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・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
日本列島は、中国大陸や朝鮮半島ではなくインドネシア群島に似ている。
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2024年8月25日7:00 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「死者3.6万人超!日本人が知らない「あの巨大噴火」の真実…陸地の3分の2が吹き飛ぶ「脅威的破壊力」を生んだ条件が「日本とそっくり」
1883年の8月26日の正午過ぎ、インドネシアのクラカタウ火山で史上最大規模ともいえる大噴火が発生し、2日後の28日まで延々と続きました。
【現地画像】クラカタウのその後…現れては消える島。数年前にも姿が激変していた
深刻な被害の模様は、19世紀半ばに敷設された海底ケーブルによってすぐさま世界に伝えられました。これによって世界の人々は、身近に起こる冷夏といった異常気象の原因を知ることができたのです。
また、クラカタウの噴火の日に見られた異様な空模様は、芸術家にもインスピレーションを与えました。ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの名画『叫び』は、背景の空が血を吐いたような赤色で不気味に塗りたくられていますが、この表現は、クラカタウの噴火による真っ赤な夕焼けに影響されたともいわれてます。
◇
この1883年のクラカタウ噴火が起こったインドネシアのスマトラ島からジャワ島に沿って、きれいな弧を描いて延びているスンダ海溝(「ジャワ海溝」とも)では、年間数センチメートルずつ、北向きに沈み込んでいるオーストラリアプレートが、時として大地震や巨大噴火を引き起こします。
じつは、インド洋の、特にその北東側に面する国々でしばしば起こっているこの火山噴火と地震、そして津波は、日本列島で、私たちがしばしば経験する自然現象や災害と発生メカニズムが共通しています。スンダ海溝でのプレート沈み込みは、ちょうど日本列島の東方海域、千島・カムチャツカ海溝や日本海溝に太平洋プレートが沈み込むことによって、日本列島が地震や火山噴火に襲われる状況と酷似しています。
折も折、8月8日には日向灘で地震が発生し、南海トラフ巨大地震臨時情報が初めて発表されました。8月26日は本年より「火山防災の日」に制定されており(奇しくもクラカタウ火山噴火と同じ日です)、9月1日には「防災の日」もやって来ます。
自然災害にあらためて注目が集まるいま、1883年のクラカタウ火山噴火に焦点を当てて見てみましょう。日本のこれからの防災にも、ヒントを与えてくれるかもしれません。
*本記事は『インド洋 日本の気候を支配する謎の大海』の内容を再構成したものです。
固唾を呑んで注視した「巨大噴火」
スンダ海溝とインドネシア列島における主要島弧:赤い三角が島弧火山の位置。スンダ海溝にはオーストラリアプレートが沈み込んでおり、その動きを矢印で示す
1883年に起こったクラカタウ火山(「クラカトア火山」ともよぶ)の噴火は、火山活動の規模だけからすれば、ジャワ島の東、ロンボク島にあったサマラス火山の1257年に起きた噴火や、ロンボク島のさらに東にあるスンバワ島のタンボラ火山で起きた1815年の噴火をしのぐものではないかもしれません。しかし、はるかに強い印象を世界の人々に与え、長く語り継がれる噴火となっています。
その理由として、二つのことが考えられます。
クラカタウ火山(図「スンダ海溝とインドネシア列島における主要島弧」参照)が、オランダ領東インドの政治的中心地であった大都市バタヴィア(現在のジャカルタ)に近かったという地理的な要因が一つ。つまり、目撃者や被害者が圧倒的に多かったこと。
そしてもう一つ、当時の国際社会が、産業革命にともなう科学技術の進展により、急速な近代化のさなかにあったという時期的な要因も無視できません。
たとえば、19世紀中頃は、電信技術の革新、すなわち海底ケーブル通信の黎明期でした。インドネシア周辺で最初の海底ケーブルが、ジャワ島とシンガポールおよびオーストラリアとのあいだに敷設されたばかりで、これと陸上の通信ネットワークがつながり、火山噴火とその後の悲惨な状況は、わずか1~2日のうちに西欧諸国やアメリカへと配信されました。
地球の反対側に位置する先進諸国が、この巨大噴火の成りゆきを、固唾(かたず)を呑んで注視したのです。70年足らずの時間差ではありますが、タンボラ火山のときとはまったく違う時代状況でした。
4回に及んだ激烈な噴火
グッタペルカの木 photo by gettyimages
ところで、初期の海底ケーブルは防水技術が未熟で、すぐに断線する不良品でした。そんなとき、優れた防水ゴムとして天然樹脂「グッタペルカ(ガタパーチャともいう)」が発見され、このゴムで被覆した海底ケーブルの良品が急速に普及しました。
グッタペルカの木は熱帯産の常緑高木で、その主要な原産地は、他ならぬインドネシアです。
グッタペルカで被覆された海底ケーブルを通じて世界を駆けめぐった最初の大事件がクラカタウ火山噴火であったというのは、なんとも皮肉なめぐり合わせでした。
話をクラカタウ火山に戻しましょう。
クラカタウ火山は、スマトラ島とジャワ島に挟まれたスンダ海峡に点在する、小規模な島々の集合体です。過去数万年、あるいはもっと以前から、おだやかな火山活動が継続して火山島が成長し、やがて大爆発を起こして島が陥没、そのあとにふたたび島が成長、というように、成長と破壊のサイクルを繰り返してきたと考えられています。
1883年5月10日から群発地震が始まり、5月20日に、群島のなかで最大面積のクラカタウ島(当時の面積は約39平方キロメートルで、伊豆大島の5分の2程度の大きさ)で、最初の大噴火が起こりました。噴煙が11キロメートルも立ち上ったと記録されています。しかし、これはまだ、序の口にすぎませんでした。小規模な噴火がしばらく続いたあと、同年8月26~28日にかけて、歴史的な超巨大噴火の時がやって来ます。
とりわけ激烈な噴火が、8月27日の現地時刻5時30分、6時44分、10時2分、および10時52分の4回にわたって起こり、その噴煙は最大36キロメートル上空の成層圏にまで上昇しました。
噴火により「島の形そのもの」が変わってしまった
たび重なる猛烈な噴火によって、クラカタウ島の形状は一変します。陸地部分は南側の3分の1を残すのみで飛散・陥没し、海底には巨大なカルデラが形成されました。
この噴火は海面付近で起こったために、吹き飛んだ山体や流れ出した溶岩が、そのまま海に落下しました。その結果、海面が大きく上下し、高さ30メートルに達する巨大津波が発生するという悲劇を生みました。津波はスマトラ島やジャワ島の沿岸を襲い、165ヵ村が破壊され、噴火と津波による犠牲者は3万6400名を超えたといいます(もっと多かったという説もあります)。
そして、クラカタウ火山の名称をいやが上にも高めたのが、その凄まじい噴火音でした。
◇
このように、1883年の噴火は、人々の生活にも、また島の地形や環境にも大きな影響を与えました。そのすさまじさは、噴火時の「音」だったと言います。続いては、その噴火音について見てみましょう。
>>>続きはこちら>>>
インド洋――日本の気候を支配する謎の大海
インド洋を抜きにして、地球を語ることはできない! 大陸移動から気候変動、生命の起源まで――。世界第3位の巨海から、この惑星のダイナミズムが見えてくる!
蒲生 俊敬(東京大学名誉教授)
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8月25日7:00 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「死者3.6万人超!日本人が知らない「あの巨大噴火」の真実…陸地の3分の2が吹き飛ぶ「脅威的破壊力」を生んだ条件が「日本とそっくり」
蒲生 俊敬 東京大学名誉教授
1883年の8月26日の正午過ぎ、インドネシアのクラカタウ火山で史上最大規模ともいえる大噴火が発生し、2日後の28日まで延々と続きました。
深刻な被害の模様は、19世紀半ばに敷設された海底ケーブルによってすぐさま世界に伝えられました。これによって世界の人々は、身近に起こる冷夏といった異常気象の原因を知ることができたのです。
また、クラカタウの噴火の日に見られた異様な空模様は、芸術家にもインスピレーションを与えました。ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの名画『叫び』は、背景の空が血を吐いたような赤色で不気味に塗りたくられていますが、この表現は、クラカタウの噴火による真っ赤な夕焼けに影響されたともいわれてます。
◇
この1883年のクラカタウ噴火が起こったインドネシアのスマトラ島からジャワ島に沿って、きれいな弧を描いて延びているスンダ海溝(「ジャワ海溝」とも)では、年間数センチメートルずつ、北向きに沈み込んでいるオーストラリアプレートが、時として大地震や巨大噴火を引き起こします。
じつは、インド洋の、特にその北東側に面する国々でしばしば起こっているこの火山噴火と地震、そして津波は、日本列島で、私たちがしばしば経験する自然現象や災害と発生メカニズムが共通しています。スンダ海溝でのプレート沈み込みは、ちょうど日本列島の東方海域、千島・カムチャツカ海溝や日本海溝に太平洋プレートが沈み込むことによって、日本列島が地震や火山噴火に襲われる状況と酷似しています。
折も折、8月8日には日向灘で地震が発生し、南海トラフ巨大地震臨時情報が初めて発表されました。8月26日は本年より「火山防災の日」に制定されており(奇しくもクラカタウ火山噴火と同じ日です)、9月1日には「防災の日」もやって来ます。
自然災害にあらためて注目が集まるいま、1883年のクラカタウ火山噴火に焦点を当てて見てみましょう。日本のこれからの防災にも、ヒントを与えてくれるかもしれません。
【書影】インド洋 日本の気候を支配する謎の大海
*本記事は『インド洋 日本の気候を支配する謎の大海』の内容を再構成したものです。
固唾を呑んで注視した「巨大噴火」
1883年に起こったクラカタウ火山(「クラカトア火山」ともよぶ)の噴火は、火山活動の規模だけからすれば、ジャワ島の東、ロンボク島にあったサマラス火山の1257年に起きた噴火や、ロンボク島のさらに東にあるスンバワ島のタンボラ火山で起きた1815年の噴火をしのぐものではないかもしれません。しかし、はるかに強い印象を世界の人々に与え、長く語り継がれる噴火となっています。
その理由として、二つのことが考えられます。
クラカタウ火山(図「スンダ海溝とインドネシア列島における主要島弧」参照)が、オランダ領東インドの政治的中心地であった大都市バタヴィア(現在のジャカルタ)に近かったという地理的な要因が一つ。つまり、目撃者や被害者が圧倒的に多かったこと。
【図】スンダ海溝とインドネシア列島における主要島弧スンダ海溝とインドネシア列島における主要島弧:赤い三角が島弧火山の位置。スンダ海溝にはオーストラリアプレートが沈み込んでおり、その動きを矢印で示す
そしてもう一つ、当時の国際社会が、産業革命にともなう科学技術の進展により、急速な近代化のさなかにあったという時期的な要因も無視できません。
たとえば、19世紀中頃は、電信技術の革新、すなわち海底ケーブル通信の黎明期でした。インドネシア周辺で最初の海底ケーブルが、ジャワ島とシンガポールおよびオーストラリアとのあいだに敷設されたばかりで、これと陸上の通信ネットワークがつながり、火山噴火とその後の悲惨な状況は、わずか1〜2日のうちに西欧諸国やアメリカへと配信されました。
地球の反対側に位置する先進諸国が、この巨大噴火の成りゆきを、固唾(かたず)を呑んで注視したのです。70年足らずの時間差ではありますが、タンボラ火山のときとはまったく違う時代状況でした。
4回に及んだ激烈な噴火
ところで、初期の海底ケーブルは防水技術が未熟で、すぐに断線する不良品でした。そんなとき、優れた防水ゴムとして天然樹脂「グッタペルカ(ガタパーチャともいう)」が発見され、このゴムで被覆した海底ケーブルの良品が急速に普及しました。
グッタペルカの木は熱帯産の常緑高木で、その主要な原産地は、他ならぬインドネシアです。
グッタペルカで被覆された海底ケーブルを通じて世界を駆けめぐった最初の大事件がクラカタウ火山噴火であったというのは、なんとも皮肉なめぐり合わせでした。
【写真】グッタペルカの木グッタペルカの木 photo by gettyimages
話をクラカタウ火山に戻しましょう。
クラカタウ火山は、スマトラ島とジャワ島に挟まれたスンダ海峡に点在する、小規模な島々の集合体です。過去数万年、あるいはもっと以前から、おだやかな火山活動が継続して火山島が成長し、やがて大爆発を起こして島が陥没、そのあとにふたたび島が成長、というように、成長と破壊のサイクルを繰り返してきたと考えられています。
1883年5月10日から群発地震が始まり、5月20日に、群島のなかで最大面積のクラカタウ島(当時の面積は約39平方キロメートルで、伊豆大島の5分の2程度の大きさ)で、最初の大噴火が起こりました。噴煙が11キロメートルも立ち上ったと記録されています。しかし、これはまだ、序の口にすぎませんでした。小規模な噴火がしばらく続いたあと、同年8月26〜28日にかけて、歴史的な超巨大噴火の時がやって来ます。
とりわけ激烈な噴火が、8月27日の現地時刻5時30分、6時44分、10時2分、および10時52分の4回にわたって起こり、その噴煙は最大36キロメートル上空の成層圏にまで上昇しました。
噴火により「島の形そのもの」が変わってしまった
たび重なる猛烈な噴火によって、クラカタウ島の形状は一変します。陸地部分は南側の3分の1を残すのみで飛散・陥没し、海底には巨大なカルデラが形成されました。
この噴火は海面付近で起こったために、吹き飛んだ山体や流れ出した溶岩が、そのまま海に落下しました。その結果、海面が大きく上下し、高さ30メートルに達する巨大津波が発生するという悲劇を生みました。津波はスマトラ島やジャワ島の沿岸を襲い、165ヵ村が破壊され、噴火と津波による犠牲者は3万6400名を超えたといいます(もっと多かったという説もあります)。
そして、クラカタウ火山の名称をいやが上にも高めたのが、その凄まじい噴火音でした。
◇
このように、1883年の噴火は、人々の生活にも、また島の地形や環境にも大きな影響を与えました。そのすさまじさは、噴火時の「音」だったと言います。続いては、その噴火音について見てみましょう。
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インド洋——日本の気候を支配する謎の大海
【書影】インド洋 日本の気候を支配する謎の大海
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インド洋を抜きにして、地球を語ることはできない! 大陸移動から気候変動、生命の起源まで——。世界第3位の巨海から、この惑星のダイナミズムが見えてくる!
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8月25日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「インド洋の反対側まで届いた「クラカタウ火山」の噴火音がスゴすぎる…「北海道で起きた噴火が沖縄で聞こえる!」より、まだ遠い…
蒲生 俊敬東京大学名誉教授
1883年の8月26日に発生した、インドネシアのクラカタウ火山での大噴火。前回の記事では、その模様のあらましを解説しました。死者が3万6000人を超え、クラカタウ島の地形までが変わってしまうという大きな噴火でしたが、その規模を語るのはそればかりではありません。
【書影】インド洋 日本の気候を支配する謎の大海
*本記事は『インド洋 日本の気候を支配する謎の大海』の内容を再構成したものです。
インド洋中に轟きわたった「世界最大の音」の正体
なんと4800キロメートルも離れたロドリゲス島(当時はイギリス領)まで噴火音が届いたというから驚きです。そのときのロドリゲス島の警察本部長が几帳面で職務に熱心な人だったとみられ、勤務日誌に「夜間(8月26日から27日にかけて)数回、遠くで重砲が 轟(とどろ)くような音が東の方向から聞こえる。音は3〜4時間おきに27日の午後3時になるまで続いた」と、貴重な記録を残してくれたのです。
このときのクラカタウ火山の噴火音は、歴史時代を通じて、世界最大の自然音だったかもしれません。空中を伝わった自然音の到達距離として、4800キロメートルは世界最長記録とされています。
ロドリゲス島のほかにも、さまざまな場所で、噴火の轟音がキャッチされました。それらをまとめたのが、図「1883年のクラカタウ火山の噴火音の到達範囲」です。ディエゴ・ガルシア島(英領チャゴス諸島)、スリランカ、オーストラリア、フィリピンなど、インド洋から西太平洋沿岸にいたるまで多数の遠隔地が含まれています。
【図】1883年クラカタウ火山の噴火音の到達範囲1883年のクラカタウ火山の噴火音の到達範囲
クラカタウ火山から、約150キロメートル離れたバタヴィアで聞こえた噴火音の大きさ(音圧)は、気圧計の記録(噴火による衝撃波のため、瞬間的に気圧が上昇した)から約170デシベルと推定されています。この数字だけではピンときませんが、電車の通るガード下で100デシベル、飛行機の爆音がその10倍の120デシベルで、170デシベルはそのさらに数百倍の音に相当します。まさに想像を絶する爆音です。
クラカタウ火山からわずか数十キロメートルのスンダ海峡を航行中だったイギリス船「ノラム・キャッスル」号は、なんとも悲惨でした。凄まじい激烈音に襲われた乗船者のなんと半数が、鼓膜を破られてしまったというのです。
島が子どもを「産んだ」!?
その後、クラカタウ火山は、数十年ほど鳴りをひそめました。
しかし、1927年になると海底で噴火が始まり、翌1928年にアナック・クラカタウとよばれる新島が、かつてのクラカタウ島と同じあたりに顔を出しました。「アナック」とは、マレー語で「子ども」を意味します。
アナック・クラカタウ島は、毎年数メートルずつ成長を続け、標高が338メートルとなった2018年12月22日、ついに大規模な噴火を起こしました。山体は大きく崩れて3分の1を残すのみの標高110メートルになり、発生した津波(最大5メートル)によって400名以上が犠牲になりました。
【写真】アナック・クラカタウアナック・クラカタウ(2019年頃)。2018年の噴火により生じたカルデラが、山体崩壊後の頂に残る photo by gettyimages
その後も、噴火から目の離せない状態が続いています。
津波が発生する2つのメカニズム
クラカタウ火山噴火では、大規模な山体崩壊が海面を大きく揺さぶり、巨大な津波が発生しました。その前のタンボラ火山噴火も、中程度の規模の津波をともなっています。サマラス火山についてはよくわかっていませんが、大量の噴出物が海へ降下し、津波を引き起こした可能性は高いでしょう。
このような火山噴火に起因する津波のほかに、地震によって発生する津波もあります。むしろ、こちらのほうがよく知られた現象かもしれません。
オーストラリアプレートが沈み込んでいるスンダ海溝は、日本列島の東側に連なる海溝群と同様、“地震の巣”でもあります。プレート沈み込み帯では、沈み込むプレートと陸側のプレートとのあいだに摩擦が生じ、あちこちにひずみが蓄積されるためです。ひずみが限界に達し、岩石が破壊されると地震が発生します。
その結果、海底が急激に動き、それが海底上部の海水に伝わるのが地震津波です。日本近海の海溝でも、まったく同じことがときどき起こります。
次の図(「火山噴火による津波と、地震による津波の発生メカニズム」)は、火山噴火によって生じる津波と、地震によって生じる津波について、それぞれの発生メカニズムを模式的に示したものです。インド洋北東部、特にインドネシアのスンダ列島周辺は、この2通りの津波に繰り返し襲われてきました。
【図】津波の発生メカニズムを模式図火山噴火による津波と、地震による津波の発生メカニズム:aは火山噴火による津波、bはプレート沈み込みによる津波
スンダ海溝とスンダ列島に挟まれた海域では、1900年以降だけに限っても、数年〜数十年ごとに大規模な地震が繰り返し起こっています。大きな津波をともなうこともあり、その最たるものが、2004年に起こったスマトラ島沖地震とインド洋大津波でした。
スマトラ島沖地震とインド洋大津波
2004年12月26日、マグニチュード9.1という巨大地震が、スマトラ島の西方海域の海底下、約10キロメートルの深さで発生しました。
マグニチュード9.1といえば、めったに起こらない超巨大地震です。全世界で1900年以降に起こったマグニチュード9.0以上の地震を表に示しましたが、2011年の東北地方太平洋沖地震を含め、わずか5例しかありません。
【表】1900年以降に発生したマグニチュード(M)9.0以上の超巨大地震表 1900年以降に発生したマグニチュード(M)9.0以上の超巨大地震(『理科年表2020』による)
スマトラ島沖地震では高さ10メートルの大津波が発生
2004年のスマトラ島沖地震では、震源域から北方へ1000キロメートル以上という驚異的な長さの破壊帯(逆断層)が延びていき、同時に発生した高さ10メートルに達する大津波が、インド洋の四方八方へと拡がりました。
津波は、陸に近づくにつれて、地形的な影響で高さを増していきます。震源に近いスマトラ島北部の西海岸には、15〜35メートルの津波が繰り返し来襲し、島の北端にあるバンダアチェ市では、人口25万人のうち約3万人が津波の犠牲になりました。
アンダマン海に面するタイのリゾート地、プーケット島も5〜10メートルの津波に襲われ、死者5000名以上と報じられました。
【写真】2004年の地震での被害2004年の地震による甚大な被害のようす photo by gettyimages
ミャンマーやマレーシアでも、犠牲者は100名を超えています。この津波はさらに、インド洋の南方や西方へもジェット機なみのスピードで伝わり、インド洋全域をほぼ同心円状に嘗(な)め尽くしました。
インドとスリランカには約2時間で襲来し、それぞれ約1万7000名と約3万5000名が死亡しています。モルディブ(108名)、イエメン(2名)、ソマリア(289名)、ケニア(1名)、タンザニア(13名)などの国々にも4〜8時間で到達し、( )内に示した人的被害(死者数)の他にも、さまざまな惨状をもたらしました。
2004年のスマトラ島沖地震をきっかけに、インドネシア島弧-海溝系における火山や地震活動が活発化したという見方もあり、この海域からますます目の離せない状況が続きそうです。
場所こそ違え、大規模な地震と津波、あるいは火山噴火は、日本列島でも今後、必ず起こる自然現象であり、自然災害です。決して、はるか対岸の他人事ではありません。いわゆる「3・11」、2011年の東北地方太平洋沖地震は、いまなお記憶に新しいところです。
火山噴火については、7300年前(縄文時代)の鬼界カルデラ噴火の後、日本列島は幸運にも、破局的な巨大噴火を免れてここまで来ました。しかし、いつかまた必ず巨大噴火が起こることは、歴史が証明しています。
こと自然災害に関して、日本列島は「想定外」のない国土です。まるでふたごのようなインド洋北東部で生じる自然現象にも学びながら、つねに備えを怠らないようにしましょう。
インド洋——日本の気候を支配する謎の大海
【書影】インド洋 日本の気候を支配する謎の大海
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インド洋を抜きにして、地球を語ることはできない! 大陸移動から気候変動、生命の起源まで——。世界第3位の巨海から、この惑星のダイナミズムが見えてくる!
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🍞13〗ー2ー令和6年「米不足」の理由は食糧安全保障を軽視する「日本の農政」の責任。~No.52
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関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
現代の超難関校出の高学歴な政治的エリートと進歩的インテリ達には、食糧安全保障が理解できない。
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2024年8月24日 産経新聞「<浪速風>令和の米騒動? 想像以上の品薄ぶりに驚き
1日も早い新米の安定供給が待たれる
品薄だと聞いてはいたが、本当にないことに驚き、慌てた。「平成の米騒動」の令和版かと騒ぎになっているコメのことだ。
▶わが家の在庫を確認したうえで、ふるさと納税でお気に入りの産地の銘柄米を返礼品に選び寄付したのは今月上旬。だが、想定していたよりも発送は遅れ、わが家の備蓄が尽きかけたことに慌てた家人が近所のスーパーを回ったが、どこもかしこも棚は空っぽ。やむなく発芽玄米を購入した翌日、待望の白米が届いた。
▶品薄の原因は昨夏の猛暑により品質が低下して市場に出回る量が減った一方、インバウンドの回復などにより外食産業の需要が急拡大したことだという。総務省が発表した7月の全国消費者物価指数によると、コメの価格は前年同月比17・2%と20年ぶりの大幅上昇となった。新米の流通が待ち遠しいが、価格も落ち着いてくれるだろうか。
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8月24日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「「米不足」本当の理由がわかった…!食糧安全保障を軽視する「日本の農政」の責任
朝香 豊(経済評論家)
作況指数「101」で米不足?
現在、米不足が大きな問題になっている。
この問題を考えていくと、今年だけの一過性の話として済ますことができるものだとは思えず、今後もっと厳しい米不足が起こりかねないことを心配すべきではないかと思う。
© 現代ビジネス
今回の米不足の原因として一般的にメディアで説明されているのは、1.昨年の猛暑と雨不足による不作、2.おにぎりブームとインバウンドなどによる需要増、3.南海トラフ地震臨時情報の発表による買いだめ行動といったものだ。
まずはこれらの要因一つ一つが、今回の米不足にどの程度関係しているのかを具体的に見ていこう。
まず、昨年は猛暑と雨不足で不作だったという話からいくが、これは本当なのかと疑うべきだ。
というのは、昨年の米の作況指数は、平年を100とした場合に101だったからだ。平年よりも1%ほど多い収穫量ということになるのであり、昨年は「不作」といえるほどの話では断じてなかったのが実際である。
ちなみに平成5年(1993年)に起こったいわゆる「平成の米騒動」の時には、北海道の作況指数が40、青森が28、岩手が30など、東北・北海道が壊滅的な打撃を被っていた。日本全国の作況指数で見ても74であり、まさに大不作であったことがわかる。
これと比べた場合に、作況指数101の去年の収穫が「不作」でなかったのは明らかだ。
去年はお米の品質は全体的にはそれほどよくなくて、精米の過程で削らなければならない部分が多かったということも指摘されているが、それはおそらく決定的なダメージをもたらすものではなかったと見ていいのではないかと思う。
今年の6月末時点の米需要に対する在庫の割合は22.2%で、2008年の18.8%や2011年の22.0%を上回っていたからだ。
精米の過程で削らなければならない部分が、昨年収穫分については米不足を引き起こすほど決定的に多いのであれば、在庫水準も2008年のレベルをさらに下回っているに違いないからだ。
とにかく作況指数101でも米不足が生じているということの重みを、わたしたちはしっかり受け止めるべきではないだろうか。
なお数十年に1回は平成5年のように作況指数が80を切るようなこともあり、終戦の年である昭和20年(1945年)には、作況指数は67まで落ち込んだ。平成15年の作況指数も90まで落ち込んでいる。
直近20年だけでみても、作況指数が98以下になったのは、平成16年、平成18年、平成21年、平成22年、平成30年と5回もある。
今年のこの米不足の騒ぎからすると、今後はちょっとした不作となるだけで、米不足のパニックが繰り返されることになりかねないことがわかる。
インバウンド、南海トラフ地震…なのか
次にインバウンド需要などによって米の消費が増えたとされている点について見てみよう。インバウンド需要による米消費量は、前年と比べ約3.1万トン増えたと推計されている。
現在の日本の年間の米の消費量は700万トンほどだから、3.1万トンというのは、実は0.4%程度のことにすぎない。これが原因で米不足が発生したといえるほどのことでは断じてないのは明らかだ。
なお、このインバウンドによる需要増におにぎりブームなどによる需要増も加わって、本年度は前年度より11トンほど需要量が増えたとされている。この11トンの伸びにしても、需要量の増加はわずかに1.6%にすぎないのであり、決してそれほど大きなものではないのだ。
関連するビデオ: 【解説】「専用米」の生産もコメ不足が深刻 そのウラに天候、外食産業の需要増、南海トラフ地震の影響 (読売テレビニュース)
この程度の需要の伸びで米不足が社会問題化するようになっている状態こそ、今の日本の米の生産のあり方の大問題を反映しているというべきではないか。
もう一つの要因としての、南海トラフ地震臨時情報は、短期的とはいえ、確かにかなり大きな影響をもたらしたとはいえるだろう。現実には宮崎での地震のあと1週間で巨大地震が起こる確率は、地震前の0.1 %程度が、地震後に0.5%程度に高まったに過ぎなかったようだ。つまり99.5%は影響ないと推測されていた。にもかかわらず、南海トラフ地震臨時情報が出たことで、首相が外遊を中止する、海水浴場が遊泳禁止に動く、特急列車を運行停止にするといった過剰反応が相次いで報道され、国民の中の不安を加速させた。
この不安に煽られた買いだめ行動によって米が品薄になり、米の在庫がなくなったことに不安を覚えて買いだめに走る人が増え、コメを見つけたら購入しようとする動きが今でも続いていると見るべきだろう。
実際南海トラフ地震臨時情報が出てから、スーパーの実感としては米の販売量は例年の1.5倍程度になっているとの報道もあった。
結果として例年並みの供給ではこの需要増加に追いつかず、「米不足」が継続しているということなのだろう。
世界的穀物不足の中での減反政策の愚
しかしながら、この程度のことで米不足が意識されるあり方のほうが、実はおかしいんじゃないかという問題提起をしたい。
この問題は根本的には、日本政府が長年にわたって進めてきた減反政策の影響が非常に大きいと見るべきではないか。
しかも減反政策は、もともと極めて望ましくない結果を生む政策だとも言える。
減反政策とは、多額の税金を使って減反奨励金を支払い、米の生産・供給を減らすことで、需要と供給の関係から米の価格を引き上げ、農家を経済的に支えようというものだが、この政策のバカバカしさをよく考えてもらいたい。
政府が多額の税金を投入して、国民の米の購入価格を高め、国民の懐を痛める政策が、まともな政策なんだろうか。
しかもそうやって値段を高めにしておいた上で、外国からの米の輸入に高い関税を課すことによって輸入を防ぎ、そんな関税を課すことを認めさせるために、諸外国に他の点で譲歩するようなことまでやっているのだ。
さらに、それによって主食たる米の生産量を減らそうというのだから、経済安全保障の観点から見ても、実に由々しき事態だと言わざるをえない。
目下ウクライナとロシアの戦争によって、穀物の輸出が滞り、肥料の原料供給にも支障が出ている中で、世界規模で穀物不足が問題になっている。
世界最大の米輸出大国であるインドが2023年9月から米輸出を禁止したことで、他の米輸出国も国内の米価の上昇を懸念して、輸出に制限を加えるようになった。
なお、2018年度で減反政策は廃止になっていると思っている人もいるだろうが、実は廃止したのは毎年の減反の数量目標だけにすぎない。生産を減らせば補助金を出すという減反政策の中心部分は依然として残っていることは見逃すべきではないだろう。
農家に米を作りたいだけ作らせて、生産・供給が増えることで米の値段を引き下げて、余ったお米は海外にどんどん輸出する方向に、抜本的に政策転換すればいいのではないか。
日本の米には十分輸出競争力があるぞ
こういうと、日本の値段の高いお米が海外で売れるはずはないとの反論がやってくるかもしれない。
では、海外で短粒種であるジャポニカ米はどのくらいの値段で売られているのだろうか。
これをネットで検索していたら、シカゴ在住のよないつかささんという方が、「アメリカでも購入できる日本米(短粒種)を食べ比べてみました」というレポートを上げてくれていることに気づいた。このレポートは2023年3月のもので、レポートが出たのは1年ちょっと前のことだ。
このレポートに、カリフォルニア州サクラメントで収穫された「こしひかり」の値段として、2kgで21.47ドルという記載があった。これはアメリカのアマゾンの販売価格だ。
これを1ドル=145円で計算すると、3113円となる。1kgで1550円程度、5kgで7780円程度となるが、これは日本と比べてかなり高いと言えないだろうか。
今は日本国内は品薄で若干高めになっているが、普段であれば5kgで2500円、1kgあたり500円くらいで、大半のお米は買えるのではないか。テレビを見ていたら5kgで2000円を超えるとお米は買わないと言っている人もいたので、米不足が報じられるようになる前には、この程度で売られているお米もあったのだろう。
だから、関税で保護しなくても、日本のお米はすでに輸出できるくらいの競争力があると見ていいのではないか。
店頭価格ではなく、卸売価格になると、当然ながらもっと安い。今年の米の卸売価格は1万5865円になったと報じられていたが、この1万5865円というのは60kgの値段である。1kgあたりでは264円ということになる。
これまで日本は減反政策を進めてきたために、反収を増加させるような品種改良をほとんどやってこなかった。カリフォルニア米の場合、同じコシヒカリでも、今や反収は5割くらい多いはずだ。反収を増加させる品種改良を今後日本で進めていけば、それだけでもお米の生産量はかなり大きく増やすことができるはずだ。そしてそれは米価の低下にも当然繋がる。
そしてこの価格低下に対しては、生産量に応じた所得補償を政府が農家に支払うようにすれば、農家は増産による価格低下のダメージを吸収できるはずだ。
同じ農業保護を行うなら、減反ではなく、こういうやり方で農業保護をすればいいのではないか。
そして国内で余った米は海外にどんどん輸出するということを考えるべきではないか。
こうしたやり方に変えた場合、品種改良にしても味とか育てやすさとかだけでなく、収量の多さも重視されていくことになるだろう。
仮に米の生産性が上がって、これに伴い60キロ1万円まで値段が下がり、年間600万トンの輸出ができるようになるとしよう。この場合には輸出金額は1兆円になる。
こうしたやり方をやれば、国内の米の店頭価格も当然下がることになる。小売価格が4割近く下がったら、パンなどの小麦製品から米に乗り換える動きは強まることだろう。
食料安全保障が重要だというなら、こういう方向に農政を転換すべきではないだろうか。
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⚡19】─2─脱原発社会のウラで、日本メディアが報じない「環境NGO」のヤバすぎる実態。~No.100
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8月21日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「知ってはいけない、世界の《残酷な常識》「脱原発社会」のウラで、日本メディアが報じない「環境NGO」のヤバすぎる実態
川口 マーン 惠美 作家
福井 義高 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授
一般に、巨悪に立ち向かう弱小な組織といったイメージを持たれる「環境NGO」。だが、実際は強大な権力と潤沢な資金で世界の政治を動かしている恐ろしい組織なのである。
ドイツは石炭をベースに発展してきた国で、電力発電はその4割を石炭と褐炭に頼っている。そんなドイツで、「環境NGO」はドイツ全土に分布している。
登録されている会員はなんと1100万人。その巨大組織の圧力で、国は「脱原発」を決め、さらには「2038年の脱石炭」を決めている。恐ろしいことに今や「環境NGO」はドイツの世論形成を牛耳る一大勢力となっているのだ。
ドイツ在住のベストセラー作家・川口マーン惠美氏が青山学院大学教授・福井義高氏を相手に巨大組織「環境NGO」のドイツにおける実態を語る。
※本記事は、『優しい日本人が気づかない 残酷な世界の本音―移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで』より一部を抜粋編集したものです。
『優しい日本人が気づかない 残酷な世界の本音 - 移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで』
日本人が知らない、世界の《残酷な常識》連載はこちら
「国際環境NGO」とドイツ政府との癒着
川口マーン惠美(以下川口):緑の党のロベルト・ハーベックが大臣の経済・気候保護省では、2023年4月になって、NGOとの異常な癒着や、関係機関での大掛かりな縁故採用がスキャンダルとして報じられました。
ロベルト・ハーベック(写真:gettyimeges)ロベルト・ハーベック(写真:gettyimeges)
主要メディアはあたかも今、初めて明るみに出たかのように報道しましたが、もちろん、彼らは前々からすべて知っていた。私だって知っていたのですから当然です。
「過小評価されるグリーン・ロビーの権力」という長大な論考が独大手紙『ディ・ヴェルト』のオンライン版に載ったのは2021年4月30日でした。
綿密な取材の跡が感じられる素晴らしい論文で、読んだとき、私は久しぶりにジャーナリズムの底力を感じたものです。
巨悪に立ち向かう弱小な組織といったイメージの環境NGO(非政府組織)が、実は世界的ネットワークを持ち、政治の中枢に浸透し、強大な権力と潤沢な資金で政治を動かしている実態、多くの公金がNGOに注ぎ込まれている現状、そして、批判精神を捨て、政府とNGOを力強く後押しするメディアの癒着を暴いているのです。
この論文によると、環境NGOは地味な草の根運動を装っていますが、エネルギー政策、および地球温暖化防止政策に与える影響力という意味では、今や産業ロビーを遥かに凌いでいるといいます。脱原発や、脱炭素にも、もちろんNGOが絡んでいます。
そこでまず脱原発について私が異常だと思ったのは、2011年の福島第一原発の事故の後にドイツ政府は倫理委員会を招集したのですが、そのメンバーに電力会社の代表や研究者がほとんどおらず、聖職者や社会学者が加わっていたことです。
つまり、科学的視点を欠いた人たちが2022年の脱原発を決めたのです。しかも音頭を取ったのが、長年、国連環境計画の事務局長を務めていた環境問題の大御所、クラウス・テプファーでしたから、結果ありきの脱原発でした。もちろん、テプファーを引っ張ってきたのはメルケル首相です。
また、その7年後の2018年に、脱石炭について審議するために招集された「成長・構造改革・雇用委員会」(通称・石炭委員会)では、聖職者はいなくなっていましたが、今度は環境NGOがたくさん座っていた。
おかしいでしょう、彼らが大事な政策決定に口を出せるなんて!しかも、脱石炭を審議する会議なのに、石炭輸入組合の代表は傍聴することさえ叶わなかったのです。
ドイツは伝統的に石炭をベースに発展してきた国で、発電は今も4割を石炭と褐炭に頼っているのに、長年続いたこの産業構造を、突然トップダウンで終了させるのは、ものすごく無謀な話です。
性急な脱石炭は、企業の株主の権利を侵害するし、また、何万もの炭鉱や関連業種の労働者から生活の糧をも奪うことになります。
そこで石炭委員会は各方面への補償と、影響を受ける州の産業構造改革のため、2038年までに少なくとも400億ユーロを投下するとしました。
大盤振る舞いはいいとして、財源はどうするのか。代替産業もわからぬまま山積する問題をほっぽり出して“遅くとも”2038年の脱石炭というスケジュールだけが決まっているのが、現在のドイツです。
しかし、それに反対したのが緑の党で、なぜ、反対かというと、2038年では遅すぎるので、スケジュールをもっと早めろと異議を唱えたのです。そして、それを後押ししているのが自然・環境NGOです。
これらのNGOはドイツ全土にあり、登録されている1100万人の会員が、今やドイツの世論形成を牛耳る一大勢力となっています。
実際、緑の党はNGOを味方につけ、脱炭素の大波に乗って2021年12月に政権入りを果たしました。
福井義高(以下福井):少なくともドイツの場合、環境保護というのはもともと左翼の専売特許というわけではなく、19世紀のドイツ・ロマン主義あるいはもっと先まで遡れる、保守的な人にも訴求力のあるテーマです。
したがって、緑の党を支えるドイツの環境保護運動は、日本のような上っ面なものではなく、ドイツ社会に根を下ろしているように思えます。
一方で脱炭素達成のための風車建設を推進
川口:もちろんその通りで、自然を大切にするのはいいのですが、今や、彼らのやろうとしていることが環境保護に役立っているかというと、実際には矛盾が多すぎます。草の根として頑張っている人たちは、正しい情報を得ていないのではないかと思います。そして、その矛盾の根源が、政治とNGOの堅固なタッグです。
すでにNGOは政府の専門委員会に加わっていることは、先ほど申しました。彼らは、政治家の外遊にもしばしば同行し、国際会議ではオブザーバーとして常連席を持っていたりと、権限が膨張しています。
たとえば、現開発相のスヴェニャ・シュルツェは、環境相だった2019年、マドリッドでの国連気候行動サミットに出席中に、「NGOの人たちとの会話は私にとって非常に重要だ。我々は同じ問題のために戦っている」とツイートしています。
また2月には毎年恒例の「ミュンヘン安全保障会議」が開かれていますが、ダボス会議同様、民間主催のこういった国際会議のほうが、公式の国際会議である国連などよりも実力を強めているように感じます。
ここでは産業界の有力者や、NGOを支援する大資本家など集って、都合の悪い国家の首脳は呼びません。民主主義を強調しながら、戦争も政治も「民営化」だといわんばかりに、仲間内で世界政治を決めていく。
そもそも選挙で選ばれたわけでもない人間が税金で行動し、国政や法案の策定にまで口を挟むこと自体がおかしいと、私は思っています。ところが、ドイツでは事もあろうに、国、州政府、そしてEUも、各種NGOにかなりの財政支援を行っているのです。
もっとも、このやり方は、風力発電の拡大を唱えているNABUの方針に抵触します。実際に、鳥の保護と風力発電の拡大は両立できないとNABU内部でも問題となっているらしく、風車の建設規制を訴えるNGOに移る会員も出てきたそうです。
実は、シュルツェ前環境相もNABUのメンバーだそうです。つまり、日頃からNGOを称賛し、鳥の保護を訴えつつ、一方では、脱炭素達成のために風車の建設も推進していて風力発電事業者との距離も近い。結局、どちらからも重宝されていたのでしょう。これではNGO幹部に対する不信は募る一方です。
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…つづく<知ってはいけない、世界の《残酷な常識》日本人は気付かない、ゼレンスキー英雄説の「危ない実態」…専門家が警告>でも専門家による日本人が知らない世界の本音を明かします。
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🌌28}─1・D─将来は全国が危険地域に。日本を囲む水温30度の海…西日本で40℃迫る暑さ。~No.120
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2024年8月21日 MicrosoftStartニュース TBS NEWS「日本を囲む水温30度の海、異変続出…将来は全国が危険地域に【報道1930】
© TBS NEWS DIG_Microsoft
この夏の日本でよくみられる景色…夕方になると雷が鳴りゲリラ豪雨が降る。もうゲリラではなくレギュラー豪雨だ。それも毎回のように“今までに経験したことのない”という枕詞がつく。既に異常気象は異常ではなくなっていた…。
「海面水温が高ければ高いほど豪雨になりやすい」
二酸化炭素の排出を減らそうと決めた京都議定書の1997年の夏よりも化石燃料をやめようと決めたパリ協定の2015年の夏よりも今年の夏のほうが暑い。
環境省が未来の「各地の気温」を発表している。「2100年8月21日、今日の各地の最高気温は…」によると、札幌40.5度、仙台41.1度、新潟43.8度、東京43.3度、大阪42.7度、福岡41.9度などなど軒並み40度を超えている。未来は40度が当たり前になっているようだ。
この日(2100年)全国で唯一40度を下回った場所があった。沖縄・那覇38.5度だ。沖縄は海に囲まれていることでかろうじて40度にはならないようだ。
“海に囲まれている”このことは気候の上でとても重要で、日本は海に囲まれていることで比較的穏やかな気候に恵まれてきた。ところが今、日本周辺の海に異変が起きている。
先日、東京23区では6年ぶりとなる「記録的短時間大雨情報」が発表されたが、この時の1時間に100ミリを超える猛烈な雨、これにも海の異変が関係しているという。
気候変動を研究している三重大学の立花教授に聞いた。
三重大学大学院 立花義裕 教授
「日本列島周辺の海面水温がどこもかしこも無茶苦茶上がってる。東京近辺であれば南岸、相模湾辺りや静岡県の辺りですね。平年に比べて2度とか3度とか…。場所によっては4度くらい高いところも…。(日本は)非常に高い水温に囲まれてるんです(中略)我々多くの研究者の一致した見解は、水温が28度を超えると急激に海水が蒸発し水蒸気がバーっと増えて非常に強い雲ができる。で、近年はその28度の“しきい値(=境界線)”を超えるような海域が日本近海で増えている。すると水蒸気が増えて、雲の厚みが増えて、何らかのきっかけで雨が降りさえすればバーンと降る。要するに海面水温が高ければ高いほど豪雨になりやすい。来年は今年より更に水温が上がって30度を超える海が日本の周りを広く囲むかもしれない。そうしたら九州でも北海道でも日本中どこで豪雨が降ってもおかしくない。(海面水温が)30度になってくると今まで安全だと思われていたところでも、より災害になりやすい」
「人間ってバカなんで…」
現在の海面水温を示した図を見ると…。
水温27度の線が、日本海側では秋田、太平洋側で宮城辺りにかかっている。つまり東北地方より南の海は全て境界線といわれる28度を超える海といえる。そして北緯35度以南の海域は殆ど30度を超えている。この状況は立花教授が言う“今まで安全だと思われていた場所が安全ではない”ことを表している。
「低炭素社会」の実現に取り組む環境問題のスペシャリスト藤野純一氏は言う。
地域環境戦略研究機関 藤野純一 上席研究員
「令和元年の(長野新幹線が水没した)台風19号、あれ10月の台風だったんだけど太平洋の水温が27~8度あった。だから今まで通ったことない長野や郡山まで行っちゃった。この前の山形とか秋田とか…、こんなところに豪雨降るかねってところだから、準備もできてないですよね。(ハザードマップが役に立たない)普通来ないところに来ちゃうと困っちゃう…。でもそれが普通になっているところが怖い」
全ては地球温暖化に起因するというのは国立環境研究所の上席主任研究員も務める江守教授だ。
東京大学未来ビジョン研究センター 江守正多 教授
「海面水温上昇は一部には今年の特徴で黒潮のコースが云々ということもありますが、長期的には地球温暖化であって我々の温室効果ガス排出が続く限りはこれはさらに上がっていくし、更に豪雨は増え、水害も増える。でもそれは止められることなんです」
ただ地球温暖化対策の問題は一朝一夕ではできない。とりあえずは豪雨による水害に備える…、といった対処療法に徹するほかないのが現実だ。
“脱成長コミュニズム”の思想家、斎藤幸平氏は「人間はバカだから」と一刀両断にする。
東京大学大学院 斎藤幸平 准教授
「人間ってバカなんで、じゃぁそこに高い堤防造ればいいじゃないって、“適応”になっちゃうんですね。本来やるべきはことは“緩和”。人間が出した二酸化炭素のせいなんだから二酸化炭素を減らすってことをやらないと本質的な解決にはならないのに…(中略)化石燃料をどう減らしていくかというところに政治や企業や市民の意識が向かっていかないってところに問題があって、ますます悪化していって、最終的には適応しきれない…」
「今世紀末、2メートルぐらい(海面上昇が)ある」
“ティッピングポイント”という言葉がある。ファッションなどの分野では、ある時点を突破すると一気にトレンドとなるといったポジティブな意味で使われるが、環境の分野では“転換点”“臨界点”と訳され平均気温の上昇があるレベルを超えると様々な自然現象が制御不能になるという危険なポイントだ。
一説には産業革命時の平均気温を1.5度上回った時を指すという。2023年の世界の平均気温は産業革命時より1.48度高かった。つまり地球環境のティッピングポイントはもうすぐだ。南極の氷が急速に溶け始めていることは、その象徴といわれている。
40年以上南極の氷河を研究するカリフォルニア大学アーバイン校のルグノット教授は南極の氷河が年間最大2キロも後退していることを観測、「これは最も急速な後退速度である」と語った。
江守教授は既にティッピングポイントに達しているとは思わないが、南極の氷床の溶解は深刻だと話す。
東京大学未来ビジョン研究センター 江守正多 教授
「(今のペースで南極の氷が解けると)今世紀末、2メートルぐらい(海面上昇が)ある…。沿岸の低い土地は(水没する)、サンゴ礁でできた小さい島は標高2メートルなんてところがありますから…」
ティッピングポイントは南極の氷の問題だけでなく、様々な自然現象に後戻りできない変化をもたらす。
東京大学大学院 斎藤幸平 准教授
「(ティッピングポイントが来れば)我々が今見ている気候変動よりも(様々な場面で)一気に悪化する可能性がある。例えば農作物も、何年もかけて品種改良してなんとか(環境に)適応させてきたのにできなくなってしまう。(環境変化が激しすぎて)追いつかなくなってしまう。とくに日本のように資源がなくて食料自給率が低い国は本当大変。飢えるとか…そういうことが決して誇張ではない事態に向かっているんじゃないか…」
夢のような解決策は見つかりそうもない。
一人一人が環境に意識を持つことから始めるしかないのかもしれない。
(BS-TBS『報道1930』8月8日放送より)
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8月22日 MicrosoftStartニュース tenki.jp「今日 西日本で40℃迫る暑さも 東海~九州は熱中症警戒
木村 雅洋 に
今日22日も東海~九州は最高気温が35℃以上の猛暑日が続出。日本海側では40℃に迫る危険な暑さになる所がある見込みです。東~西日本を中心に28府県に熱中症警戒アラートが発表されています。万全な暑さ対策が欠かせません。
今日 西日本で40℃迫る暑さも 東海~九州は熱中症警戒
●西日本で40℃迫る 日本海側はフェーン現象で危険な暑さに
© tenki.jp
今日22日も強い日差しと上空の暖気の影響で、東海~九州は猛烈な暑さが続く見込みです。特に山陰や北陸などでは、フェーン現象の影響で危険な暑さになるでしょう。
予想最高気温は、鳥取市で39℃と、40℃に迫る暑さになるでしょう。このほか福井市や大分県日田市で38℃、京都市で37℃など体温を超えるような高温が予想されます。
一方、曇りや雨となる関東はきのう21日より少し低く、30℃くらいの所が多くなるでしょう。
●28府県に熱中症警戒アラート
© tenki.jp
西日本や東海、北陸では広い範囲に熱中症警戒アラートが発表されています。危険な暑さとなる日本海側だけでなく、湿度が高い太平洋側でも熱中症のリスクはかなり高くなります。夜間の室内で熱中症にかかる事例も多いです。昼夜問わずにしっかりと対策をしてください。
また、熱中症警戒アラートが出ていない関東から北の地域でも8月らしい暑さになるため、体調管理には注意してください。
●朝からしっかり熱中症予防を
© tenki.jp
熱中症警戒アラートが発表された所では、熱中症にかからないよう、積極的にとるべき行動が5つあります。
①外出はできるだけ控え、暑さを避けましょう。熱中症を予防するためには、暑さを避けることが、最も重要です。不要不急の外出は、できるだけ避けてください。屋内では昼夜を問わず、エアコンなどを使用して、部屋の温度を調整しましょう。
②屋外やエアコンが設置されていない屋内での運動は、原則、中止や延期をしましょう。
③普段以上に熱中症予防行動を実践しましょう。のどが渇く前に、こまめに水分を補給したり、なるべく涼しい服装を心がけたりしてください。
④熱中症のリスクが高い方に、声かけをしましょう。高齢者や子ども、持病のある方、肥満の方、障害のある方などは、熱中症にかかりやすいため、「夜間でもエアコンを使う」「こまめな水分補給を心掛ける」など、周りの方が声をかけてください。
⑤暑さ指数(WBGT)を確認しましょう。暑さ指数は、時間帯や場所によって、大きく異なります。環境省熱中症予防情報サイトなどで確認して、暑さ指数を行動の目安にしてください。
関連するビデオ: 【処暑】暑さは峠を越えず…太宰府市で35日連続の猛暑日 国内記録更新中 猛暑は24日まで? 福岡 (FBS 福岡放送ニュース)
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🌌59}─4・B─広がる「PFAS汚染列島」…行政が動かない中、市民が独自の調査で解明も。~No.284
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関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
「安全と水はただ」という、1990年代までの「安全神話」は2011年の東日本大震災で消失した。
化学汚染が広がる日本には、中国の環境汚染をとやかく言う権利はない。
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2024年8月21日 YAHOO!JAPANニュース SlowNews/スローニュース「広がる「PFAS汚染列島」…行政が動かない中、市民が独自の調査で解明も。
PFAS汚染地域の代表が一堂に
作成・諸永裕司
「PFAS汚染列島」の現実をあらためて印象づけられた。
8月17日に開かれた「PFASオンライン全国交流集会」。
【スクープ動画】工場から出る「白い煙」の正体とは!?「あまりの高濃度」で封印された大気汚染データが発覚!
南は熊本から北は青森まで、PFAS汚染が確認された17地域の代表が汚染の現状や取り組みの内容などについて報告した。大規模な血液検査を実施するなどしてきた「多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS) 汚染を明らかにする会」が主催した。
汚染源は全国各地で見つかっているが、「PFOS」が高濃度で検出されていれば基地(米軍または自衛隊)や空港、「PFOA」であれば工場や産業廃棄物に大別できる。これに従うと、報告のあった17地域は以下のように分けられる。(汚染源不明の熊本市のぞく)
【PFOS】
<米軍> 沖縄・宜野湾市/金武町など、広島・東広島市、神奈川・座間市、横須賀市、東京・多摩地区、青森・三沢市
<自衛隊> 岐阜・各務原市、愛知・豊山町、静岡・浜松市、千葉・柏市/鎌ヶ谷市
【PFOA】
<工場> 大阪・摂津市など、三重・四日市市、静岡・静岡市、神奈川・相模原市
<産廃> 岡山・吉備中央町、兵庫・明石市/神戸市、京都・綾部市
市民による独自の調査で解明
坪井由実さん作成
各地からの報告から見えてきたのは、行政による汚染源の特定が進まないなか、市民が独自に調べているという点だ。測定・分析を担ったのは小泉昭夫・京大名誉教授と原田浩二・京大准教授である。
【愛知県豊山町のケース】
たとえば、高濃度を理由に配水場が停止になった愛知県豊山町では、汚染の疑われるエリアで水質調査を重ねたところ、陸上自衛隊・小牧基地が汚染源として浮かび上がった。
自衛隊は、県営名古屋空港と三菱重工小牧南工場と滑走路を共用する敷地で2010年ごろまで定期的に消火訓練を行い、1994年に起きた中華航空機墜落事故では4千リットルの泡消火剤を使った、という。
「調査結果などをもとに愛知県に訴えたところ、『環境審議会で対処する』と回答されたのですが、議事録をみてもPFAS汚染が議論された形跡がありません。汚染源であることは明らかなのに、宙に浮いたままになっています」(坪井由実さん)
【三重県四日市市のケース】
三重県四日市市では、市内にあるPFASの調査地点が河川1カ所だったため、より詳細な調査を市に求めたところ、「調査不要」とされた。そこで独自に調べると、半導体工場の排水口近くから145ナノグラム、さらに別の排水から574ナノグラムのPFOAが検出されたという。
こうした結果を示すと、市はようやく追加調査に応じた。しかし、新たに調べたのは工場よりさらに遠い下流の地点などだったという。
「汚染源が上流にあるのに、下流で調べても汚染源の特定につながるはずはなく、科学的合理性を欠いています」(松岡武夫さん)
【神奈川県座間市のケース】
水道水源の9割近くを地下水に頼る神奈川・座間市でも似たようなことがあった。米軍・キャンプ座間近くを流れる鳩川から100~130ナノグラムが検出されたものの、その後、別の調査の結果をもとに「汚染源は米軍ではない」と説明されたという。
丸尾牧さん作成
【兵庫県の明石市と神戸市のケース】
兵庫・明石市および神戸市では、県議の丸尾牧さんが独自に調べ、4か所の産業廃棄物処分場が汚染源であることを突き止めた。また、京都・綾部市では事業所が放出した原水から49,000ナノグラムが検出され、やはり産廃処分場が汚染源であることが明らかになっている。
客観的なデータから汚染源は絞り込まれているにもかかわらず、行政は、汚染の除去や浄化といった対処を業者に迫るには至っていない。
背景には環境省の「手引き」が
環境省の入る合同庁舎
背景にあるのは、環境省が2020年6月に全国の自治体に対して通知した、「PFOS及びPFOAに関する対応の手引き」があると見られる。そこには、
<飲用に供する水源のある地域において調査範囲を拡大し、地下水の汚染範囲の把握に努めること。必要に応じて排出源の特定のための調査を実施し、濃度低減のために必要な措置を検討すること>
と記されている。
裏を読めば、「飲み水に使う水源がない場合」あるいは「必要がない場合」には、汚染源の特定は求められていないことになる。そもそも「必要に応じて」とはどういう状況を指すのかも示されていない。
もう一つの要因は、PFASが遵守を義務づけられる水質基準や環境基準の項目にPFASが入っておらず、排出基準も定められていないことだろう。
40年近く前に、有害物質のトリクロロエチレンによる水質汚染が起きた愛知・豊山町で、いまはPFAS汚染を追跡する坪井由実さんは、苦い経験を忘れていない。
「当時、愛知県の調査で汚染源はほぼ特定できていたのですが、最終的には『断定できない』として幕引きをしたのです。今回も同じ轍を踏まないように、自分たちでデータを揃えることが重要だと考えています」
米軍・横田基地のある東京・多摩地区で汚染と向き合う高橋雅恵さんは「汚染者責任が明記された米国防省令などにもとづく立ち入り調査や汚染浄化を米軍に求める必要がある」と指摘した。また、全国に共通する課題として、PFASを含む廃棄物の法制化や土壌基準の設置、汚染の影響を受けやすいこどもを含めた血液検査の実施などを訴えた。
報告者に与えられた時間は各8分。それでも、PFAS汚染の出口を探ろうとする市民たちの交流会は2時間をゆうに超えた。
筆者:諸永裕司(もろなが・ゆうじ)
スローニュースで『諸永裕司のPFASウオッチ』を毎週連載中。(https://slownews.com/m/mf238c15a2f9e)
ご意見・情報提供はこちらまで pfas.moro2022@gmail.com
※当初の記事に地名の誤りがありましたので、修正いたしました(21日18時)
諸永裕司
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📉6】─2─高学歴=勝ち組思想。日本から学歴神話・学歴主義が消えない。~No.11
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関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
2024年8月20日 YAHOO!JAPANニュース All About「なぜ日本から「学歴主義」が消えないのか…「高学歴=勝ち組」思想をあおり続ける“罪深き存在”の影響
高学歴を掲げる学歴系YouTuberが関西の中堅私大を訪問し、学生を上から目線でいじったということが話題を集めています。日本の社会人にとって学歴は重要か否かという視点でも議論が盛り上がっています。“古くて新しい”学歴を巡る問題を考えてみます。
高学歴を掲げて学歴系YouTubeを運営するグループが、関西の中堅私大を訪問して学生を上から目線でいじったということが、ネット上で波紋を呼んでいます。
【画像】脱・学歴フィルターの切り札!
その大学の教授がこれに苦言を呈したり、あるいは脳科学者の茂木健一郎氏が「知性のかけらもない、日本の恥」と彼らを一刀両断の下に切り捨てるなどしたことで、今また日本の社会人にとって「学歴」とは重要なものなのか、はたまた無意味なものなのか、といった視点での議論が盛り上がっているようです。
“古くて新しい”学歴を巡る問題を考えてみましょう。
◆日本の学歴社会の始まり
日本における最初の大学である東大、それに続いた京大と各帝国大学、さらに私立大学の先駆け的存在であった慶応、早稲田などの卒業生が、いわゆる「学士様」として世間一般に崇められたことが、日本の学歴社会の始まりであるように思います。
1970年代までは一部大手企業の新卒採用において、企業側がこれらの大学に推薦を依頼し、推薦を受けた学生しか選考に参加させない「指定校制度」というものが存在しました。
指定校制度は、学生紛争などを経て大学の姿勢が変化したことや、大学数と学生数の急増により批判が高まってきたこともあって、表向きは姿を消すことになります。
しかし、時同じくして1970年代に「偏差値」で大学の入学試験の難易度を測ることが一般的になり、指定校制度は偏差値至上主義に形を変え、新卒採用における序列的な価値観を確立します。こうして暗黙の指定校制度は残り、学歴社会は脈々と生きてきたわけなのです。
1980年代は全般的に好景気に後押しされた売り手市場が長く続いたことで、新卒者が採用からあぶれることも少なく、新卒採用において学歴偏重の是非が大きく問われることはありませんでした。
1990年代に入るとバブル経済期が終焉(しゅうえん)を告げ長期低成長の時代に入ったことで、採用市場はそれまでの売り手市場から一気に買い手市場に転じます。ここでようやく、就職氷河期などにおいてもなお実質的な学歴偏重主義を貫く大手企業の新卒採用姿勢に、疑問の目が向けられるようになってきたのです。
◆学歴フィルターを否定する企業が登場したけれど
では、その後の大手企業における採用姿勢に大きな変化があったのかといえば、実際にはそれはなかったのではないでしょうか。ソニーが出身大学名を伏せて採用応募をさせるという、学歴フィルターを否定する採用方針を打ち出したのが1991年のことでした。
大手企業はどこも採用方針に「人物重視」を前面に掲げていながら、このソニーの方針に追随する企業はほとんどありませんでした。理由は簡単です。「人物重視」をうたっていながら、大半の企業は学歴情報のない採用には自信が持てなかったということに他ならないのです。
同時に、高度成長期~バブル期における大量採用の時代に学歴偏重採用を続けてきた経験から、「高偏差値大学の出身者はおしなべてハズレが少なかった(大手企業採用担当経験者)」ということが、採用労力的にも楽な学歴偏重採用を続けてきた大きな理由になっているように思われます。
その結果、大手の一流企業と呼ばれるところに多く卒業生が就職する大学、言い換えれば一流企業から採用したいと思われる大学のブランド価値が高まってしまい、いたって人為的なヒエラルキーが確立されたということになったわけなのです。
終身雇用を前提とした就活の時代には、確かに好待遇の大手企業に就職すれば一生安泰でそれなりの生活が保障されるという考え方が主流で、出身大学の偏差値の高さは生涯収入とある程度リンクしていたのかもしれません。
しかし、バブル経済崩壊後の長期低成長時代に転じた日本においては、終身雇用、年功序列は雇用の常識ではなくなり、転職の活性化や独立、起業の活発化によって社会の実力主義化は徐々に浸透してきたと言えます。今や高学歴が、必ずしも経済的上流階級を保証するものではなくなったと言えるでしょう。
◆「高学歴=特権階級=勝ち組」?
それでも冒頭のYouTuberのような、学歴偏重の思想が消えないのはなぜなのでしょうか。
おそらくテレビを筆頭としたマスメディアの影響は、否定できないでしょう。
人物紹介で何かと「東大卒の」「早慶卒の」「難関大学卒の」という形容詞が使われ、例えばスポーツ選手が好成績を残したときにその人物が高学歴であると、「〇〇大卒のエリート」というような表現で「文武両道」と必要以上にほめ称えたり、タレントでも高偏差値大学出身者をことさらにエリート扱いするというような風潮が、今も平然とまかり通っているのです。
歴史をひも解けば、学歴社会意識のベースとも言える日本人の階級社会意識は、厳格な身分制度が存在した江戸時代にその根源があると言えます。明治、大正時代には表向きは四民平等がうたわれながらも、華族を上流階級とした実質的な階級社会が残りました。
そして戦後、新憲法の下で階級社会が完全消滅しても長らくその存在を意識してきた日本人に、「特権階級=勝ち組」という意識は消えることがなく、平等社会においても特権階級に対する目に見えない憧れが日本人の中に脈々と巣食ってきたのではないかと思うのです。
先のマスメディアの姿勢もその現れでしょう。小学生の子どもを持つ親はこれらの影響を受けて、我が子の高偏差値大学合格を最終目標として、まずは「高偏差値・進学校」に入学させるべく塾通いをさせるわけなのです。
このような国民的な潜在意識の下で、「高学歴=特権階級=勝ち組」になったと勘違いした人たちが学歴を盾に上から目線を投じている、冒頭のYouTuberはそんな存在かもしれません。
今回の議論を読むにつけ、時代が大きく変わってきている今もなお、学歴偏重を助長するような偏った取り上げ方を続けている罪作りなマスメディアの論調こそ、責められてしかるべきなのではないかと思う次第です。
▼大関 暁夫プロフィール
経営コンサルタント。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントや企業アナリストとして、多くのメディアで執筆中。
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🌌59}─1・B─日本の水道は劣化が進み災害に弱い。~No.281No.282No.283No.284
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関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
日本の水道などのインフラ整備が劣化し安定供給の為の修繕・補修・保全ができないのは、国力の衰退と人口の激減であった。
エセ保守とリベラル左派のシニアやおじさん・おばさん達は、自分だけ・今だけ・金だけで、原発を再稼働して安価な電力を確保して限られた資金をインフラ修繕に使おうとしないか、国家赤字をさらに増やして修繕・補修・保全に使えと無責任に騒ぎ立てる。
中国資本など外国資本は、日本のインフラを購入している。
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2024年8月16日 Yahoo!ニュース オリジナル 特集「料金の大幅な値上げも? 災害に弱く劣化も進む。どうする日本の水道 #災害に備える
被災地で活躍するWOTA
8月8日に発生した宮崎県日向灘を震源とする地震では、宮崎県内で水道管の破損や断水が報告された。翌日の神奈川県西部を震源とする地震でも、一部の地域で断水した。年明けに震災に見舞われた能登では、多くの水道管が破損し断水が長期化している。相次ぐ地震で水道の問題が浮き彫りになったが、水道管の劣化や、進まない耐震化など、日本全土における水道の脆弱性はこれまでも指摘されてきた。しかし水道管の耐震化を進めるにしても、人口減により水道収入も減少しており、多くの自治体で水道料金の値上げが必要とされている。これから日本の水道の安全性をどう担保するのか。現状と、未来へ向けた取り組みを取材した。(取材・文:安藤ショウカ・島田龍男/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
多くの水道管が経年劣化でボロボロに
能登半島地震発生から約半年。能登半島の最北端に位置する石川県珠洲市では上下水道の被害が著しい。半年経った今でも、様々な場所に仮設トイレが設置されている光景が目に留まる(6月末時点)。懸命な復旧作業が行われ、5月31日に断水解消が発表されたが、あくまでも珠洲市と輪島市の早期復旧困難地区の1471戸(6月24日時点)を除いての復旧だ。倒壊した建物や土砂崩れの痕がまだ残っている中、水道の復旧作業まで手が回らず、復旧のめどが立っていない。
珠洲市役所前に設置された仮設トイレ(2024年8月4日撮影)
2023年7月に珠洲市にコワーキングスペース兼ビジネス交流拠点を開設した伊藤紗恵氏は、水道の完全復旧には「まだまだ時間がかかりそうだ」と話す。
「震災前に私たちが運営していた珠洲市の拠点は取り壊す予定です。町には避難所から戻ってきている人も少しずつ増えていますが、家の中の水道管が切れてしまっているという話をよく聞きます。5月末時点では、近所の方からも配水管が切れているため井戸水を使っているとか、飲食店を再開したいものの水道が直っていないので営業許可が下りないといった話を耳にしました。特に下水の復旧がまだと聞いていて、仮設トイレを設置している場所も多くあります。そもそも、取り壊そうとしている家が多いので、水の復旧だけが問題ではありませんが」
今回の地震では、珠洲市の9割の世帯に水の供給を行う宝立浄水場が被災した。取水管が破断したことに加え、総延長243キロメートルに及ぶパイプの多くの箇所で破損があった。家屋の倒壊や土砂崩れにより寸断された道路の復旧が遅れた影響で、水道管の修繕が進まなかったといわれる。清水浄水場は、土砂崩れの影響でたどり着くのが難しく、6月末時点では復旧していない。また、水道管が復旧した地域でも、家屋内のパイプ破損で実際に水道が使える家庭は半分ほどともいわれる。
また、市民の約半数が公共下水道が整備された地域で暮らしていたが、地震により市内の下水管の94%が被害を受けた。東日本大震災や熊本地震では約30%の被害といわれており、被害の大きさがうかがえる。さらに浄化槽でも亀裂が入るなど、排水処理の問題は大きい。
これは能登半島だけの問題ではない。水ジャーナリストの橋本淳司氏は水道管の劣化や、進まない耐震化による、日本全土における水道の脆弱性を指摘する。
「多くの水道管が経年劣化でボロボロになってきています。法定耐用年数を超えた管路は2021年度時点で22.1%。そして、上水道の漏水・破損は年間2万件以上、下水道の破損に起因する道路陥没は年間2600件も発生している状況です。お金と人手が足りず、対応が進んでいないのです。
また、耐震化も進んでおらず、送水管や配水本管(給水管を分岐しない配水管)といった、水道を支える重要な基幹管路の耐震化状況は2022年度末時点の全国平均で42.3%。地震の揺れに強い耐震管の普及率が低いうえ、土砂災害警戒区域内に位置しながらも土砂災害対策が実施されていない水道施設もまだ多くあります。全国にある水道施設のうち、土砂災害発生時に1日平均給水量以上の給水が確保できない水道施設は2068施設と、全体の10%を占めている(※2019年時点)のです。2024年1月の能登半島地震でも、断水は解消したものの、長期で水道が復旧しないとされている地域も一部あります。その中には、液状化によって到達できなくなっている浄水場なども含まれているのです。自分が住んでいる地域で今は断水していないだけで、いつどこで能登のような状況になってもおかしくない状況にあるといえます」
料金の大幅値上げも? 水道維持管理のコスト
日本の上水道普及率は2022年3月末時点で約98%(簡易水道、専用水道を含む)、下水道普及率は約80%と広範囲でカバーされている。一方で、今回の震災で露呈したように、災害に強いとは言い難い一面もあり、災害に備えて設備を更新するのにも膨大な費用が必要となる。
2024年4月24日に発表された、コンサルティング企業EY Japanと水の安全保障戦略機構の最新の共同研究結果「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024版)」によると、2046年度までに水道料金の値上げが必要と推測されるのは、全体の約96%となる1199事業体。また、約4割は今後3年以内(2026年度まで)に値上げが必要と考えられている。
橋本氏「水道料金は、水道設備の維持や施設の運営にかかるコストを、利用者(人口)で割って計算されるので、事業者(主に自治体)によって異なります。つまり、コストの増加と利用者数の減少が料金値上げの主な原因なのです。水道管を新しいものに交換すればそのぶん水道料金も値上げされます。工事のしやすさにもよりますが、目安として、1キロメートルの水道管を直すのに1億~2億円かかると言われています。さらに、人口減少も相まって、水道料金の値上げは避けられません。水道料金の自治体間格差は、現在の8倍から、20年後には20.4倍になると言われています」
水ジャーナリストに聞く、未来の水インフラ
災害、老朽化、維持費用の高騰。様々な要因から日本の「水のインフラ」は現状を踏まえて再構築すべき段階にきているのかもしれない。では、これからの水インフラはどうあるべきなのだろうか。
橋本氏「日本は水に恵まれていると思われがちですが、実はそうではありません。降水量は世界平均の約2倍ですが、それを人口で割ると世界平均の3分の1程度になってしまいます。ですから、限りある水資源をみんなで使っていくためには、インフラをみんなで支えることが非常に重要なのです」
社会全体で水のインフラを支える。もちろん、そこには水道設備や施設、農地などで働いていなくとも、水の恵みを受けている私たち市民も含まれる。では、どのように水のインフラについて考え、行動すべきか。
橋本氏「2024年1月の能登半島地震で改めて感じたのが、水道のことを意識する時代がやってきたということです。これまで水道について、“無意識”になるような政策がとられてきました。『365日24時間、安全な水が送られてくるので、水道のことは心配しないでくださいね』と。しかし、これからは水道のことを意識して、どういう水インフラを整備すべきか市民自ら声を上げ、選択することが重要な時代になってきていると考えています。
水インフラには、浄水場や下水処理場などの水処理施設と水道管によって成り立つ従来の『大規模集中型』と、集落や集合住宅、家庭ごとに水を処理する『小規模分散型』の仕組みがあります。『大規模集中型』は様々なところにつながっているので、浄水場や水道管など、どこかに不具合が生じると全体に影響を及ぼす可能性があります。
一方で『小規模分散型』は、なにかあっても範囲が限定的で、復旧も比較的早い。その上、様々な手段があります。たとえば、従来の水インフラの原水は、河川水や湧水、地下水ですが、小規模システムでは、雨水や排水を利用する技術もあります。原水だけでなく、浄水方法や配水方法、管理方法など、水を利用できるまでのプロセスごとに、様々な選択肢があり、その組み合わせ次第で、従来の水インフラよりもコストを下げられる可能性もあります。こうした選択肢を知り、ライフスタイルや防災の観点から、自分たちにとって最適な手段や組み合わせを選ぶことも可能なのではないでしょうか」
地域ごとに最適な手段を選ぶことで、水道料金の値上がりを抑制できる可能性もあるということだ。
災害対策だけでなく、水道財政の改善の一手へ。日常給水も期待される小規模分散型水循環システム
大規模な水道インフラに頼らない暮らしを実現する、小規模分散型の仕組みにはどのようなものがあるのか。今回の能登半島地震において活躍した水システムの一つに、WOTA株式会社の水循環型シャワー「WOTA BOX」と水循環型手洗いスタンド「WOSH」がある。排水を再生・循環利用するシステムで、提供した数は合計で300台以上にものぼると同社執行役員の越智浩樹氏は語る。
WOTA BOX
越智氏「『WOTA BOX』も『WOSH』も、使った水をフィルターや紫外線、塩素などにより安全な水質基準まで処理することで、98%以上の水を再生し、循環利用できるシステムです。
能登半島支援の特徴の一つは、すべての設置場所で自律運用型の仕組みを展開したこと。断水が広域かつ長期化することが予想される中、避難所の利用者に自ら運用していただくことで、各避難所への展開スピードを上げ、持続可能な支援につながると考えました。フィルター交換などのメンテナンスは専門的な能力や知識を必要とせず簡単に行うことができ、設置避難所で生活している中学生が自ら運用に協力してくれるなど、多くの方々の協力を得て支援を続けています」
1月4日から現地での提供を始め(協力会社含む)、同月末には能登半島全域をカバーしたというWOTA。断水地域でいち早く生活用水の基盤を構築した。災害時に必要となる水と聞くと、まず飲み水をイメージするのではないだろうか。実は、長期の避難において最も大きな課題となるのは、シャワーやトイレ、手洗い、洗濯等に必要な生活用水だという。
越智氏「飲用水は物資として迅速に十分な量が届いていましたが、生活用水が圧倒的に足りない。例えばシャワーは1回あたり50リットル使うと言われています。100人の避難者がいれば、シャワーだけでも1日5000リットルの水が必要になる計算です。使った水を再生循環利用できるシャワーは、100リットルの水で約100人がシャワーを浴びられるため、限られた水量でも多くの方に入浴を提供することができました。
また、生活用水は日々の生活や衛生だけでなく、精神面でも重要な役割を果たします。シャワーを浴びたり手を洗ったりできないことは大きなストレスとなり、手洗いスタンドを設置するだけでも避難所の方々から拍手が起きるほどでした。自衛隊が提供する集団風呂は非常に重要ですが、生理中の方や要介護者には利用が難しい場合があります。そのため、各避難所ごとに設置が可能で、プライベート空間となる個室シャワーは、被災地の方々にとって必要であり、衛生面だけでなく精神面でも安心をご提供できると考えています」
暮らしや衛生、精神面でも大きな支えとなる生活用水。どこでも水がある日常がどれほど私たちに欠かせないものか、改めて思い知らされる。一方で、断水時にはただ水さえ用意できればいいというわけではない。
越智氏「断水時に生活用水をすぐに使うためには、十分な水量、利用設備、排水処理がそろっていなければなりません。飲み水の数十倍にもなる量を用意できるか、小学校などの避難所でも利用できるか、利用した後の排水を処理できるか。この全ての要素を備えて初めて、生活用水を供給することができます」
WOTAでは、災害時だけでなく、日常給水における水道財政改善策として住宅向け「小規模分散型水循環システム」の展開を複数の自治体で始めている。人口減少が加速し、老朽化した水道の更新投資が困難になってくる過疎地域や、水資源に乏しく給水コストが非常に高くなる島嶼地域を中心に、愛媛県や東京都で水循環システムを実際に設置し、一般の住民が生活する社会実証を2023年から行っており、2024年度は広島県や他の自治体でも展開を拡張させる予定だ。使った水をその場で再生循環利用することで、大規模な水処理設備や水道管などの建設費用を抑制し、水道事業における赤字の改善が期待されている。
小規模分散型の仕組みの活用の重要性が増す今、こうした生活用水システムは様々なものがあり、既に日常的に利用している地域もある。その一例が、ヤマハ発動機株式会社の小型浄水装置「ヤマハクリーンウォーターシステム(以下、YCW)」を導入した長崎県五島市福江島半泊地区だ。
YCWは川や湖などの水を砂で物理的にろ過し、さらに水中の微生物の働きによってより細かな物質を浄化する「緩速ろ過」という自然界の仕組みを応用した浄水装置だ。専門家によるオペレーションや大きな電力、特別な薬品等を必要としないため、住民らがメンテナンスをすることができる。
YCW
同地区では、宿泊施設「Philosophers in Residence GOTO(フィロソファーズ・イン・レジデンス・ゴトウ)めぐりめぐらす」で実証事業として2022年10月にYCWが設置された。2024年4月の実証事業の完了にあたって寄付され、引き続き宿泊施設と近隣の住民に利用されている。五島市役所地域協働課によれば、同システムの導入によって単に水を得る手段が増えただけでなく、水道未普及地域での新たな産業が可能になったという。
「福江島半泊地区は水道未普及地域で自治体が管理する上下水道施設がなく、民間の方が山の湧水をろ過して管理してきました。生活には基本的に困ってはいなかったのですが、廃校を活用して宿泊施設をつくるプロジェクトが始まり、浄水設備が必要となったため、YCWを導入したのです。現在は宿の方が管理されていて、住民の方も何かあればそこの水を使えるようにしています。2022年12月にはジンを製造する『五島つばき蒸溜所』もできたのですが、水道未普及地域でありながらそうした産業ができ、おかげさまで『GOTOGIN(ゴトジン)』は人気商品となり、地域活性化にもつながっています」
私たちが生きるためにも、より豊かな生活を送るためにも欠かせない水資源。蛇口をひねればいつでも出てくるのが当たり前だが、実はその「当たり前」はいつ崩れてもおかしくないのだ。しかし、その「当たり前」が「当たり前」であり続けるための手段はある。これからも水の恵みを享受し続けるため、その手段を知り、水道を意識して選択していくことが私たちに求められている。
災害への備えは十分ですか?
投票数:17,4票
十分な備えができている 5.4%
ある程度の備えができている 28.8%
あまり備えていない 29.5%
まったく備えていない 36.3%
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