメを食べたとしても、消費量の0.5%増に過ぎない。ほかにも、「国際的な小麦価格の高騰でパンの値段が上昇し、相対的に安くなったコメの消費が増加した」とか、「南海トラフ地震への恐怖から消費者がコメの備蓄のため買いに走っているのだ」とかという説明が行われている。
確かに、最近のコメ不足がこれらの要素によって引き起こされたことは事実だろう。しかし、これらは、コメの全体需給の大きな部分を占めるものではない。足しあげても1割にもならない。問題は、こうしたわずかな生産や消費の変動でコメが足らなくなるほど、生産量が減らされていることである。
京都・清水の産寧坂を埋め尽くす観光客写真=iStock.com/D. Lentz※写真はイメージです
農作物は不作のほうが売上高は増加する
JA農協と農林水産省は、なぜ、ここまでコメの生産量を減らしたのか。
食料、なかでも必需品であるコメの「商品」としての特徴がある。胃袋は一定なので、毎日の消費量に限界がある。テレビの価格が半分になると、もう一台買おうという気になるかもしれない。しかし、コメの値段が半分になったからといって、コメを倍食べようという人はいない。コメの値段が高くても低くても消費量はそれほど変わらない。
消費量が大きく動かないので、生産量が増え、それを市場でさばこうとすると、価格を大幅に下げなければならない。“豊作貧乏”と言われる現象である。逆に、長雨などで不作になると、一定量は食べなければならないので、価格は高騰する。不作になると売上高は増加する。食料需要の特色から、供給がわずかに増えたり減ったりするだけで、価格は大きく変動する。
この食料についての経済学を利用したのが、JA農協と農林水産省が推進してきたコメの減反政策である。減反とは農家に補助金を与えてコメの供給を減らして米価を上げるものだ。需要の特性から、わずかな供給の減少でも米価や売り上げを大きく上げることができる。
実際に、減反は水田面積の4割に及んでいる。
また、減反は生産を抑える政策なので、コメの面積当たり収量(単収)を増加させる品種改良は、研究者にとってはタブーになった。単収とは生産性に他ならない。今では、減反開始時に日本と同じ水準だったカリフォルニアのコメ単収は、日本の1.6倍、情けないことに、1960年頃は日本の半分しかなかった中国に追い抜かれてしまっている。
水田面積全てにカリフォルニア米ほどの単収のコメを作付けすれば、長期的には1700万~1900万トンのコメを生産することができる。単収が増やせない短期でも、900万トン程度のコメは生産できる。国内だけでこれを処理しようとすると、米価は暴落する。このため50年以上にわたる減反政策でコメ生産を減少させ、米価を維持してきた。現在、JA農協と農林水産省は、主食用のコメの生産量を650万トン程度に抑制することを目標にしている。
JA農協発展のための減反政策
減反はJA農協発展の基礎である。
米価を高く支持したので、コストの高い零細な兼業農家が滞留した。かれらは農業所得の4倍以上に上る兼業収入(サラリーマン収入)をJAバンクに預金した。また、農業に関心を失ったこれらの農家が農地を宅地等に転用・売却して得た膨大な利益もJAバンクに預金され、JAは預金量100兆円を超すメガバンクに発展した。減反で米価を上げて兼業農家を維持したこととJAが銀行業と他の事業を兼業できる日本で唯一の法人であることとが、絶妙に絡み合って、JAの発展をもたらした。
「米価が下がると農家が困るのではないか」「コメ生産が維持できなくなるのではないか」という指摘がなされる。しかし、コメ生産を維持するために、コメ生産を減少させる(減反である)というのは矛盾していないか。
また、アメリカやEUは農家の所得を保護するために、かなり前から高い価格ではなく直接支払いという政府からの交付金に転換している。よく私は「欧米では農業保護のやり方を高い価格ではなく財政からの直接支払いという方法に転換したのに、なぜ日本ではできないのですか?」という質問を受ける。農家にとっては、価格でも直接支払いでも、収入には変わらない。なぜ、日本の農政は価格に固執するのか? それは、欧米になくて、日本にあるものがあるからである。JA農協である。
アメリカにもEUにも農家の利益を代弁する政治団体はある。しかし、これらの団体とJA農協が決定的に違うのは、JA農協それ自体が金融業などの経済活動も行っていることである。このような組織に政治活動を行わせれば、農家の利益より自らの経済活動の利益を実現しようとする。その手段として使われたのが、高米価・減反政策である。
米価を下げても主業農家に直接支払いをすれば、主業農家だけでなくこれに農地を貸して地代収入を得る兼業農家も利益を得る。しかし、直接支払いが交付されない農協にとっては、価格低下で販売手数料収入は減少するし、零細兼業農家が農業をやめて組合員でなくなれば、JAバンクの預金も減少する。農協にとっては良いことがないのだ。
農林水産省は政府備蓄米の放出を拒否
減反政策によって、コメの全農と卸売業者との取引価格(相対取引価格)は、60キログラムあたり、2021年産1万2804円から、2022年産1万3844円、2023年産1万5306円(7月は1万5626円)となり、この2年間で20%も上昇した。農林水産省としてはシナリオ通り米価を上昇させて満足しているところだろう。
去る7月19日の記者会見で坂本農林水産大臣は、昨年(2023)産米の相対取引価格について、「令和5年産米の6月の相対取引価格は、最近の中では平成24年産の同時期の1万6293円に次ぐ価格となっています」と述べ、卸売業者が全農に支払う価格が10年ぶりの高水準になっていることを認めた。
さらに、坂本大臣は、今年(2024)産の早期米(他の産地よりも早く出荷されるコメ、早場米ともいう。)の概算金(JA農協が農家に支払う仮払金)の価格について、「令和6年産の早期米の概算金の大幅上昇について、鹿児島県産コシヒカリの7月末までの概算金が、60kg当たり1万9200円など、前年産に比べ6000円高い価格で決定されていることは報道により承知しています」と述べている。31%の価格上昇である。
それでも坂本大臣は、「私自身は、需給が引き締まっているということで、特段、これによってさまざまな対応をするというような状況にはないと思っています。」と述べているのである。米価の上昇はJA農協と農林水産省にとって成果以外の何物でもない。コメが不足したからといって、備蓄米を放出すれば、供給が増えて米価は低下する。大阪府の吉村洋文知事の備蓄米放出という要請を大臣は拒否した。
政府備蓄米を保管している鮫川運送の倉庫=4月、福島県矢吹町写真提供=共同通信社政府備蓄米を保管している鮫川運送の倉庫=4月、福島県矢吹町
減反廃止はフェイクニュース
なお、減反は廃止されたのではないかとよく質問される。結論から言うと、これは安倍晋三元首相のフェイクニュースである。
2014年農林水産省、JA農協、自民党農林族によって減反政策の見直しが行われた。国から都道府県等を通じて生産者まで通知してきたコメの生産目標数量を廃止するだけで、減反政策のコアである補助金は逆に拡充した。
この政策変更にほとんど関与しなかったのに、安倍首相は政権浮揚のため「40年間誰もできなかった減反廃止を行う」と大見栄を張った。この時、減反を見直した自民党農林族幹部も、大臣をはじめ農林水産省の担当者も、「減反の廃止ではない」と明白に否定していた。面白いことに、2007年に安倍内閣は全く同じ見直しをして撤回していたのである。しかし、2007年当時だれも減反廃止とは言わなかった。廃止ではなかったからだ。
減反廃止が本当なら、米価は暴落するはずだ。農業界は蜂の巣をつついたような騒ぎになり、永田町はムシロバタで埋め尽くされる。もちろん、そんなことは起きなかった。
後に安倍首相は、私の論文を基に国会の予算委員会で減反廃止を否定する農林族議員との主張の違いを指摘され、「違いはない。私はわかりやすく言っただけ」と発言を撤回した。これは、NHKテレビで中継された。
本当にコメ不足は解消されるのか
農林水産大臣は、8月2日の記者会見で、「収穫の早い産地は、今月には新米が出回り始め、9月からは主産地の出荷も始まります。消費者の皆様方におかれましては、安心していただき、普段どおりにお米をお買い求めいただきたいと思います」と述べている。9月になれば新米(2024産米)が供給されるので、コメ不足は解消されるという報道も見られる。
しかし、そうだろうか?
まず、需給のファクツを押さえておこう。基準年を1昨年の9月から昨年の8月までとして、これに対する生産と需要の変化を見よう。
既に述べたように、昨年の9月から今年の8月までの期間の供給主体となる作年(2023年)産のコメは減反により前年(2022年)産より9万トン少なかった。これに猛暑による精米歩留まりの減少が20万トンであったとすると、供給量は前年に対し29万トン少なくなる。消費について農林水産省は、インバウンド等で11万トン増加しているとしている。
以上から、コメの不足量は40万トンとなる(これは農林水産省が公表している民間在庫量の減少41万トンと符合する)。これを今年産の早期米等で早食いすれば、40万トンの不足は次の期(今年の9月から来年の8月まで)に持ち越されることになる。
田植え機を利用して田植え中写真=iStock.com/SAND555※写真はイメージです
再来年も52万トン不足する
では、次の期のコメの需給はどうなのだろうか?
この期間の供給の主体となる今年産の供給量もコメの需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反しているとすれば、基準年に供給された2022年産(670万トン)に比べ20万トン少なくなるはずである。しかし、根拠は明らかではないが、農林水産省は669万トンになるという見通しを公表している。農林水産省の見通しが正しいとすれば、基準年に比べ供給量は1万トンの減少となる。
インバウンドの需要が今年と同様であるとしても、基準年比では11万トン増である。つまり今年産米が農林水産省の見通し通りだったとしても、基準年より12万トンの不足(減反を予定通り行っているとすれば31万トンの不足)がある。これに今年産米を先(早)食いした40万トンの不足が加わる。減反を考慮しなくても次の期の不足は52万トンとなる。
猛暑の影響でさらに不足が拡大する
さらに、今年産のコメが猛暑の影響を受けるかどうかは、これからわかる。胴割れ米等が起きるのは穂が出てから10日間に高温にさらされていたかどうかである。今年も昨年並みの高温だった。また、台風の影響により、イネの倒伏や日照不足による不十分な登熟が起きる可能性がある。今年も昨年と同様の被害を受けているとすれば、不足は72万トンとなる。一等米の比率は年々低下しているので、これでは済まないかもしれない。
この不足分を来年産から早食いするとすれば、その次の期に不足は持ち越される。永遠に不足が続く。
間もなく収穫の時期を迎える美しい田んぼが広がる風景写真=iStock.com/undefined undefined※写真はイメージです
コメ不足を解消するには「減反廃止」しかない
減反を止めれば、この問題は解消できる。
1700万トン生産して1000万トン輸出していれば、国内の需給が増減したとしても輸出量を調整すればよいだけである。国内でコメ不足は起きない。平成のコメ騒動は冷夏が原因と言われているが、根本的な原因は減反である。
当時の潜在的な生産量1400万トンを減反で1000万トンに減らしていた。それが不作で783万トンに減少した。しかし、通常年に1400万トン生産して400万トン輸出していれば、冷夏でも1000万トンの生産・消費は可能だった。
コメの輸出が増えている。今ではカリフォルニア米との価格差はほとんどなくなり、日本米の方が安くなる時も生じている。減反を廃止すれば価格はさらに低下し、輸出は増える。国内の消費以上に生産して輸出すれば、その作物の食料自給率は100%を超える。
上記の場合、コメの自給率は243%となり、全体の食料自給率は60%以上に上がる。最も効果的な食料安全保障政策は、減反廃止によるコメの増産と輸出である。平時にはコメを輸出し、危機時には輸出に回していたコメを食べるのである。平時の輸出は、財政負担の必要がない無償の備蓄の役割を果たす。
しかし、減反は廃止できない。農林水産省が目を向けるのはJA農協であって国民ではないからだ。コメ不足を解消する最善の政策は農林水産省の廃止ではないか。
空っぽのコメ売り場。編集部員もコメを求めて、スーパーを何軒も回ったが購入できなかった(2024年8月25日、埼玉県)プレジデントオンライン編集部撮影空っぽのコメ売り場。編集部員もコメを求めて、スーパーを何軒も回ったが購入できなかった(2024年8月25日、埼玉県)
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9月4日 MicrosoftStartニュース アサ芸プラス「「コメがない!大騒動」で生産者が憤る「コメ不足は大阪・吉村知事とテレビと買い占め転売ヤーのせい」
「コメがない!大騒動」で生産者が憤る「コメ不足は大阪・吉村知事とテレビと買い占め転売ヤーのせい」
© アサ芸プラス
8月31日に本サイトで報じた「コメ不足」をめぐる大阪府・吉村洋文知事と坂本哲志農水相の「場外乱闘」が、まだ続いている。吉村知事は9月2日、府庁で記者団の取材に対し、
「備蓄米を放出すると値段が下がるのでいけないと言うけれど、いやいや、すでに上がっている。これからもさらに上がる」
コメ価格の急騰を懸念し、政府に備蓄米を放出するよう再要望した。
これに対し、坂本氏は9月3日に、これまた再度の備蓄米放出拒否宣言。
「コメの取引価格は民間の取引環境の中で決まっていくものであり、政府として直接コメントするのは差し控える」
この場外バトル、勝手に裁定すると、坂本大臣の発言に分がある。というのも前回の記事が出た後、次のような情報提供があったからだ。
「北関東ではコメ不足が起きていなかったため、コメの購入に数量制限など設けていなかったのですが、新学期を前に北関東でもコメが消えた。JA幹部に詳しく聞いたら、同一集団が県内のコメを一斉に買い占めたようなのです」
店頭から消えたコメは、意外なところで見つかった。地元で売られていたのと同パッケージのものが、フリマサイトで市場価格の2倍の値で売られていたのだ。吉村知事の発言を取り上げたテレビ報道が「コメの飢餓感」を煽ってから、北関東でもコメの買い占め団、転売ヤーが登場したというのだ。
そのフリマサイトを確認すると、確かに栃木産や茨城産のコメが5キロ5000円以上の値をつけている。岩手産の新米15キロに2万円をふっかけているアカウントもあった。大阪とは細かい状況、地域の違いはあれど、吉村知事によるとんだ「マッチポンプ」とでも言うべき様相なのである。
新米といえど、脱穀から時間が経てば、どんどん味は落ちていく。フリマサイトで強気な値段をふっかけていたアカウントは、時間の経過ともに売値を下げている。ここで国の備蓄米を市場にドーンと放出すれば、大迷惑な買い占め集団、転売ヤーはさぞ大損することだろう。別の北関東の生産者は、こうも説明する。
「新米が高い、高いと言いますが、消費者はコメの等級を見ていない。2024年産の新米と2023年産では、等級が違うんです。というのも、昨年は猛暑のせいで全国のコメは軒並み、等級が落ちてしまった。毎年コメ作りの苦労、手間は同じなのに、猛暑だった昨年はコメの等級とともに、収入も暴落したのです」
これでは日本の「亡国減反政策」に応じず、真面目にコメを作ってきた生産者ほどやりきれない。今年は昨年の猛暑を受けて品種を変えるなど、試行錯誤があったという。8月上旬から続く品薄感の中、等級の下がったコメを買い叩いた卸に、積極的にコメを売る義理もなかろう。
日頃から生鮮食料品の値段の安さをうたっている東京都内や大阪府内のスーパーマーケットは、生産者泣かせの卸から仕入れているから、天候不順や南海トラフ緊急情報などイレギュラーなことが起きれば、コメや野菜の納入が真っ先に止まる。
安さには代償が伴う。もし消費者がコメにコスパと確実性、どちらも求めるなら米穀専門店を利用するか、「ふるさと納税」の返礼品にコメを検討するのも一手だろう。
(那須優子)
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